2014年度研究プロジェクト

転職による状況の改善
なお、当然ながら、リーダーたちがそのまま状況に甘んじているわけでもない。たとえば、大規模組織では能力を十分に発揮しにくいと指摘したが、大規模組織から中堅規模組織へと転職し、能力の発揮に成功している者もいる。最後にその点について触れておきたい。

そもそも開成・灘卒業生にとっても、転職はそれほど珍しいことではない。卒業生全体の転職比率は41.6%。リーダー素質を備えている者に限定しても43.8%。およそ5人に2人が転職を経験しているということであり、これは一般大卒の転職比率44.8%とほとんど変わらない値になっている。そして企業規模という観点から転職を整理したとき、転職経験リーダーの分布と能力発揮観は図6に示すようになり、(1)転職タイプとしては、大規模組織から中堅規模組織へと移る者が42%ともっとも多い、(2)「能力を十分に発揮できている」という者の比率は、この「大規模組織→中堅規模組織」という転職を経たグループでもっとも高い、といったことがみえてくる。調査では、能力発揮観の変化まで尋ねていないため、転職と能力発揮観との関係を直接確かめることはできないが、それでも、世間に広がる安定志向とは逆行する流れにのって開花している姿は注目されよう。模索しながらも、望ましい状況に辿り着こうとするリーダーたちの逞しさのようなものがあらわれているように思う。

図6 開成・灘リーダーの転職タイプと能力発揮観(転職経験者のみ)05_06_02

さて、本連載コラムもすでに後半戦に入っている。最終的には、第1回からの議論を踏まえたリーダー論という形にまとめていきたいが、次回ではその前に、これまで合わせる形で用いてきた「開成卒業生調査」と「灘卒業生調査」のデータを切り離し、両校卒業生のリーダー比較を行うことにしたい。同じ中高一貫校の男子校でもあり、基本的に共通するところも多い両校ではあるものの、データからは違いというものも見出せる。共通点は何であり、相違点は何なのか。在学時代の過ごし方や就業後のキャリア、そして周りからの評価にどのような特徴を見出せるのか、みていくことにしよう。

2015年04月14日