EVENT REPORT No.2

Technologyによって変化する働き方と人事

パネルディスカッション『Work Model 2030 変革への課題と方策』Part 1
テクノロジーの進化によって、人々の働き方は大きく変わろうとしている。そのような中、企業人事はどのように対応していくべきか?

Kunio Ikari 碇 邦生  2017.03.22 (wed)

はじめに

本レポートは、2017年2月28日(火)に開催されたイベント『テクノロジーが日本の「働く」を変革する』(共催:リクルートワークス研究所、Recruit Institute of Technology)のパネルディスカッションについてご紹介する。パネルディスカッションでは、「Work Model 2030 変革への課題と方策」をテーマとして、会場からご質問をいただき、登壇者(トム・ミッチェル教授、海部美知氏、大久保幸夫)が回答する形で、生き生きと働き続けるために必要な論点について議論された。この質疑応答におけるまとめは、Part 1 とPart 2の前後編に分けてご紹介する。

Part 1では会場からいただいた質問の中でも、テクノロジーによる変化の中で企業や人事がどのように対応していくのかという疑問と回答に焦点を当て、要点をまとめた。Part 2では、テクノロジーによって今後増えていくと予想されるフリーランサーに関する疑問と、予想される課題とその対策について、質疑応答の要旨をお伝えする。

WorkModel2030イベントの様子

Q. 会場からのご質問

テクノロジーの進歩によってタスクの自動化が進み、働き方が変化していく中で、企業や人事はどのように対応していくべきでしょうか?

A. 大久保による回答

テクノロジーが進歩していく中で、企業におけるヒトに関する問題が人事だけで完結する規模ではなくなってきています。たとえば、テクノロジーを活用して生産性を高めようとすると、働き方改革や長時間労働問題の文脈にのってきます。これらの取り組みは、経営改革や業務改革と一緒になって初めて成功します。人事だけの問題ではないのです。そのため、人事の専門性としても経営課題にも対応できるような、これまでよりも幅広いものが求められるようになっています。

これらのテクノロジーによる働き方の変化は、これからやってくる将来の問題ではなく、すでに始まっています。たとえば、ミッチェル教授の講演の中でも、AIによって仕事の中に含まれているタスクが次々と自動化されていくだろうという話がありました。ですが、日本のこれまでの働き方ではアメリカのように職務内容を明確化させることなく、仕事の中身や内容については曖昧模糊としたままで進めてきました。そのため、一見すると日本では仕事をタスクとして分解することが難しいために、AIによる自動化がすぐには進まないように思えるかもしれません。しかし、そうはならないでしょう。

本来は、仕事内容を定義せずに曖昧模糊とさせることで、個々人が創意工夫する余地が生まれるだろうという狙いが日本企業にはありました。しかし、このやり方では成果を出すまでに時間がかかり過ぎてしまい、長時間労働が問題となっている現在のビジネス環境には合いません。業務を見直して分解しようという動きはすでに始まっているのです。

A. 海部氏による回答

このように仕事の中身を分解して職務内容を明確化させようという動きは、米国であっても古い歴史があるわけではありません。ジョブ・ディスクリプション(Job Description)と呼ばれる明確化された職務内容は第二次世界大戦後に出てきたもので、米国人材マネジメント協会(Society for Human Resource Management)が中心となって整備してきたという歴史があります。つまり、変革を成し遂げるためには推進役となるリーダーが必要となるのです。

これまでの日本の仕組みは、人が余っているという前提でできてきました。しかし、今は人が足りない世界になっています。つまり、職務が明確化されないままでいたときとは、背景が変わってきています。そのため、今いる人を大切にして、働き方を変えていかなくてはならない状況にあるのです。変わらないから仕方がないでは企業もやっていけなくなっています。誰かが先導して、変革を進めていかなくてはならないのです。現状の中で課題を整理し、リードしていくことを是非、業界の中でやっていってほしいと思います。