海外におけるインターンシップ最新事情米国のインターンシップの特徴を探る~採用オファー編~

前回のコラムでは、米国大手企業のインターン生採用規模から、募集方法、応募プロセスなど、インターン生採用に至るまでの特徴について考察した。今回は、インターン生の正社員登用を念頭に置いた雇用主による取り組みを、『2015 Internships USA』のデータを基に検証していく。

過半数のインターン生に正社員採用をオファーする企業の割合は6割弱

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インターン生への「正社員採用オファー率51%以上」の企業の割合は56.7%。インターンシップが新卒採用の手段となっている米国企業では、厳しい選考を通過した人材のみがインターンシップに参加する。正社員採用オファー率が高いのは、このためと考えられる。

一方で、「正社員採用オファー率が50%以下」の企業の割合も4割強(40.5%)あり、2人に1人以上のインターン生が選考から外れる場合も少なくないことが示されている。学業成績や面接などの判定結果が一定基準を満たしていても、長期にわたって学生の働きぶりを観察した結果、最終的に採用要件に満たないと判定されることも珍しくないようだ。

オファーを出したインターン生の半数以上が承諾する割合は8割超

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米国では、インターンシップ実施の目的がインターン生の正社員登用であることは、連載第1回ですでに述べた。『2015 Internships USA』調査対象企業で、この目的をどの程度達成しているかを見てみると、学部生の場合、 「正社員採用オファーに対する承諾率が51%を越えている」と回答した企業の割合は、86.0%に達している。また、「81%以上」と回答した企業が47.2%、「71%以上」と回答した企業が66.6%となっており、正社員採用オファーに対する承諾率は、全般的にかなり高いと言える。

また、「修士課程で学ぶ学生による承諾率51%を越える」企業の割合は、65.7%となっている。学部生よりは率は下がるが、それでも高率だと言えるだろう。

企業は学内説明会や面接、ジョブフェアなどに予算を割く

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多額の予算を配分しているという回答が最も多かったのは、「キャリアフェア/ジョブフェア(合同会社説明会)」。次いで、「学内での面接スケジューリング」、3番目は、同率で「学内説明会/オープンハウス」と「自社のキャリアサイト」だった。ジョブボード(求人求職サイト)やソーシャルメディアなどのバーチャルな採用経路より、リアルな採用経路に予算を重点的に割く傾向が見られる。また、NACE(全米大学就職協議会)の241社を対象にした『2015 Internship & Co-op Survey』でも、様々な採用経路の中で、キャリア/ジョブフェア(会社説明会)や大学キャンパスを訪問しての採用活動が効果の点で優れており、予算を重点的に配分しているという回答が優勢だった。

他社より高い報酬、休日手当、社交活動でインターン生を惹きつける

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2011年以降、米国では無償インターンシップに対する集団訴訟が相次いだことから、訴訟リスクを避けるために有償インターンシップが主流になりつつある。また、単に有償であるだけでなく、他社より高い報酬を提示することが、優秀なインターン生を惹きつけるポイントになっていると、『2015 Internships USA』調査結果が示している。インターン生に提供している福利厚生の中で回答が多い項目トップ3は、「他社より高い報酬」(73.0%)、「休日手当」(62.2%)「インターンシップに関わる社交活動」(56.8%)となっている。

インターン生の平均報酬

過去1年に採用したインターン生の平均報酬を尋ねたところ、学歴が高くなるにつれて報酬が上がる傾向が見られた。学部生は時給ベースだと最低12~最高32ドル、月収ベースでは1,700~5,500ドルだった。一方、修士課程のインターン生では、時給14~35ドル、月収2,400~7,500ドル、博士課程では時給28~40ドル、月収2,400~8,750ドルという結果だった。競合の報酬額や業務内容にも左右されるが(それぞれ45.9%と43.2%)、インターン生の報酬額を決める際に最も考慮するのは学位(54.1%)のようだ。

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TEXT=小林誠一