クールじゃないジャパン日本人経営者は、休みをもっと取るべきだ!

ハンガリー出身の数学者で、大道芸人やタレントとしても活動しているピーター・フランクル氏は、日本で働くようになってはじめて、チームワークの価値に気づいたという。
「私がいた頃のハンガリーは社会主義国ということもあり、人に仕事を押しつけるのが普通でした。期限の直前にチームの誰かが仕方なく仕事を片付けると、楽ができたとホッとする(笑)。一方、日本では皆が助け合って1つのプロジェクトを成し遂げようとします。たとえばテレビ番組を作るときは、スタッフ全員が衣装係や音声担当といった役割を超え、互いに助け合います。米国でも中国でも仕事をしてきましたが、こんな光景は見たことがありません」
ただし、そこには弊害もあるという。自分の守備範囲を超えてまで仕事をするため、日本人は働き過ぎになりがちだ。
「日本人の生活には、オンとオフのメリハリが欠けています。仕事は短期集中するほうが効率的であり、休んでリフレッシュしてこそ新しい発想ができる。ぜひ、日本人にはもっと休みを取ってほしいですね」
しかし、現在の日本人はなかなか休めない。なぜなら、組織の上に立つ経営者がなかなか休もうとしないからだ。その原因は、権限委譲ができないせいだとフランクル氏は指摘する。経営者が部下に任せずマイクロマネジメントをすると、部下はモチベーションが下がるし、実力も発揮できない。
「米国のベル研究所で働いていた頃、同僚に優秀な男性がいました。一時期、彼はプライベートな事情でほとんど出社しなかったのですが、上司はそれを黙認し、毎日代わりにタイムカードを押していたのです。同僚は感謝し、復帰後、一生懸命働いて恩返しをしました。タイムカードを不正に打つのはまずいけれど(笑)、優秀な人材を採用して自由に活躍してもらうことが企業にとってベストだという考え方は正しいと思います」
経営者が積極的に休みを取れば、部下も休みを取れる。彼らはリフレッシュできるうえに、仕事を任されるためモチベーション高く働き、成長していけるのだ。

Text=白谷輝英Photo=平山 輪

ピーター・フランクル氏
Péter Frankl ハンガリー生まれ。オトボス大学数学科卒業後、パリ第7大学にて数学博士号を取得。1979年、フランスに亡命。その後は、世界各国で講演、研究を行うと同時に、路上にて大道芸を披露。1988年から日本に在住。1998年には、ハンガリーの最高科学機関であるハンガリー学士院のメンバーに選出された。現在は算数オリンピック委員会専務理事なども務める。