【分析編】再就職後の女性のキャリア 周囲のサポートとキャリアの探索が重要だ

働き続けるだけでは、仕事満足は高まらない

前回は、離職期間中の学び、再就職時の仕事と家庭の両立負担に着目して、再就職後の仕事満足との関わりをみた。これらの要因は、一部を除けば、再就職後の仕事満足と関わりを持っていなかった。それでは、再就職後、どんな形で働けば、再就職した女性が仕事満足を持ちやすくなるのだろうか。

再就職後すぐには満足感の高い仕事に就きにくくても、長く働いていけば、仕事満足を感じる仕事に就く確率が高まるかもしれない。そこで前回と同じ4つの仕事満足(「やりがい実感」「大切な仕事」「持ち味活用」「自分なりの働く見通し」)に関わる分析から、再就職後の年数についての結果を取り出したものが図表1だ。これによると、再就職後の年数は、「やりがい実感」「大切な仕事」「持ち味活用」と有意な関わりを持たず、「自分なりの働く見通し」に関しては、係数が小さいものの、有意にマイナスであった。長く働き続けるだけで、仕事満足を得やすくなるとは限らないようだ。

図表1 仕事満足の分析結果(再就職後の年数)

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注:リクルートワークス研究所「ブランクのある女性のキャリア3千人調査」のデータをもとに分析。
***は1%、**は5%、*は10%で有意に相関のあることを示している。

周囲のサポートが仕事満足を高める

次に、同じ分析より、再就職の時点での夫の家事・育児への協力や、再就職後の仕事やキャリアについての相談状況についての結果を図表2に示した。まず、再就職の時点で夫が家事・育児に協力的であったことは、「大切な仕事」「持ち味活用」「自分なりの働く見通し」の3つの仕事満足を持つ確率を高めていた。連載の第4回でみたように、再就職時の夫の家事・育児への協力は、妻がより負荷の高い働き方で再就職し、働き続ける確率を高めている。今回の分析の結果も併せて考察すると、夫の協力は、女性が自分の希望に合った仕事をより選びやすくし、その結果として、現在の仕事への満足感や今後の見通しの持ちやすさが高まっていると考えられる。一方、再就職後の仕事やキャリアの相談において、「家族・親族のみに相談あり」に対して、「相談なし」であることは「自分なりの働く見通し」を持ちにくくしていた。再就職した女性が仕事満足を得ながら働くためには、周囲のサポートがあることが大切である。

図表2 仕事満足の分析結果(再就職時の夫の協力、再就職後の仕事やキャリアの相談)

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注:リクルートワークス研究所「ブランクのある女性のキャリア3千人調査」のデータをもとに分析。
***は1%、**は5%、*は10%で有意に相関のあることを示している。

再職後のキャリアの探索行動が仕事満足を高める

再就職後、働く時間を増やしたり、未経験の仕事にチャレンジしたり、新たな知識やスキルを得たり、今後の生き方・働き方を考えたりと、キャリアの探索を行う人がいる。そこでこれまでの同じ分析から、再就職後の4つの行動(「働く時間の拡大」「未経験の仕事挑戦」「新たな知識・スキルの習得」「今後の生き方・働き方の内省」)に関わる結果を図表3に示した。

図表3 仕事満足の分析結果(再就職後の年数・行動)
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注:リクルートワークス研究所「ブランクのある女性のキャリア3千人調査」のデータをもとに分析。
***は1%、**は5%、*は10%で有意に相関のあることを示している。

これによれば、再就職後のキャリアの探索に関わる行動は、仕事満足と関わりを持っていた。たとえば「働く時間の拡大」は、「やりがい実感」「持ち味活用」「自分なりの働く見通し」を持つ確率を高めていた。また、「未経験の仕事挑戦」は「今後の生き方・働き方の内省」に対してプラスであった。「新たな知識・スキルの習得」は「やりがい実感」「大切な仕事」「自分なりの働く見通し」に対してプラスであったのに対し、「今後の生き方・働き方の内省」は4つの変数すべてについて有意にプラスであった。

分析からみえてきたのは、再就職後、働く年数を重ねるだけでは、再就職後に女性が仕事満足を得て働くことにつながりにくいということだ。夫をはじめ、再就職した女性のキャリアをサポートする人がいること、子どもの成長や自分の希望に応じて働く時間を増やしたり、新たな仕事に挑戦したり、新たな知識・スキルを習得できる学びを行ったり、この先の自分の人生や仕事について深く考えるなど、自分のキャリアについて探索できることが、再就職後の女性の仕事満足を高めていた。

膨大な数の離職期間のある就業者を活かせる社会を

この連載では、3年以上の離職期間がある女性のデータを分析した結果に基づいて、再就職後の就業継続や仕事満足が、1.離職期間中、2.再就職の時点、3.再就職後の状況や行動とがどのように関わるのかをみてきた。そこでみえてきたのは、離職期間のある女性が安心して働き続け、自分らしいキャリアをつくっていくうえでは、3つの時点それぞれの行動や状況が重要ということだ。つまり、離職期間のある女性の支援は、再就職前や再就職の時点だけでなく、再就職後に女性が孤立せず、キャリアの探索を続けていけるような継続的なものであるべきだ。
 
日本の就業者を広く見渡せば、仕事に就いていなかった期間がある人はかなり多い。リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査」によれば、2018年12月時点で企業に雇われて働いていた人のうち、43%が社会人になってから現在までに「1年以上仕事に就いていなかった期間があった」と回答している(この仕事に就いていなかった期間は、育児・介護などで元の職場に戻ることを前提とした休職を除いている)。性別にみると、仕事に就いていなかった期間がある就業者は、男性で27%、女性で58%を占める。仕事に就いていなかった期間を経て、新たなキャリアに踏み出した人を支える仕組みがより強固に整備されることは、日本の働き方をより良いものとしていくうえでも重要であろう。

(※1)4つの仕事満足(「やりがい実感」「大切な仕事」「持ち味活用」「自分なりの働く見通し」)について、「当てはまる」(設問は「当てはまる」「どちらかと言うと当てはまる」「どちらかと言うと当てはまらない」「当てはまらない」の4件法)と回答した場合を1、それ以外の場合を0とする2値変数を目的変数とし、結婚・出産等で離職した仕事、居住地、教育歴、現在年齢、再就職時の仕事をコントロールしたうえで、離職期間中の学び、再就職時点の両立負担に関わる変数、再就職時点の夫の家事・育児への協力、再就職から現在までの仕事やキャリアについての相談状況、再就職後の4つの行動(「働く時間の拡大」「未経験の仕事挑戦」「新たな知識・スキルの習得」「今後の生き方・働き方の内省」)を考慮した2項ロジット分析を行った。