2014年度研究プロジェクト

それに対して、「能力が発揮できていない」と感じさせる要因として指摘されるのが、「不本意な就職」と「中高時代の高成績」の2つである。

リーダー素質を有する開成・灘卒業生のなかで、「第一志望に就職できず、別の道(就職先)を選んだ」という者は2割弱ほどいる。看過できない比率であるが、いったんこうした就職プロセスを経ることは、自らの能力を活かす場面と出合いにくくするようだ。大きな苦労をせずに、第一志望に就職した者と比較すると、「能力が発揮できていない」グループへのなりやすさが1.82倍程度に上昇する。

加えて、それとは異なる悩ましさが確認されたのが、「中高時代の高成績」の部分である。開成・灘卒業生といった超進学校のなかでも相対的に認知能力が高かった者、成績が中~上位だった者ほど、社会に出てから能力を十分に使うことができずに、一種のくすぶりを感じている。

リーダー素質を持っている有能な者の能力が活かされていない可能性がある。しかしながらこの成績の影響については、結論を出す前に、図5をみておくべきだろう。これは、成績中~上位者のリーダーを取り出し、調査に含めた質問項目「中高時代、勉強面で“この人には、かなわない”と思える人が周りにいましたか」に対する回答の別に、その分布と能力発揮観の実態を整理したものである。「いなかった」という者は、トップクラスを悠々と走っていた【余裕型】、逆に「かなりいた」という者は【非余裕型】とみなせるが、グラフからは「発揮できていない」という者が【非余裕型】に多いこと、そして高成績の過半数が【非余裕型】に属していることがわかる。すなわち、中高時代の成績にみられたマイナス効果は、【非余裕型】の状況に引っ張られて出てきた結果だということであり、いわゆる「天賦の才」を持つ者の事情は異なっているということである。さらにいえば、「十分に発揮できている」という【余裕型】の比率は、リーダー全体から算出された3割(図2参照)を超える「4割強」という値をみせる。頭が良すぎるから活躍できないという危惧したようなことが起きているわけでもなさそうだ。

図5 勉強面の相対的位置と能力発揮観の関係(成績中~上位リーダーのみ)図5 勉強面の相対的位置と能力発揮観の関係(成績中~上位リーダーのみ)

ただ、だとすれば、問題は「なぜ、【非余裕型】成績中~上位者のリーダーは、低い能力発揮観を感じやすくなるのか」ということになろう。中高時代、成績をとることに価値を感じ、追いかけられるように勉強したまではよかったが、その後は新たな活躍の場を見出せずにいるのか。それとも、成績のようにはっきりと差がつかない仕事生活に、空しさのようなものを感じているのか。ただ、いずれにしても、見方を変えれば、「努力をすることができた」リーダーたちが充足感を得ていない状況は、個人にとっても、企業をはじめとする組織にとっても、望ましい状況とは言い難い。これもひとつの「損失」ではないか。この結果が示唆するところを、改めて考える必要があるように思われる。

2015年04月14日