マルチサイクル・デザインの時代 ~100年ライフのキャリアを考える~分析1 キャリア曲線を5つに分類してみた(2)

分析①-2

タイプⅠは「広げて広げて」。
穏やかな変化を過ごしてきた5.9%の少数派。

タイプⅠは「広げて広げて」。働き始めてから現在に至るまで、キャリアのすべてを広げるゾーンで過ごしてきたタイプです。といっても、ずっとなだらかな状態にあるわけではありません。波形はそれなりに起伏に富んでいます。「広げる変曲点」の平均値は2.6ですので、2~3回の波が起きていることになります。ですが、ステージ数は少なめ。転機経験も同様に少なくなっています。「深める変曲点」は、深めるゾーンに行ったことがない人たちですので、誰にもありません。この5つのタイプの中では、淡々としたキャリアであるとみることができそうです。存在比率は5.9%と少数派です。

学歴を見ると、短大・専門学校卒の比率がやや多め、女性の比率が高く、非正規雇用者の比率も高くなっています。そうした分布から推測されるとおり、平均年収は、この5つの中では最も低くなっています。

7角形のレーダーチャートを見ると、「キャリア展望」のスコアは平均をやや上回っているのに比べて、「キャリア満足」のスコアがマイナスに大きく振れているという顕著な特徴があります。「キャリア展望」の支えとなる「キャリア満足」が低いのは、根拠なき楽観のようにも感じられます。

原因はどこにあるのか、データを探っていくと、「役割」の変化に、気になる傾向がありました。あまり変化がなかったり、あるステージにおいては何の役割も担っていないと回答する人がいたりしています。こうした「役割」の傾向は、このタイプの転機の少なさとも関連していそうです。「深めるゾーン」に行かないとは、どのようなことか、さらなる探索が必要です。

text:豊田義博
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