COLUMN No.3

仕事相手はAI。働き方をどう変える?
―生産性向上の鍵を握るAIを使う人―

AIが同僚や仕事相手になる未来。AIを創る人ではなく、使う人に注目し、
今後、仕事の生産性をいかに高め、キャリアをどう築いていくかについて考える。

Ko Ishiyama 石山 洸  2017.02.09 (thu)

はじめに

AIの進化によって働き方が変わってきたという事例が出始めている。データサイエンティストがまさにその職種である。2011年5月に米国マッキンゼー社が公表した“Big data: The next frontier for innovation, competition, and productivity”によると、米国では2018年までに、高度なアナリティクス・スキルを持つ人材が14万~19万人、大規模なデータセットのアナリティクスを活用し意思決定のできるマネジャーやアナリストが150万人不足すると算出されている。このため、データサイエンティストの育成だけでなく、AIの導入によって生産性が高められることを期待されている分野といえる。AIの活用によって働き方がどうなったか、DataRobotの事例を見ていきたい。

DataRobotが誰をもデータサイエンティストにする

この分野の研究開発を行っている企業のひとつに、米国ボストンに拠点を構えるDataRobot社がある。同社はデータサイエンスの一部の業務をAIで代替するソフトウェア「DataRobot」の提供を行っている。DataRobotを活用すると、従来、データサイエンティストが行ってきた業務が、表計算ソフトのExcelを使うのと同じくらい簡単になる。具体的には、ExcelのデータをDataRobotにドラッグ&ドロップし、予測したい項目を選んだ後、開始ボタンを押すだけで予測モデルを作成することができる。すなわち、データサイエンティストでない人でも、データサイエンティストの業務をこなせるようになる。

DataRobotの活用

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筆者も所属する株式会社リクルートホールディングスでは、2015年11月にDataRobot社へ出資を行い、その後の半年間で、同ツールをリクルートグループ全社へ導入する実験を行った。実験は、13グループ会社の125組織で行われ、その結果、合計5489個(2017年1月18日時点)の予測モデルが作成された。作成された予測モデルのうちの多くは、データサイエンティストではない職種の従業員が通常の業務の合間に作成したものである。予測モデルの開発を外部の企業に委託した場合、1個のモデルを作成するのにかかる平均の見積もり額は約300万円程度と言われており、上記の5489個のモデルの価値を単純に165億円程度と試算すると、DataRobotのコストのみで実現できた点は非常に高い生産性ととらえることができるであろう。業務生産性や業務スピードが数倍上昇したという事例はいくつも出ている。