EVENT REPORT No.3

Technologyがフリーランサーとして働く機会を増加する

パネルディスカッション『Work Model 2030 変革への課題と方策』Part 2
シリコンバレーを中心として、テクノロジーがフリーランサーとして働く機会を増やしている。雇用されない働き方が日本の社会にどのような影響を与えるのか?

Kunio Ikari 碇 邦生  2017.03.27 (mon)

はじめに

本レポートは、2017年2月28日(火)に開催されたイベント『テクノロジーが日本の「働く」を変革する』(共催:リクルートワークス研究所、Recruit Institute of Technology)のQ&Aセッションについてご紹介する。Q&Aセッションでは、「Work Model 2030 変革への課題と方策」をテーマとして、会場からご質問をいただき、登壇者(トム・ミッチェル教授、海部美知氏、大久保幸夫)が回答する形で、生き生きと働き続けるために必要な論点について議論された。Q&Aセッションにおける質疑応答のまとめは、Part 1とPart 2の前後編に分けてご紹介する。

Part 2では会場からいただいたフリーランサーについての質問をまとめ、テクノロジーによって今後増えていくと予想されるフリーランサーについての疑問と、予想される課題とその対策について、質疑応答の要旨をまとめている。また、最後に、イベント全体を通してのまとめのコメントを要約する。

Q. 会場からのご質問

テクノロジーによってフリーランサーが今後増えると思われますが、フリーランサーの立場が弱く、報酬が低く抑えられてしまうという問題も考えられます。フリーランサーの所得を増やすための解決策としてどのような手段が考えられるでしょうか?

A. 海部氏による回答

日本におけるフリーランスの待遇について、フリーランスだから安いという議論は需要と共有の問題なのではないかと思います。たとえば、現状、Webのライターは原稿料が安く抑えられています。このことは、フリーランサーの仕事の機会が少ない中でたまたまWebのライターの仕事の機会が大きく増えてしまったために、そこに人が集まって、働く人の供給のほうが多くなってしまい、結果、報酬が安くなっていることが一因としてあると思います。フリーランサーとして働ける選択肢がもっと増えていくと状況が改善していくかもしれません。

フリーランサーが働ける機会を増やすためには、情報を流通させるための整備が必要になります。日本でもフリーランサーと仕事をマッチさせるサービスが出てきています。ですが、実は、米国でもこのようなサービスを利用して仕事を得ているフリーランサーはそこまで多くはありません。友人や知人からの紹介など、口コミが最も一般的な仕事の受け方です。重要なことは、どのようなルートであっても、フリーランサーとして働くことのできる機会を増やすように情報流通の整備を行うことです。

また、フリーランサーへの報酬を向上させるためには、評価システムの見直しも重要になります。経験やスキルによって報酬が決まるのではなく、一律で安い報酬が決められているのでは待遇改善は難しいです。たとえばライターでしたら、記事がうまく書けるようになってきたら、それに合わせて報酬が上がるようにするなど、スキルの向上と待遇の向上をマッチさせることで、フリーランサーへのインセンティブにもなりますし、キャリア・パスも開けてきます。

このほかにも様々な解決方法が考えられます。たとえば、待遇改善を要求していくための組合やギルドを作っていくことも解決策のひとつです。そのほかにも、ケアワーカーとフリーランサーをうまく両立させることで、より効率のよい働き方が待遇の改善につながっていくのではないかと思われます。

A. 大久保による回答

フリーランサーの所得を上げられるかどうかは難しいところで、解決策を見いだせていない問題のひとつです。日本の文化的な背景を考慮してみると、昔から日本は内職や家内労働のように安い報酬で労働するという下請けの慣行があります。フリーランサーの問題は、このような下請けの慣行のままでいくと解決が難しいでしょう。つまり、このままの仕組みでいくと、フリーランスの格差は広がっていくと考えられます。そのため、社会慣行を変えていかなくては、フリーランサーの所得を上げることは難しいです。

また、フリーランサーに関しては、元々、人数が少なかったこともあって税制や社会保障におけるルール作りが遅れてしまっています。税制や社会保障における問題が大きいのに対して、国としてどのように対応していくのかが、重要なところだと考えます。