Column

3500人が活用する「S流仕事術」とは?

サントリーホールディングス株式会社

従業員6500人の約3500人が在宅勤務を利用
サントリーの大阪本社にある営業の企画部門。例えば『プレミアムモルツ』の特定のエリアの販売計画を作成し、その計画達成のために営業にどのような活動をしてもらうかを考えるのが企画スタッフの仕事だ。ある女性社員の場合、実際の営業への指示や販促物の手配などは日中にこなし、夕方17時には会社を出て保育園へ子どもを迎えに行く。帰宅後、家事を一通りこなした後、忙しいときには20時にパソコンのスイッチを入れて資料作成を始め、22時には完了する。限られた時間を最大限活用し、プライベートを担保しながら業務アウトプットの量と質も確保する。

サントリー011年前までこの企画部門でマネジャーを担当していた人事部部長の千(せん)氏は「当時5人のメンバーのうち4人が女性で、家庭があったり育児中だったりしましたが、それぞれ限られた時間で最大の成果を追求し、非常に高いアウトプットを残していました」と語る。昨今、在宅勤務やフレックスタイムを導入する企業は少なくないが、サントリーでは国内主要グループ会社の社員6500人のうち約3500人が在宅勤務の利用実績がある。ここまで全社的にフレキシブル・ワークを浸透させ、確かな成果につなげている例は多くないだろう。千部長にその秘訣を聞いた。

「挑戦と創造」の基盤、「ダイバーシティ経営」
2010年、サントリーは「ワークスタイル革新」を掲げ、その方法論として「S流仕事術」を提示した。これは主に女性の活躍やグローバル化を背景として、従来の9時~17時半、毎日事業所に来て働くスタイルから、場所や時間の制約にとらわれず自由に働ける環境を創ろうという考え方。この「S流仕事術」の目玉となるのは在宅勤務とフレックスタイム制である。

「かつては当社も長時間労働でも成果さえ上げていればOK、という考え方があったのは確かです。しかし、これからは限られた時間内で最大限の成果を発揮するという発想に切り替えないといけません。育児や介護などで長時間働けない社員もいますし、海外ではそういう働き方をしていませんから」(千部長)。

「やってみなはれ」に代表されるようにサントリーは自由闊達で「挑戦と創造」を重んじる社風がある。そして、これを支えるのが「ダイバーシティ経営」なのだ。文字通り性別や国籍、年齢などに制約されることなく、多様な個性がぶつかりあうことで新たな価値を創造していくのがサントリーのダイバーシティ経営である。「S流仕事術」はその延長上にあり、さらに時間や場所の制約をも取り払う。

まずマネジャーが率先して活用
サントリー02「S流仕事術」が目指すのは時間と場所にとらわれず柔軟な働き方で生産性を上げ、イノベーティブな発想を高めていくこと。他社との違いはこれを具体的に複数のパターンで明示し、人事部や各管理職が率先して活用しながら浸透を図っていった点にある。最初はまず20部署くらいに声をかけて試験的に導入をスタート、そこで出た意見を吸い上げて、「これならいけるね」という状態を確認した上で2010年8月に本格導入した。

「それでも最初はなかなか使ってもらえないということで、人事スタッフが手分けをして各事業所を回り、『働き方を変えていくことがサントリーの今後の成長を左右します』と草の根で訴えていきました。同時に社長や各部門のトップからも活用するようメッセージしてもらい、ミドルのマネジャーには『まずマネジャーのみなさんが使ってみてください。絶対良さがわかりますから』と説得し、マネジャーが使うことによって下のメンバーも遠慮なく使えるムードを醸成していきました。実際に使った感想が次第に口コミなどで広がっていき、現在の状態につながっています」(千部長)。

2016年07月05日