HR Technology 世界の人事が注目する「HRテクノロジー」2023多様な働き方や採用を実現する、最新HRテクノロジー

グローバルセンターでは、タレントアクイジションテクノロジー(採用領域のHRテクノロジー)に着目し、2016年よりリクルートワークス研究所のコラムで「世界の人事が注目するHRテクノロジー」を紹介している。

2023年のHRテクノロジーのマーケットは、フルリモートで働きたい、スキマ時間に好きな場所で働きたいといった求職者の要望や価値観の多様化を反映している。
また、自国の人材不足解消のため、国外から優秀なコントラクター(業務委託)を確保したい、あるいは急な欠員や繁忙期に即時に人員を確保したいといった企業のニーズの高まりも背景にある。

HRテクノロジーは42領域へと拡大

Talent Tech Labs(以下、TTL)の「タレントアクイジションエコシステム」(HRテクノロジーマップ)にある代表的なサービス分野は、2016年には28領域であったが、2018年には34領域、2019年には36領域、2020年には41領域へと拡大し、2023年1月には42領域となった。
この間に新規参入や買収、事業転換、サービス終了などにより、100社以上のサービス事業者がHRテクノロジーマップに追加、または削除された。現在、TTLがHRテクノロジーの主なサービス事業者として紹介しているのは、計538社である。

本コラムでは、2023年版に追加された4つのサービス領域の概要と、主要なサービス事業者、製品サービスの特徴、ビジネスモデルについて解説する。
主な変更点は5つある。

  1. 「コントラクターペイロールプラットフォーム(Contractor Payroll Platforms)」〈新設〉
  2. 「AI&アルゴリズム監査(AI & Algorithm Audit)」〈新設〉
  3. 「テンポラリーレイバーマーケットプレイス:オンサイト(Temporary Labor Marketplace-Onsite)」〈追加〉
  4. 「採用アナリティクス(Hiring Analytics)」〈追加〉
  5. 外部人材を確保・管理するためのサービス〈領域の変更〉

変更点の概要は下記のとおりである。

1. 「コントラクターペイロールプラットフォーム(Contractor Payroll Platforms)」

コントラクターペイロールプラットフォーム(Contractor Payroll Platforms)コントラクターペイロールプラットフォームとは、海外に住みリモートワークで働く「越境テレワーカー」との業務委託契約や、現地通貨での報酬の支払いなどを簡単に行うことができる労務管理SaaSサービスである。
パンデミック以降はリモートワークの浸透や国際的な人材獲得競争の激化により、越境テレワーカーに対する企業のニーズが高まったことから、このサービスは急成長している。

2. 「AI&アルゴリズム監査(AI & Algorithm Audit)」

AI&アルゴリズム監査(AI & Algorithm Audit)AI&アルゴリズム監査とは、AIのバイアス(偏見)やアルゴリズムの公平性を検証する監査サービスやモニタリングプラットフォームである。AIの活用に対する法規制の強化に伴い、自社の技術の公平性や透明性を保つため、企業やHRテクノロジーのサービス事業者による利用が増えている。

3. 「テンポラリーレイバーマーケットプレイス:オンサイト(Temporary Labor Marketplace-Onsite)」

テンポラリーレイバーマーケットプレイス:オンサイト(Temporary Labor Marketplace-Onsite)テンポラリーレイバーマーケットプレイス(臨時労働者紹介)とは、企業や個人と臨時の仕事を求める求職者をつなぐプラットフォームである。
2021年のHRテクノロジーマップに含まれていた、現地(依頼先)に出向いて行う業務を主に掲載するサービスを、新たに「テンポラリーレイバーマーケットプレイス:オンサイト」として分類した。このサービスは主に、配達や製造、小売、物流、倉庫、医療などの時給制の求人やスキマ時間に働ける求人を掲載する。
オンラインで完結する業務を中心としたサービスは、「テンポラリーレイバーマーケットプレイス:リモート(Temporary Labor Marketplace-Remote)」として区別した。

4. 「採用アナリティクス(Hiring Analytics)」

採用アナリティクス(Hiring Analytics)採用アナリティクスとは、採用経路やツール、戦略の有効性を把握するためのデータの収集や解析に特化したサービスである。2021年のHRテクノロジーマップでは、採用データの解析ツールと、従業員に関するデータを収集し、人材配置・育成などの人事施策に生かす解析ツールが「ピープルアナリティクス」に混合していた。今回のマップでは採用データのツールを「採用アナリティクス」として区別した。データを活用して採用活動を最適化したいという企業のニーズを受け、採用に特化したサービスが複数登場している。

5. 外部人材を確保・管理するためのサービス

内部人材(従業員)を採用するためのサービスと、外部人材(インディペンデントコントラクターやフリーランサー、派遣労働者、SOWコンサルタントなど)を確保・管理するためのサービスを2つの領域に分けた。
企業ではこれまで、外部人材の募集・採用・管理は各事業部門の調達担当が行い、従業員については人事部が担当していた。近年、企業の労働力の多くを外部人材が占めるようになったことから、人事部と調達担当が協働して適材適所の人員配置を迅速に行う取り組みが広がっている。

図 HRテクノロジーマップ(2023)

2023年 HR テクノロジーマップ 42 領域

出所:TTL "Talent Acquisition Technology Ecosystem 11(2023.1)"を基に作成(2023.6)
[HRテクノロジーマップ 拡大版はこちら

HRテクノロジーマップは、2つの軸から成る。横軸は、タレントアクイジション(人材獲得)の工程で、1)ソーシング(候補者の発掘)、2)エンゲージメント(関係性の構築)、3)選考、4)採用、の4つのステージがある。縦軸は、対象で、内部人材向けと、外部人材向けのテクノロジーを表す。

GPT×HRテクノロジー

2023年2月頃から、欧米やアジアで、GPTを搭載するHRテクノロジーが急増している。連載の6回目では、GPTなどの生成AIがHRテクノロジーにどのような影響を与えているか、生成AIの技術がどのように実用化されているか、最新動向を解説する。

グローバルセンター
杉田真樹(リサーチャー)