HR Tech Roundup  海外のHRテクノロジー最新ニュース米Indeedは7月以降の求人情報に給与レンジを表示、一時解雇のリスクが最も高い職種はリクルーター、ほか

海外HR Techニュースリリースまとめ(2022年9月)

LinkedInが、女性の採用を促進する「Diversity Nudges(多様性ナッジ)」機能をLinkedIn Recruiterに追加した。またIndeedは、米国での求人掲載時に給与レンジの記載を必須とした。企業側で給与レンジを入力しない場合は、独自のアルゴリズムで推定した給与レンジを表示する。米国では、給与情報の開示を法制化する動きがある。
Glassdoorの調査によると、Z世代からの評価が高い企業上位3社は、Microsoft、Google、Morgan Stanleyだった。
そのほか、米国政府は、教員不足の解消に官民で取り組むために、ZipRecruiter、Handshake、Indeedと連携することを発表した。

  • 【注目トピック】

    「HR Technology Conference & Expo 2022」のピッチコンテスト、従業員のウェルビーイング向上プラットフォームのSPOTLYFEが優勝

    9月13~16日に「HR Technology Conference & Expo 2022」がラスベガスで開催された。スタートアップ企業を対象としたコンテスト「Pitchfest」は、約100社の応募から、ソリューションの革新性、大手企業の人事課題の解決、事業計画といった審査基準をもとに33社に絞られ、さらに最終選考に残った6社(Illoominus、ModernLoop、SPOTLYFE、Translator、 JobSync、Praisidio)のなかから、SPOTLYFEが優勝、Translatorが準優勝した。
    優勝したSPOTLYFEは、1週間単位で人生設計を行い、意図のとおりに実行できたかどうか、振り返りを行うプラットフォームである。日々の行動や気持ちの変化、人との関わり、経験などを観察できる。従業員のウェルビーイングを高めることが、会社の持続的成長につながるという。
    準優勝のTranslatorは、DEI(多様性・公平性・包括性)の研修とデータアナリティクスプラットフォームである。従業員は、演習、質問、職場環境のアンケート、DEIの専門家のグループディスカッションなどに匿名で参加できる。人事は、これらの結果をもとにDEI向上に取り組む。
    Pitchfestで選考に残った33社の傾向をみると、採用テクノロジーが全体の約3分の1を占めた。そのほか、従業員のウェルビーイング向上や、DEI促進、テレワークマネジメント、社内のコミュニケーション活性化を目的としたツールなどがあった。

  • 【新機能・新サービス】

    Indeed、すべての求人に給与レンジを表示

    Indeedは、米国のすべての求人情報に給与レンジを表示することとした。企業の採用担当者が給与を入力しない場合は、Indeedのアルゴリズムが職種、必要な経験年数や学位、勤務地などをもとに推定した給与レンジを表示する。
    コロラド州やニューヨーク市は、求人広告に給与レンジを記載することを企業に義務付けているが、表記を拒む企業もある。2021年にコロラド州で「Equal Pay for Equal Work Act(同一労働同一賃金法)」が施行されたとき、Nikeを含む一部の企業が、コロラド州に住む求職者を採用対象から除外した。Nikeはその後、リモートワークの求人に給与を記載したが、依然として反対の姿勢を示す企業もある。
    カリフォルニア州では、従業員数250人以上の企業に対して、従業員の給与をオンラインで公開することを義務付ける法案が議会に提出されたが、企業からの反対を受け、先日その条項が削除された。カリフォルニア商工会議所などが、「給与データの開示は訴訟につながる」と主張したためである。(8月23日 ERE.net)
    https://www.ere.net/indeed-will-no-longer-exempt-large-employers-from-salary-transparency-policy/


    LinkedIn、女性の採用を促進する「Diversity Nudges」機能を追加

    LinkedInは、採用管理機能のLinkedIn Recruiterに、採用での男女比の偏りを改善するナッジ機能「Diversity Nudges」を追加した。リクルーターが候補者を検索した際に、人材プールにおける性別の割合が偏っていた場合、男性と女性の比率をポップアップ表示する。そして、スキル、居住地、会社名など、女性の比率アップにつながる具体的な検索条件をレコメンドする。また、企業が、DEI、環境サステナビリティ、社会的インパクト、キャリアアップと学習、ワーク・ライフ・バランスにおけるコミットメントを強調できる専用セクションを追加した。求職者は、自分の価値観と合う文化を持つ企業で働くことをより重視している。
    LinkedInのデータによると、世界全体の女性管理職比率はマネジャーでは35%、経営幹部ではわずか25%である。教育やウェルネスなど、女性が労働力の半分以上を占める業界においても、指導的立場に就く女性の数は依然不足している。(8月10日 LinkedIn)
    https://www.linkedin.com/pulse/improve-gender-representation-your-candidate-/

  • 【官民連携】

    バイデン政権、教員不足の解消に向けて求人求職サイト3社と連携

    米国政府は、教員不足の解消に官民で取り組むため、ZipRecruiter、Handshake、Indeedとの連携を発表した。
    ZipRecruiterは、K-12(幼稚園~高校)の求人に特化した求人サイト「SchoolJobsNearMe.org」を開設した。学校は、教員や看護師、ソーシャルワーカー、メンタルヘルスカウンセラーなどの求人情報を無料で掲載できる。
    新卒者向けコミュニティサイトのHandshakeは2022年10月、大学生が教育分野の職業について学ぶ無料のバーチャルイベントを全米で開催する。また、自社サイトに教育関連の求人を紹介する特別コーナーを設ける。
    Indeedは、教育関係者を対象としたバーチャル採用説明会を開催する。参加企業は、求人広告の掲載から面接までの採用プロセスを一括管理するIndeedの採用ツールを、無料で利用できる。(8月31日 The White House)
    https://www.whitehouse.gov/briefing-room/statements-releases/2022/08/31/fact-sheet-biden-harris-administration-announces-public-and-private-sector-actions-to-strengthen-teaching-profession-and-help-schools-fill-vacancies/


    ニューヨーク州労働省、Eightfold AIと提携、バーチャルキャリアセンターを正式公開

    ニューヨーク州労働省は、Eightfold AIと提携し開設した、求人求職サイト「バーチャルキャリアセンター」を公開した。AI技術を活用し、25万件以上の求人のなかから履歴書をもとに、求職者のスキルや経験に合った求人情報や職業訓練を提示する。オンラインワークショップおよびキャリアフェアの検索、録画した面接の視聴やキャリアセンターのアドバイザーからフィードバックを受けられる模擬面接「InterviewStream」の機能も備える。失業保険の新規登録者は、自動的にバーチャルキャリアセンターの利用登録に招待される。(9月13日 New York State Office of the Governor)
    https://www.governor.ny.gov/news/governor-hochul-announces-expansion-virtual-career-center-connect-more-new-yorkers-careers
    https://dol.ny.gov/virtual-career-center

  • 【調査】

    Glassdoor調査、Z世代からの評価が最も高い企業はMicrosoft

    企業口コミサイトのGlassdoorは、2020年4月1日から2022年7月15日までに18歳以上の米国人正社員が投稿したレビューをもとに、Z世代と非Z世代の従業員がどのような企業や職種を高く評価しているかを分析した。Z世代からの評価が高い企業上位3社はMicrosoft、Google、Morgan Stanleyであった。
    Glassdoorがパンデミック以前に実施した調査では、Z世代はほかのどの年齢層よりも、企業が社会問題について発言することをより強く期待していた。しかし現在は、社会貢献度だけでなく、会社の安定性や安全性も求めている。
    職場での人種的平等から環境の持続可能性まで、さまざまな問題に対して自社の立場を公的に表明する企業を高く評価するという点は、すべての世代に共通している。
    Z世代からの評価が高い企業は、下記のとおりである。

    Z世代による評価が高い企業

    順位 企業名
    1位  Microsoft
    2位  Google
    3位  Morgan Stanley
    4位  Trader Joe’s
    5位  Total Quality Logistics
    6位  General Motors (GM)
    7位  Fidelity Investments
    8位  Bank of America
    9位  IBM
    10位  Northrop Grumman

    Z世代からの評価が高い職種は、企業内リクルーター、マーケティングマネジャー、ソーシャルメディアマネジャーであった。Z世代は、主にクリエイティブかつ非技術系の職種への満足度が高い。Z世代からの評価が最も高い職種は、下記のとおりである。

    Z世代による評価が最も高い職種

    順位 企業名
    1位  企業内リクルーター
    2位  マーケティングマネジャー
    3位  ソーシャルメディアマネジャー
    4位  データサイエンティスト
    5位  プロダクトマネージャー
    6位  ITスペシャリスト
    7位  アカウントコーディネーター
    8位  クレジットアナリスト
    9位  プロジェクトエンジニア
    10位  事業開発アソシエイト

    (8月16日 Glassdoor)

    https://www.glassdoor.com/research/gen-z-employees-entering-the-workforce/

    Revelio Labs調査、一時解雇のリスクが最も高い職種はリクルーター

    米国では昨年夏以降、毎月約400万人もの従業員が自主退職している。自主退職者数は高止まりしている一方で、企業による採用凍結やレイオフ(一時解雇)が相次いでいる。Layoffs.fyiによると、2022年にテック系のスタートアップから一時解雇された人数は約8万人に達する。
    労働力データプロバイダーのRevelio Labsは、3月以降に一時解雇された1万7000人のLinkedInプロフィールをもとに、一時解雇された従業員と、解雇を免れた同じ会社の従業員の勤続年数や収入、業務内容を比較し、どのような人材が一時解雇されているのか分析した。
    職種別では、一時解雇のリスクが最も高いのはリクルーターである。次いで、カスタマーサクセススペシャリスト、ソフトウェアエンジニア、データサイエンティスト、UXデザイナーであった。一方、リスクが最も低いのは、プロジェクトマネジャーで、次いでテクノロジーアナリスト、監査役、企業内トレーナー、テクノロジーリードであった。
    世代別では、一時解雇の影響を最も大きく受けている世代はミレニアル世代で、一時解雇された従業員全体の94%を占めている。
    また、勤続年数別では、コロナ禍に中途入社した従業員が多く一時解雇されており、平均勤続年数は1.2年だった。コロナ禍以前に入社した人は、一時解雇される確率が低いことがわかった。(9月7日 Unleash)
    https://www.unleash.ai/economy/recruiters-at-highest-risk-of-layoffs/

  • 【資金調達】

    Incredible Healthが、Base10 Partners、NBAプレイヤーのAndre Iguodala氏、TikTokのフォロワー数が1億5000万人を超えるCharli D'Amelio氏などから8000万ドルを資金調達。企業評価額は16億5000万ドルに達した。資金は、スクリーニングやマッチングの自動化機能の強化などに充てる。また、スキルアップ、移転サポート、奨学金など、キャリア全般にわたる支援を提供する。さらに、人材が不足するそのほかの医療系職種にも対象を拡大する。スカウト型の看護師向けキャリアマーケットプレイスのIncredible Healthは、病院と看護師をマッチングし、採用にかかる平均日数を業界標準の82日から14日に短縮している。Stanford Health CareやCedars-Sinai Medical Centerなど全米トップの病院の6割とその他600以上の医療機関が利用している。Incredible Health は、2021年の売上高が前年比500%増加し、毎週1万人以上の看護師が新規登録している。

    https://www.prnewswire.com/news-releases/incredible-health-raises-80m-series-b-reaching-1-65-billion-unicorn-status-as-the-leader-in-healthcare-hiring-301607302.html

    Glintsが、DCM Venturesやパーソルホールディングスなどから5000万ドルを資金調達。資金は、フィリピンなどにおける人材供給基盤の拡大や、プロダクトおよび技術チームの人員増強に充てる。シンガポールのキャリア開発プラットフォームのGlintsは、インドネシア、ベトナム、シンガポール、マレーシア、台湾で事業展開し、300万人の求職者と、AIA、IKEA、GetGo、Gameloftなどの企業が登録している。同社の年間売上高と粗利益は、前年比で2.5倍に増加している。成長の要因には、リモートワーカーに対する需要の高まりがある。国境を越えたリモートワークの求人掲載数は、前年比で3倍以上に増加している。

    https://asiatechjournal.com/funding-alert-singapore-based-career-development-platform-glints-raises-50-mn-in-funding/ 

TEXT=杉田真樹