EVENT REPORT No.2

Technologyによって変化する働き方と人事

パネルディスカッション『Work Model 2030 変革への課題と方策』Part 1
テクノロジーの進化によって、人々の働き方は大きく変わろうとしている。そのような中、企業人事はどのように対応していくべきか?

Kunio Ikari 碇 邦生  2017.03.22 (wed)

Q. 会場からのご質問

テクノロジーの進歩のスピードは速く、求められる能力やスキルもすぐに陳腐化してしまうと思われます。そのような中、どのように個人の専門性を高め、変化に対応した働き方を実現していけるでしょうか?

A. ミッチェル氏による回答

テクノロジーの変化に対応するために、専門性を身につけるうえで重要なことが2つあると考えます。第一に、小学校のうちから教育のスタンスを大きく変えていく必要があります。具体例を挙げると、生物の授業で数多くの動物の名前や身体器官の名称を覚えさせるといったように、現在は暗記が非常に重要視された教育がなされています。しかし、テクノロジーが発展してくると、暗記能力を重視するという価値観は過去のものとなります。Webを使うことで、いつでもどこでも必要な情報を即座に手に入れることができるためです。

また、AIが普及してくると、仕事はAIの補助なくしては成り立たなくなるでしょう。そうすると、AIによってタスクが自動化されていくために、計算や作図を個人でやる作業がなくなります。その代わりに、他者と協業して問題解決に当たっていくことの重要性が上がります。

このような変化に伴い、教育で重視することが変わってきます。それは、既存のモノや情報を組み合わせて新しい方法を生み出していく能力や、多様なメンバーと協業していくチームワークです。学校をはじめとした教育の在り方は大きく変わることでしょう。専門性を身につけるうえで重要なことの2つ目は、学生のころから、ひとつの専門性を突き詰めていくのではなく複数の専門性を身につけていくことです。変化のスピードが早まる中で、長い職業人生を通してひとつの専門性でいくというキャリアは困難になるでしょう。たとえば、私自身の経験を話すと、学生時代はテクノロジーのスペシャリストとして、狭く深く自らの専門性を高めてきました。しかし、ある程度キャリアを積んでくるとキャリアを発展させていくうえでは哲学のようなリベラルアーツの知識が必要だということに気付かされました。ひとつの専門性だけでは限界が来てしまうということは、現在でもよくあることです。そのためにも、複数の専門性を持つことが重要になります。

A. 海部氏による回答

今の日本の仕組みの中では、自分のキャリアを組み立てていくという考え方を学ぶ機会があまりにもありません。なので、どこかで訓練していかなくてはなりません。キャリアを魚とたとえるならば、これまでは魚を与えるやり方でした。しかし、これからは魚の釣り方を教えろというのがポイントとしてあります。自分でキャリアをどういうふうに組み立てていくかという考え方が日本ではあまり広がっていないのですが、このことは、結局人が与えてくれるものという考えがあるからだと思います。しかし、これからは自分がそれを作っていかなければいけないのです。自分でキャリアの組み立てを考えていくというやり方を今の若い人はどこかの時点で訓練する必要があると思います。

これからの子供に対しては、読み書き算術、それに最低限コーディングくらいは教えたほうがよいのではないでしょうか。コーディングは小学生からやる必要はないのですが、コンピュータとネットを早いうちから使えるようにし、高校生くらいのある程度の年齢になったら基礎となるコーディングを学ぶ。そして、いよいよキャリアについて考えなくてはいけないとなったときに、ミッチェル教授がおっしゃったように、リベラルアーツとソフトウェアについて学ぶなど、2つくらいの専門性の組み合わせを常に自分の中に持っておくのです。長いキャリアの中で、ひとつがダメになったら、もうひとつの専門性でやっていくという考え方もあるかもしれません。

Part 2に続く

碇 邦生

Kunio Ikari

碇 邦生

リクルートワークス研究所 研究員

採用・選抜に関するHR Techやビジネススキルや研修効果の測定など、産業組織心理学の視点から人事へのテクノロジーの活用を研究テーマとする。2015年より現職。

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