全国就業実態パネル調査は2016年にスタートし、2025年調査をもって10周年を迎えました。調査回答にご協力いただいている皆様に厚くお礼申し上げるとともに、JPSEDで明らかにしてきたこと、社会で果たしている役割、発信してきたレポート等をまとめました。
JPSED10周年の軌跡に
感謝を込めて
おかげさまで2025年、「全国就業実態パネル調査(JPSED)」は10周年を迎えることができました。継続的に調査にご協力いただいている皆様に、心より御礼申し上げます。この節目にあたり、JPSEDの立ち上げ背景と特徴を振り返るとともに、これまでの活用実績についてご報告いたします。
JPSEDは、働き方の実態と変化を継続的に可視化するために、2016年に開始された大規模なパネル調査です。同一個人を追跡するパネル調査は、継続的な変化の把握だけでなく、変化の要因や効果の分析に強みを持ち、政策評価や制度変更の効果検証、さらには経済・社会的ショックの影響分析において不可欠とされています。しかしながら、日本においては、こうした調査データの蓄積が十分とは言えない状態でした。
そのようななかで、必要とされる調査データを社会に届けるという強い思いのもと、JPSEDの設計を進めてきました。質の高いパネル調査の実現には困難が伴いましたが、JPSEDの理念にご賛同いただき、調査設計委員を快くお引き受けくださった統計や労働分野の有識者の先生方との協働体制により、議論を重ね、JPSEDを形にすることができました。JPSEDは大規模なパネル調査であることに加え、働き方を「量と質」の両側面で把握できる点、そして、日本の就業動向の縮図を捉えられる点など、他に類を見ない特徴を備えています。
データを囲い込まず、いち早く公開しているのは、より多くの方にご活用いただくことで、実態の解明が進むと考えているからです。これまでに、厚生労働省の「労働経済白書」、内閣府の「経済財政白書」、中小企業庁の「中小企業白書」、OECD(2018)の報告書など、政府機関による白書等で活用されてきました。また、東京大学社会科学研究所SSJデータアーカイブを通じて、2016年度から2024年度までの累計で7,000件近くの個票データの利用申請があり、JPSEDはさまざまな分野の学術研究に広く役立てられています。
日本の働き方は望ましい方向に向かっているのか。これからも継続的に、その実態と変化を定点観測していくことが求められます。私たちは今後も、質の高い調査を継続的に実施し、データを広く公開することで、日本の就業実態のさらなる解明に寄与してまいります。
リクルートワークス研究所
調査設計・解析センター長
萩原牧子