HR Technology 2021候補者コミュニケーション&ボット(Candidate Communication & Bots)

候補者コミュニケーション&ボット 代表的なサービス事業者Candidate Communication & Bots
代表的なサービス

候補者コミュニケーション&ボットのサービスは、ショートメッセージ(SMS)による求職者との双方向コミュニケーションを自動化する候補者コミュニケーションと、チャットボットの2つに大別される。
候補者コミュニケーションとチャットボット、それぞれを単体で提供するサービス事業者に加えて、最近では両方の機能を備える事業者が増えている。

候補者コミュニケーションは、クラウド型メッセージ管理システムから、求人情報、スクリーニングのための質問、面接や入社前日のリマインドといったSMSを、求職者に個別または一斉配信できる。採用担当者は、同システムの管理画面からSMSを作成し、求職者の携帯電話の番号宛てに送信し、求職者からの問い合わせや質問への回答をSMSで受信する。事前に設定したタイミングで自動送信することも可能である。複数の求職者との送受信履歴を一括管理し、未読、既読、対話終了といった状況別に分類できる。画像やファイルの添付、開封率や返信率などの効果測定、配信停止申請の自動処理も行うことができる。
APIを使ったデータ連携やGoogle Chromeの拡張機能により、採用担当者が日常的に使うATS(応募者追跡システム)やCRM(候補者管理システム)、HCM(人事管理システム)、SNS、ジョブボードなど、さまざまなウェブページ上でSMSを作成・送信したり、送受信履歴を確認できる機能を備えるサービス事業者も多い。
SMSは一般的に、メールよりも到達率や開封率、返信率が高いと言われている。また、求職者が経験年数や資格、休日出勤や夜勤などに関する質問に「はい」「いいえ」で簡単に答えることができるため、仕事の合間でも返信しやすい。

チャットボットは、自然言語処理と機械学習を用いた、テキストによる自動対話プログラムである。企業の採用情報ページにポップアップウィンドウを表示し、ページ訪問者がそこに求人や会社に関する問い合わせを入力すると、ボットが自動応答する。ボットが希望の職種や勤務地、経験年数、スキルや資格、就労ビザの有無、入社可能な時期など、企業が事前に設定した質問をする。求職者はテキスト、音声、動画でそれらに回答する。
ボットが回答内容をもとに、求職者をスクリーニングする。次に、面接日時の候補を複数提示する。面接や入社前日に求職者や採用担当者にリマインドを自動送信する。そして、チャットの履歴や求職者のプロフィール情報をATSやCRMに保存する。チャットボットで応答しきれない場合、採用担当者が求職者との対話を引き継ぐことも可能である。
企業の採用情報ページのほか、WhatsAppやFacebook MessengerといったメッセージングアプリやSMS経由の問い合わせや応募にも対応する。店頭に貼ってある求人ポスターに記載されているショートコード宛てに求職者が携帯電話からキーワード(例「Jobs」)をSMSで送信すると、チャットボットが自動応答し、質問や応募の受付を行う「Text-to-Apply」機能を備えるサービス事業者も多い。求職者は、外出先などでいつでも簡単に求人に応募できる。
主要なATS、行動アセスメント、コーディングテスト、ビデオ面接、カレンダーシステムへの接続が可能な事業者もある。

候補者コミュニケーションのサービスを専門とする事業者は、Text-em-all、Grayscale、Herefish by Bullhorn、Sense、Zipwhip、TextUsである。チャットボット専門の事業者は、Paradox、impress.ai、Talkpush、Humanly.io、yellow.aiである。RoboRecruiter、Emissary、XOR、GoHire、Curious Thing、evaは、チャットボットと候補者コミュニケ―ションの両方の機能を備える。その他、主要なCRMやCTI(電話とコンピュータの統合システム)上で電話の発着信やSMSの送受信を行うクラウド型電話システムのCloudCall、メール管理システムのMixmaxもある。

人事との関連性

候補者コミュニケーションを利用することで、採用担当者は管理画面で複数の求職者とのやり取りを同時進行したり、進捗をチームメンバーと共有できるため、業務効率がアップする。求職者からの問い合わせへの応答、スクリーニング、面接日時の調整といった業務をAIチャットボットの導入により自動化することで、採用担当者の業務負担を減らし、応募の受付にかかる日数を短縮できる。チャットボットは求職者の質問に即回答し、応募手続きを進めることができるため、求職者の満足度がアップし、離脱を防ぐことができる。採用にかかる日数を短縮し、また、面接前日のリマインドを自動送信することで、当日のキャンセルや、求職者が何の連絡もなく面接に来ないといったドタキャンも防止できる。チャットボットは、新卒者の採用など、大量の採用に活用されるケースが多い。

サービス例

1.Paradox

採用に特化した大手チャットボット。求職者が企業の採用情報ページやWhatsApp、Facebook Messenger、WeChatといったメッセージングアプリ、SMS経由で、希望の職種や勤務地を入力すると、ボットが条件に合う求人情報を送信する。社風や給与、福利厚生など、求職者からのさまざまな問い合わせに自動応答し、求職者が入力したキーワードをもとに、会社のミッションや従業員が働く様子を表す動画も送信する。次に、質問への回答をもとにスクリーニングする。求職者は質問にテキストだけでなく、音声や動画で答えたり、自己PR動画を提出できる。
Google CalendarやMicrosoft Outlookなどのカレンダーシステムに入力されている面接担当者の予定をもとに空き時間を把握し、面接日時を自動で調整する。面接前日のリマインドを自動送信する。Microsoft TeamsやZoomといったビデオ会議システムと接続が可能である。
オンライン採用イベントの作成および参加受付機能もある。求職者がチャットやメッセージングアプリ経由でイベントへの参加を申し込むと、ボットが受付を完了し、イベント前日のリマインドを自動送信する。イベント当日には、採用担当者が求職者とチャットで、志望動機などについて質問する。
100カ国語に対応し、Unilever、McDonald's、CVS Health、PepsiCo、Lowe's、General Motors、Delta Air Lines、Thomson Reuters、Nestléなど、60カ国で多数の有名企業に利用されている。

2.Emissary

企業や人材派遣会社向けの候補者コミュニケーションおよびチャットボットシステム。採用担当者は、SmartRecruiters、Greenhouse、Visibility Software、JobScoreといったATSやHCMから求職者のデータをインポートし、SMSを送信する。Google Chromeの拡張機能により、LinkedInやIndeedなどのSNSやジョブボードと接続し、これらのウェブページに掲載されている求職者の電話番号をクリックするだけで、SMSを簡単に作成、送信できる。送受信履歴はATSやCRMに保存される。「Text-to-Apply」機能では、チャットボットがSMS経由での応募を受け付け、採用担当者につなぐ。企業の採用情報ページやFacebook Messenger経由の問い合わせにチャットボットが自動応答し、質問による事前スクリーニングや面接日時の調整を行う機能も備える。採用担当者向けのiPhoneアプリもある。
料金体系はサブスクリプション型。ユーザー数、利用量、利用する機能の数などによって異なるが、一人あたりおよび50~100ドルである(2018年時点)。

ビジネスモデル(課金形態)

企業がサービス事業者に、チャットボットやSMSの送受信を管理するシステムの利用料を支払う。ユーザー数や使える機能の種類などによって料金が異なるサブスクリプション型の料金プランを提供するサービス事業者が多い。
候補者コミュニケーション&ボットのビジネスモデル図

今後の展望

複数のコミュニケーションチャネルを組み合わせて消費者と接点を持つ「オムニチャネル」戦略は、小売業だけでなく、リクルーティングでも活用が広がっている。
候補者体験に関する調査・コンサルティング会社のTalent Boardが2021年に行った調査によると、同年に求人情報の一斉配信にSMSを活用した企業は、24%と前年から10%増加した。また、自社の採用情報ページにチャットボットを導入していると答えた企業の割合は42%と、前年から3ポイント増加した。さらに58%が2022年に利用を検討していると答えた。
候補者コミュニケーションのサービス事業者は年々増えており、Shortlisterには、テキストリクルーティングプラットフォームとして約70社がリストアップされている。最近では、StepStone、PandoLogic、Phenom、HireVueといったジョブボード、プログラマティック求人広告、ビデオ面接システムがチャットボット事業者を買収し、自社の機能やサービスに同機能を導入するケースも見られる。
求職者が求める情報を最適なタイミングで届けることができる候補者コミュニケーションやチャットボットの活用により、企業は応募途中での離脱を防ぎ、人材を確保できる。人材獲得競争が激化するなかで、その活用は今後さらに進むだろう。

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