フツウでないと戦力外?LGBT(性的少数者)

理解者・支援者である「アライ」を増やす

What's this number? 7.6%

日本人の10%を占めるAB型とさほど変わらぬ比率=7.6%でLGBTは存在するという。LGBTとはレズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーの頭文字の組み合わせで、性的少数者を意味する。

人材開発部では8割が自発的に「アライの表明」であるステッカーを貼っている。LGBTの方への理解があり、支援の姿勢があることを当事者に示すためだ。「理解者がそばにいるという安心感、ここにいてよいのだというメッセージは、この会社で働きたい、もっと貢献したいという思いにつながると実感しています」(北村氏)

野村證券がいち早くLGBTの支援を始めたのは、2008年のリーマン・ブラザーズ欧州・アジア地域部門の継承が契機だ。
「職場は多様なもの。それをきちんと理解し、誰もが働きやすい場作りをしなければ、人材獲得競争を勝ち抜くことはできません」と明言するのはLGBTネットワークのリーダーを務め、現在は人材開発部・ダイバーシティ&インクルージョン担当の東由紀氏だ。外資系勤務の長い東氏にとって、LGBTは「職場にいて当然」。だが、2011年当時、社内でLGBTを公にする当事者はゼロ。東氏やネットワークの運営メンバーにとって、「なぜ、野村ではカミングアウトできないのか」は活動の動機であり原動力でもある。
LGBTを公表するか否かは個人の自由だ。当事者で人材開発部の北村裕介氏は、「自身は職場でもプライベートな話ができたほうが働きやすいと感じるタイプ。隠しごとはストレスとなり、業務効率の低下につながります」と語る。自分らしくいられることではじめて、能力が最大限に発揮されるのだ。「LGBTの当事者がいきいきと働ける職場作り」の実現のために、LGBTに偏見を持たない支援者「アライ」を増やすことを活動の前面に掲げた。
見かけや話し方では当事者かどうかわからない。同様に、「アライ」も手を挙げないとどこにいるかわからない。そこで、リーフレット「アライになろう!!」を作り、賛同者はPCにステッカーを貼るよう呼びかけるとともに、「LGBTウィーク」を設け、社員食堂にリーフレットを置くなどして、より多くの人の関心を集めるよう努めた。
社内ではステッカーが目立つようになり、月に2、3社は視察に訪れる。日本社会では偏見が大きい性的少数者に対する意識すらも、継続的かつ適切な教育と広報によって変わっていくことをこの事例が教えてくれる。

※数字データは電通 電通ダイバーシティ・ラボ「LGBT 調査2015」

Text=高柳由香Photo=圷邦信