地域全体が協力し、観光地の実力を高める必要がある
――さて、先ほど「宿泊・観光業者の間にネットワークがまったくない」ことに、危機感を持っていたと伺いました。こちらはどういう意味でしょうか?

三橋「観光地の実力の物さしになるのは、旅館やホテルの質だけではありません。観光スポットや地方自治体、地域住民といった要素が全て絡み合って、観光地の質を決めていると思うのです。例えば、京都は一流の観光地です。そこに住む人々が『日本の文化は我々が作った』というプライドを持ち、観光客を迎えている。そうした意識が、京都の観光地としての価値を下支えしているのです。その点で伊勢志摩は、まだ一流とは呼べません。地域としての発信力が、まだまだ足りないと思うのです。

ですから、伊勢志摩の宿泊・観光業者は、協力しながら地域をもり立てる必要があります。ところが、そうしたネットワークは、残念ながらまだ弱いのが現状です」

――どうして、宿泊・観光業の企業同士が協力し合えないのでしょうか?

三橋「どうしてでしょうね。原因の1つは、新たな取り組み・発想に対する拒否反応かもしれません。

今、宿泊業を取り巻く環境は大きく変わっています。外国人旅行者が増える一方、廃業する老舗旅館も少なくありません。10年前と同じやり方を続けていてはうまくいかないのは、誰の目にも明らかなはずです。ところが業界には、古いやり方にこだわり、新しい取り組みを始める人を排除しようとする人が多いのです」

――なぜ、新たな取り組みを拒否する人が多いのでしょう?

三橋「理由の1つは、旅館業に二代目、三代目の経営者が多いことでしょうか。そうした人は、従来のやり方を守ることに慣れているのです。

いずれにせよ、観光地としての力を高めるには、各企業が培ってきた情報やノウハウを結集し、地域全体で協力しながら変わる必要があるのです。そのために、私にどんな役割が求められているのか。今、戦略を練っているところです」

外部のプロ・行政などと協力しながら事業を進める

――ところで、ばさら邸では、さまざまなクリエイター・専門家と協業することが多いそうですね。

三橋「はい。建築やデザインの専門家、広告のプロフェッショナル、ワインのインポーターなど、幅広い外部パートナーと協力し、サービスの質を高めようとしています。

直近では、金融の外部チームを結成しましたね。新しいホテルや旅館を建設する際には、数十億円規模の資金が必要です。これまでは銀行調達で補っていたのですが、銀行だけでは金額面で限界がありますし、資金調達までの期間も長くなってしまいがちです。そこで、大きな資金を短期間でまかなうために、REITやファンドを組み合わせた資金調達の枠組みを作ろうとしているのです。そのチームには税理士、弁護士などが参加しており、次の建設プロジェクトに向けて定期的に打ち合わせをしています。

ルクセンブルクにエージェントを作る計画も立てています。ばさら邸ではインバウンド客の比率を3割に高める目標を立てていますが、そのためにはヨーロッパに拠点を作る必要があると考えたからです。それに向け、別の外部スタッフと協力体制を築いています」

――社外のプロと協力することにはどんな長所がありますか?

三橋「専門家の知識・ノウハウが短期間で手に入る点が、最大の長所ですね。また、外部のプロとお付き合いすることで、スタッフの刺激になる点も隠れたメリットです」

――これから、どんな取り組みを考えていますか?

三橋「やはり、伊勢志摩全体を盛り上げていきたいですね。現在、行政と組んで面白い試みを始めようと協議中です。ただ、そのためには、横のつながりがどうしても必要。伊勢、鳥羽、志摩といった地域の枠、あるいは宿泊業や観光業といった業界の枠を超え、幅広い企業・組織がネットワークをつないで動ける仕組みを構築できればと考えています」

(TEXT=白谷輝英 PHOTO=平山論)

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2017年06月20日