2014年度研究プロジェクト

ひとつ付記しておけば、灘卒リーダーがキャリア後期で高評価を得ているのは、世代効果にすぎず、挽回といった現象が起きたわけではないという可能性もある。つまり、「それほど有能ではないキャリア中期の灘卒リーダー」と「有能なキャリア後期の灘卒リーダー」という違いが図4~5の結果に結びついただけであり、現在、キャリア中期の灘卒リーダーが後期段階に入っても、開成卒リーダー優位という状況はあまり変わらないということはあり得る。加えて、開成卒リーダーに質的変化があったという可能性もあろう。奇しくも開成のキャリア中期リーダーは、東大進学者全国1位になってからの開成生にほぼ該当する。生徒の能力や教育のあり方になんらかの変化があったとも考えられる。元来、挽回が起きているかどうかといったことは、パネル(追跡)調査によって検証すべき問題であり、今回の分析の大きな限界はそこにある。

しかしながら逆に、世代による差だけで以上のような結果が出ると考えるのも不自然ではなかろうか。灘卒リーダーが遅咲きであるという可能性、そして早咲きか遅咲きかという分かれ目に学校の特徴が関係しているというストーリーには、腑に落ちるというところも多いように思われる。自由記述に寄せられた次の意見も参考になろう。卒業生自身の言葉で、学校の特徴とその意味について述べられた記述を一部取り出したものである。

社会に出ていろいろな人材をみていると、学校それぞれに「どういう人材を輩出するか」という社会的な役割があると感じられてなりません。灘校に求められている社会的な意義は、「最高の学業すらこなせる人材の輩出」と感じます。…私自身が直面したように、社会に出ると壁にぶつかることもあるでしょう。壁はいろいろなものがあるでしょうから、社会で実際に直面してみるまではどうしようもありません。しかし、頭で理解して、乗り越え方を模索する地力は、灘校時代に培われました。

(灘校卒業生,30代,製造業・建設業勤務)

最終的には周りから高く評価されるような働き方ができるという点で、開成卒リーダーと灘卒リーダーは一致している。ただ、そこに辿り着くまでのプロセスには、出身校の特徴を反映したかのような違いがあり、開成卒リーダーは比較的スムーズな、灘卒リーダーはマイペースに浮上してくるような活躍をみせる。両者の共通点と相違点は、差し詰めこのようにまとめることができるのではないだろうか。

さて、いよいよ次回が本連載の最終回になる。開成・灘卒業生調査という貴重なデータを分析したからこそ紡ぎ出せるリーダー論とはどのようなものか。学校や企業、あるいは社会全体に対して、どのような示唆を提供することができるのか。これまでの分析結果を振り返りつつ、いま少し踏み込んだ議論を展開することにしたい。

2015年04月28日