2014年度研究プロジェクト

組織の特性か、仕事の特性か、リーダー自身の特性か
本卒業生調査の親プロジェクト『「社会リーダー」の創造』では、社会リーダーの実像をよく知る慧眼の士へのインタビューを通じて、「社会リーダー」をめぐる論点を浮き彫りにしようとする企画も進められている。その企画で意見を求められた灘中学校・高等学校の現校長、和田孫博氏は、リーダーという側面に引きつけたときの卒業生の現状を次のように語ってくれた。

和田:冒頭でお話ししたように、組織に任命されたリーダーが、パフォーマンスを上げていくということがもう難しい時代ですから。まぁもともと、うちのような学校の出身者には、大企業や権力の中枢でリーダーシップをとっている人が少ないんですけどね。組織に収まらないケースが多い。得意分野での力や個性を発揮すれば取り上げてくれるという、わりに緩い組織でのほうが生き生きとしているようです。

聞き手:そういった人材に共通する資質、灘校のカラーというのは、どのようなものでしょう。

和田:自由な発想力はかなりあると思いますし、それを認める環境がある。(中略)…だから、管理教育をしていないから、そのぶん管理色が強い社会では収まりきらないのでしょう。そういう人材がリーダーになっていくのか、異端児になっていくのか、それはわかりませんが。

処遇や職業威信の面では有利とされることが多い大企業や官公庁ではあるが、和田氏がいうように、その管理色の強さから、あるいは官僚的な性格などから、折角の能力が発揮できないということは十分にあり得よう。また、大病院も含め、大規模組織や官公庁では縦割り分業体制がとられていることが多く、仕事の幅が限定されやすいという点も能力発揮問題に関係しているかもしれない。リーダー素質を持った卒業生がどのような組織に所属しているか。さらにどのような就職活動で辿り着いた組織で仕事生活を始めており、医師や研究職といった専門職として働いているのか、違うのか。これら組織や仕事に関わることは、能力発揮の程度を左右する重要な要因として想定される。

一方で、リーダー自身のなかに要因を見出すことも可能だろう。リーダーたちには「他人には描けないような、大きなビジョンやプランを描きたいと思う」と「喜んで自分についてきてくれる人がいる」という2つの素質は備わっている。しかしながら彼らが持っている力が発揮されるためには、プラスアルファとしてさらに別の素質が必要だということがあるかもしれない。たとえば、体力。あるいは、フォロワー以外のメンバーとも問題なく関係を築けるような力や学習の継続。こうした第三の要因が能力発揮の鍵を握っている蓋然性は高い。

そしてリーダー自身の特性については、いわば超進学校ならではのストーリーを描くこともできよう。すなわち、「認知能力が高ければ高いほど、周りのメンバーとのギャップが大きくなるがゆえに、ともに仕事を進めることが難しくなる」というものだ。頭の良すぎる上司は、部下がどこでつまずいているのかがわからないため、導くことが不得手だという話も聞く。また上司からすれば、自分よりも賢い部下は敬遠してしまうといったこともあるようだ。いわば「能力の損失」が起きているという可能性であり、就業意識を超えた社会の問題という観点からも、確かめておくべきひとつの柱であるように思われる。

以上で示した要因ならびに分析に用いる具体的な変数を一覧としてまとめたものが、図3になる。では、これらのうち、能力の発揮を実際に左右しているものはどれなのか。影響のありようを、どのように描くことができるのか。「多項ロジスティック回帰分析」という手法を用いて検証していくことにしよう。

図3 能力発揮観を左右すると考えられる要因図3 能力発揮観を左右すると考えられる要因
2015年04月14日