ピープル・アナリティクスの歴史を振り返る(2)ピープル・アナリティクス1.0:成果主義に最適化された人事データの分析・活用

時代背景:成熟したマーケットでスピーディな意思決定が要求される社会

1990年代初頭のバブル崩壊後、市場は成熟化し、戦後以来の右肩上がりの成長を前提としたビジネスシステムが通用しなくなり、多くの日本企業が厳しい環境に置かれました。日本企業ではコンセンサス重視であったがために、環境変化に伴ってビジネス戦略を大幅に変更するというような選択は行えず、それまでのビジネスモデルを維持した高効率・低収益の負のスパイラルにはまっていきました。マーケットのパイが限定される中で、勝ち残りを賭けた熾烈な競争が生じ、市場のナンバーワンとなるために事業のリストラや企業同士の合従連衡が繰り返されていきました。

そのようなビジネスの変化に応じて、遂行すべき戦略をよりスピーディに的確に実行できるか否かで勝負が決まるため、スピーディな意思決定を可能にする組織、変化への柔軟な対応力を持つ組織が求められるようになりました。スピードを軸にした対応力を発揮できる小さな組織を志向するようになり、カンパニー制、ビジネスユニット制が広がっていきました。こういった組織の変化に基づき、組織の課題遂行をスピーディに実現できる専門性を有した人材がコア人材として必要とされるようになりました。

パフォーマンス管理:各国内でデジタルデータを活用した評価・人材管理の時代

年功主義から成果主義へのパラダイムシフトの結果、「情意・能力」より一定期間の「成果」に着目し、定量化する目標管理制度が導入されて、人事部にて全データが収集されるようになりました。しかしながら、データを分析・活用し、アサインメントに活かすことまでは行われませんでした。

ハイパフォーマーの行動特性に基づくコンピテンシーによる数値化が行われるようになりました。昇格審査においても、スキルアセスメント、コンピテンシーによる定量的な測定に基づく選抜が厳格に行われるようになりました。

2000年頃から社員の意識をデータ化しようとES調査が本格的に浸透していきましたが、モラールサーベイの色合いが強く、各国ごとに独自の調査設計がされていました。

キャリア管理:人材を選抜し、成果を数値化して管理するキャリアマネジメント。管理主体は企業から個人に徐々にシフト

従業員数が一定数を超え、ビジネスサイクルのスピードが上がった結果、全社員の全情報をアナログに収集し、昇進・昇格を管理することが困難になっていきました。そのため、次世代経営人材を早期に選抜育成する仕組みを導入するタレントマネジメントの考え方が普及し、各社で次世代リーダー育成プログラムが導入されました。

バブルが崩壊すると企業でのリストラ、経営破たんなど、終身雇用の常識が崩れ始めた結果、個人が自らキャリアを考える時代に変化しました。その結果、1990年代から企業側が個人のキャリアをサポートする仕組みとして社内公募制度を導入する企業が増加し、社内FA制度を導入する企業も出てくるようになりました。