宿泊業の「働き方改革」10のキーワードKeyword8 人材ポートフォリオの構築

多様な人材が活躍できる環境整備

これまでの旅館では、独身者が近隣の寮に住み込み、朝早くから朝食の準備をして昼に長時間の休憩を取り、夕食の片付けなどで夜遅くまで居残るという働き方が珍しくなかった。こうした事情もあり、宿泊業の現場で働くスタッフは、他の産業に比べて配偶者のいない比率が高い(図11)。ワークライフバランスを保ちながら長期的に働くことが、なかなか難しかったのだ。30 代・40 代の割合が他産業と比べて低いということも、その影響だろう。

しかし、IT・テクノロジーの活用、タスクの再構築などを行えば、これまでは宿泊業と縁遠かった人材も宿泊業で働くことが可能になる。例えば、主婦・外国人・シニア人材の活用も期待できるし、短時間雇用など多様な雇用・就業形態の導入なども考えられるだろう。特に、60 歳以上の割合が高い宿泊業においては、シニア人材の活用は不可欠である。業務にあったシニア人材を雇用するのではなく、シニア人材のスキル・能力にあわせた業務設計が必要だ。

また、社内ではカバーできない業務領域は、外部のパートナーと協力して実現することも検討すべきである。全てを自社の内部に抱え込む必要はない。外部とうまく連携をしながら、ビジネスを展開していくことが求められる。