COLUMN No.1

職業寿命50年・企業寿命25年のキャリアづくり
―テクノロジーがもたらす光と影―

テクノロジーの進化は目覚ましく、今後、個人の寿命は延び、企業の寿命は短くなる。
テクノロジーによる恩恵を受け、キャリアを築いていくための課題をまとめた。

Akihito Toda 戸田 淳仁  2017.01.26 (thu)

はじめに

テクノロジーの進化は目覚ましい。ビッグデータの蓄積によりAI(人工知能)の精度が上がり、正確な予測が可能になった。VR(ヴァーチャルリアリティ)・AR(拡張現実)が進歩し、スキルトレーニングのために活用される時代になった。これまでもテクノロジーが進歩することにより、人の仕事が機械に代替されることがたびたびあった。働き方に対する影響はテクノロジーの「闇」として語られている。

今後ますます進むテクノロジーの進歩により、いよいよ大多数の仕事が失われるのだろうか。はたまたテクノロジーが我々の働き方を大きく変え、一人ひとりがより生き生きと働ける社会になるのだろうか。本連載ではテクノロジーと「働く」の関係について探っていきたい。初回では、テクノロジーと「働く」について考えている問題意識を共有しよう。

「職業生活50年、企業寿命25年」の世界

テクノロジーの進歩がさらに加速する社会では、企業の生産性が高まるだけでなく、ビジネス環境のスピードが加速することが予想される。ビジネス環境のスピードが増し、またM&Aなど企業の合併・統廃合が拡大する中で、企業寿命は短くなっている。S&P500企業においては、1960年代には最大61年だった大企業の寿命が現在では25年程度になっている。こうした動きは日本でも見られ、日本においては、2015年の倒産企業の平均寿命は24.1年にすぎない。平均で見て企業寿命は25年程度であり、企業寿命を短縮させる環境要因は今後もますます拡大することから、さらに企業寿命が短縮する可能性がある。

インデックスを構成する企業における平均的な企業寿命(7カ年移動平均)

※ 画像をクリックすると拡大します

一方、人間の長寿命化が進んでいる。日本人の健康な期間を示す健康寿命は、男性70.42歳、女性73.62歳である(厚生労働省「健康日本21」)。現在日本においては65歳まで雇用確保措置をとっているが、65歳以上の雇用促進を進めようとする動きをふまえると、少なくとも70歳までは働く時代が近い将来には普通になる。このように考えると、社会に出て引退するまでの職業寿命は50年になるといえる。

職業寿命50年、企業寿命25年と職業寿命が企業寿命の2倍となる。これまでは1社でキャリアを完結する働き方が見られたが、今後は職業寿命を1社で全うすることがますます困難になる。このような環境の中で今までのような働き方では通用しない。そういう時代だからこそ、次で説明するように「キャリアの自律」「継続的なスキル向上」「円滑なキャリアトランジション」が重要になる。