宿泊業の「働き方改革」10のキーワードKeyword3 安定稼働

人材を最大限活用し、業務稼働を安定化する仕組み・体制の導入

これまで宿泊業の多くは、1 年365日営業し続け、その中で客室稼働率を高めることを目指してきた。そのため、集客が難しい時季は、単価を下げて客室稼働率を高めるといった施策が行われがちだった。

しかし、顧客接点から価値を生み出す人材の確保が難しくなってきている現在、その考え方を転換しなければならない。これからの宿泊業に求められる観点は、限られた人材を最大限活用できるように、安定稼働を実現することである。1 年間の客室稼働率を上げるという発想ではなく、人材の稼働率を高めるという発想に切り替え、労働時間における稼働状況を高い水準で安定させることを目指すべきである。

例えば、定休日を設定して営業時間を圧縮する、付加価値の低い業務を廃止する、もしくは、料理を提供せずに「素泊まり」の宿泊のみを受け付けて、一部のスタッフが休める日を設定するなどの施策が安定稼働につながる。限定された営業時間に安定的に高い業務稼働率を実現し、限られた人材だからこそ、高い付加価値を提供でき、生産性を高めていくという発想が求められる。

Case Study2
鶴巻温泉 元湯 陣屋(神奈川県)

元湯 陣屋は現在、週3日の休館日を設定している。それに伴い、正社員20 人、パート・アルバイト100 人といった体制から、正社員25 人、パート・アルバイト15 人にまで減少し、週4 日の営業日に対応できている。休館日を設定することで、安定稼働が可能になり、常に質の高いサービスを提供できる従業員が対応できるようになった。

総額人件費が下がったため、残った従業員の給与を大きく引き上げ、彼らの休みを増やすことができた。休館日を設定することで従業員の質が高まり、サービス品質を上げ、客単価を引き上げ、売上・利益を大幅に向上させるという好循環を実現している。