ピープル・アナリティクスを活用した生産性向上

人材・組織に関するデータを収集・分析することによって、より科学的な人材マネジメントを実現するための手法である「ピープル・アナリティクス」。言葉こそ新しいですが、日本企業が伝統的に取り組んできたことも数多くあります。そこで、その歴史を振り返るとともに、識者との対話や実証実験などを通じて、その未来を見通します。

本研究プロジェクトについて

テクノロジーの進展に伴い、「ピープル・アナリティクス」が近年、世界の人事関係者の間で注目され始めています。ピープル・アナリティクスとは、人材・組織に関するデータを収集・分析することによって、人材マネジメントを科学的に行うための手法です。人材マネジメントの権威ウルリッチは、人事部門のコンピテンシー最新版(2015年)において、「アナリティクスのデザイナーおよび解釈者」という役割を提唱するようになりました。

米国では2011年頃から人事の重要テーマとして浮上し、グーグルやフェイスブックなどの先進企業では、既に人事部門内にピープル・アナリティクス部隊が存在しています。これらの会社では、離職・アサインと給与水準などとの相関関係について分析を行っているようです。また、オラクルやワークデイといったERPベンダーも、人材のパフォーマンスや離職に関する分析パッケージを自社製品に搭載してきています。

しかしながら、私たちは、日米企業へのインタビューを通じて、まだこの分野は発展途上であるという現実を目の当たりにしました。その理由は、多くの企業においては、データの収集と簡易な分析に留まっていて、人材マネジメントの革新に寄与するに至っていなかったからです。
では、現在のピープル・アナリティクスのどこに問題があり、何を解決すれば、大幅な進歩が見込めるのか。私たちはこのような問題意識の下、以下を明らかにするプロジェクトを立ち上げました。

  1. ピープル・アナリティクスとは何か?(定義を明らかにする)
  2. ピープル・アナリティクスによって、何が実現されてきたのか?(歴史と実態を正しくとらえる)
  3. ピープル・アナリティクスによって、これから何が実現されるのか?(未来を予測する)

私たちの考える「ピープル・アナリティクス」とは

私たちはピープル・アナリティクスを「人・組織に関する様々なデータを収集・分析することにより、科学的に人材マネジメントを行うこと」と定義しました。 私たちの考えるピープル・アナリティクスで取り扱うデータには、大きく以下の2種類が存在します。

(1)伝統的人事データ 評価・報酬・等級等、従来から人事部門で収集していたもの
(2)新しい人事データ 行動・コミュニケーション・バイタル・SNSでの発言内容等、近年のテクノロジーの進歩により、収集・分析が可能になったもの

現在のピープル・アナリティクスは、伝統的人事データの分析が先行して進んでいます。欧米では既に、離職リスク分析、採用候補者の選定、高業績チームの特性の特定、次世代リーダーの抽出など、さまざまな領域で用いられるようになっています。そして、多くのERPやタレント・マネジメントシステムに分析ツールが組み込まれています。

新しい人事データについては、ここ数年で、IoT・ウェアラブル端末やセンサーによって収集した社員の行動・コミュニケーション・バイタルデータやSNSデータの分析・活用が一部企業で試験的に始まったところです。

私たちは、今後、この「伝統的人事データ」と「新しい人事データ」が一元的に集約され、新しい形のピープル・アナリティクスに昇華するのではないかと考えています。

このページについて

(1)研究の途中経過を公開するためのページです。

  1. ピープル・アナリティクスは、日進月歩の領域。次の変化を読みにくいのが実態です。
  2. そこで、私たちは、新しいアプローチとして、研究の途中経過を、このページで皆さんに共有しながら、プロジェクトを進めることにしました。
  3. 成果物だけではなく、ちょっとした発見や研究上の悩みも公開していきます。
  4. このページは、2週間から1か月に一度のペースで更新を行う予定です。

(2)皆さんと一緒に、この領域を開拓していきたいと考えています。

  1. 掲載するコンテンツは、有志による勉強会で話し合った内容や、有識者へのインタビュー結果など、バラエティに富んだものにする予定です。
  2. もし、このテーマについて関心を持っていただける方がいらっしゃいましたら、是非私たちにご連絡ください。一緒に考え、行動していきましょう。
  3. ご意見・ご感想はこちら

(3)研究成果の第一弾として、ピープル・アナリティクスの過去を振り返ります。

  1. ピープル・アナリティクスというと、目新しいことのように思えます。
  2. しかし、実は、日本企業の多くは、データを活用した人材マネジメントにずっと取り組んできました。
  3. 過去、私たちは何に取り組んできたのか、そして、これから何に取り組むべきなのか。一緒に考えてみましょう。

コンテンツ

報告書・論文

プロジェクトリーダー

  • 清瀬一善(主任研究員)

プロジェクトメンバー