マルチサイクル・デザインの時代 ~100年ライフのキャリアを考える~分析4 転機をつぶさに探索してみた(2)

分析④-2

苦しいことも、自分を見つめなおしたことも。
転機はキャリア展望のブートキャンプです。

転機の最中は、苦しいことも多いものです。部下との関係に悩んだ人、これまでのスキルが通用しなかった人、転職先で孤軍奮闘した人もいました。一方で、転機に向き合い、自分の仕事への姿勢を見直した経験は、キャリアの先行きをより見えやすくしてくれるようです。実際、転機を経験した人としていない人を比べると、転機を経験した人のほうがキャリア展望のスコアが高い傾向がみられました。苦しくとも実りのある転機は、キャリア展望を鍛えてくれる「ブートキャンプ」なのです。

とはいっても、転機となる経験はとても多様です。キャリア展望との関係が一様と考えるのも不自然です。そこで、転機の5つのグループ別に、それぞれに当てはまる人のキャリア展望スコアの平均値を見てみました。まず、転職や転勤、海外赴任など「仕事の場の変化」を経験した人が多いグループAの場合、転機経験者の中ではキャリア展望のスコアが高くありませんでした。一方、結婚や恋愛、子供の誕生・自立などの「ライフイベント」を経験した人が多いグループBと、昇進・昇格、異動など「職務・役割の変化」を経験した人が多いグループCは、比較的キャリア展望が高い傾向にありました。

キャリア展望が最も高かったのは、仕事の価値や意味を深く考えたり、重要な人と出会うなど「仕事の価値や意味の深化」をした人が多いグループDです。外形的な変化ではなく、内面の変化こそが、展望をもたらすことが改めて確認できます。しかし、仕事での不満や悩み、挫折や病気など「仕事や生活上の問題」を経験している人が多いグループEは、キャリア展望がはっきりと低い傾向にありました。このような問題を抱えてしまうと、確かに展望は曇りそうですが、活路はないのでしょうか。この後のページで探索しています。

4-2.jpgtext:大嶋寧子
「マルチサイクル・デザインの時代」レポートPDF版