COLUMN No.2

米国にみるフリーランスが生き生き働く条件

シェアリングエコノミーなどによりフリーランスが増えている。
起業家というフリーランスの先に発展的なキャリアパスが存在する米国の状況から、日本への示唆を考える。

Michi Kaifu 海部 美知  2017.02.02 (thu)

米国におけるフリーランサーを支える仕組み

フリーランサーは、よりフレキシブルに働けることが最大のメリットである。その代償ともいえるデメリットとしては、収入の不安定さと仕事を見つける大変さが上位2つを占め、これにクライアントからの料金回収不安、スキルの需要がどこまで続くかの不安、自腹で払う福利厚生が高い、役所のペーパーワークや手続き関係が面倒…、といった点が言われている。

こうした不安を解消するため、フリーランサー向けのマッチングサービスが多く提供され、新しいプロジェクトを手軽に短期間で見つけることを可能にしている。また、サービスによっては値段付けと回収まで行う「プラットフォーム」となっているものもあり、その最も顕著な例がUberである。さらに、顧客のレビュー・点数などにより評判を可視化する仕組みも、重要な役割を果たしている。

この他、スモールビジネス向けに、クラウドベースの会計・税務、業務支援、コミュニケーションが、手頃な月額料金制で提供される。このような多様なテクノロジーのツールがスモールビジネスの生活を支え、さらにキャリアパスを進むためのサポートとしては、法制度や組合の仕組みに加え、テクノロジーのツールも大きな役割を果たしている。

日本へのインプリケーション

米国におけるフリーランスへの動きは、政策的な誘導は特になく、テクノロジー企業が商機を察知して、プラットフォームやサポートサービスが出現したり、企業での雇用との行き来を担う民間の人材サービスが活躍したりしている。これまで見てきたように、テクノロジーがフリーランサーを支える仕組みが整うだけでなく、企業側もフリーランサーの活用に習熟している。そのためフリーランサーとして活躍した後のキャリアパスが、起業家として事業を成長させたり、企業側に雇用されたりと複数存在していることが日本との違いである。米国では、こうした「フリー」な労働市場であることこそが、フリーランスのよさでもある。

日本ではこうしたフリーランス労働のサポート市場はまだ未成熟であるが、新しいタイプの人材やこれまでの枠組みでは働けなかった人材を活用するためにも、自律的で「フリー」な労働市場を活性化し、課題を解決するテクノロジー・サービスの活躍の余地があると考えられる。フリーランサーがキャリアの選択肢として認められ、生き生きと働くことができる社会になるかはこうした課題を乗り越えることが条件だといえるだろう。

海部 美知

Michi Kaifu

海部 美知

ENOTECH Consulting CEO

数社勤務後独立し、米国と日本のIT(情報技術)・新技術に関する事業開発・戦略提案・動向分析などを手がけている。著書「ビッグデータの覇者たち」(2013年)、「パラダイス鎖国」(2008年)。シリコンバレー在住。

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