HR Technology 2021オンライン採用イベントプラットフォーム

04_map.jpgVirtual Recruitment and Events
代表的なサービス

オンライン採用イベントプラットフォームは、就職フェア、展示会、マーケティングイベント、大学のオープンキャンパス、企業の研修など様々なイベントのウェブページ制作、開催、管理を行うプラットフォームである。「採用ブランディング」のカテゴリーに分類される。
ほぼすべてのプラットフォームが、講演や展示の会場、参加者同士が交流するネットワーキングラウンジの機能を備える。インフォメーションセンターの機能を追加できる製品もある。投票、クイズ、アンケート、ホワイトボードといったオプション機能もある。また、登録者数、参加者数、講演の視聴者数や視聴時間、ブースの訪問者数、動画の再生回数、資料のダウンロード数、プライベートチャットの回数、アイテムの注文数といったイベントの効果測定機能を備える。ゲーミフィケーションの機能を追加できるプラットフォームもある。
オンラインイベントの配信方法は、ライブ配信、セミライブ配信(講演は録画、Q&Aはライブ)、録画配信、オンデマンド配信、ハイブリッド配信の5種類がある。
具体的には下記のサービスがある。

  • キャリアフェア、カンファレンス、展示会、ワークショップなどをオンライン開催できるクラウド型オンラインイベントプラットフォーム(Hopin)。
  • 3D画像と動画を組み合わせたクラウド型のオンラインイベントプラットフォーム。ライブ配信と動画配信に対応する。待機室、展示会場、講堂、分科会場、ネットワーキングラウンジ、教室、インフォメーションセンターなど様々なスペースを追加できる。採用イベント、カスタマー向けマーケティングイベント、社員研修への利用を想定している(vFairs、6Connex)。

  • クラウド型のオンライン採用イベントプラットフォーム。企業、大学、軍関連組織、地域の労働力開発委員会が利用している。求職者が、出展ブースに表示されている会社のロゴをクリックすると、会社概要、動画、求人情報などのページに移動する。リクルーターとチャットでの交流や、履歴書の提出ができる。企業が求職者を招待し、テキストチャットやビデオ通話でのライブ面接を行う機能もある。管理画面では、求職者の履歴書や連絡先だけでなく、求人情報の閲覧件数、履歴書提出件数、会社のウェブサイトの閲覧回数、ブース訪問者数などを確認することができる(Premier Virtual)。
  • 企業の採用情報サイト経由で求職者と企業をつなぐ、クラウド型のオンラインディスカッションプラットフォーム。企業は自社のサイトに求職者と従業員によるライブチャットイベント、チャットボットなどの機能を追加できる(PathMotion)。

  • 企業、大学、協会、労働力開発機関向けのクラウド型オンラインイベントプラットフォーム。採用イベント、動画面接、ウェビナー、ネットワーキングイベントなどを開催する。企業は、求職者とテキストによるチャットや、ビデオまたは音声通話で交流することができる(Brazen)。

  • バーチャルイベントで学生や卒業生を、企業や大学院とつなぐ、オンライン採用プラットフォーム。キャリアフェアや大学や大学院主催フェアをイベント名や主催者名で検索できる(CareerEco)。

  • プログラマーやグラフィックデザイナーが社内にいなくても、ドラッグ&ドロップのエディター機能で、没入感の高いeラーニング用のシナリオやコンテンツを制作できるプラットフォーム。PC、スマートフォン、VR/ARにも対応する。企業は、多数あるテンプレートの中から、部屋のレイアウト、室内に設置する家具、アバターの髪型や服装などを選ぶ。アバターの台詞は68カ国語に対応する。在宅介護の研修などに利用されている(LearnBrite)。

人事との関連性

採用イベントをオンライン化することによって、企業は、様々なスキルやバックグラウンドをもつ世界中の求職者にリーチを拡大できる。また、参加登録時に履歴書の提出を求めることによって、多数の参加者を事前にスクリーニングし、採用スピードを上げることができる。
スペースが限られているリアルなイベントと比べて、より多くの求職者と、ビデオや音声通話、テキストチャットで双方向のコミュニケーションを図ることができ、自社の採用情報や企業理念、バリューなどを伝えることができる。

サービス例

1.Hopin

ttl2021_04-1.jpg出所:https://hopin.com/ 

英国のオンラインイベントプラットフォーム。ユーザー数は8カ月で5000人から350万人に急増した。プラットフォームを利用する企業や機関の数も1800 から5万に増加した(2020年11月時点)。日本語を含む9カ国語に対応する。

Hopinは、ライブイベントと、リアルイベントにオンライン要素を加えたハイブリッドイベントの2種類に対応する。ハイブリッドイベントは、リアルな会場で実施している基調講演を、オンライン参加者向けにライブで配信したり、オフラインとオンラインの参加者同士が交流することができる。

企業は管理画面で、イベントのページ作成や運営を行う。イベント名と日時を設定し、追加したいスペース(レセプション、ステージ、セッション、ネットワーキング、エキスポ)と、イベントの種類(公開、非公開、プライベート)を選択する。参加者が同じ時間帯に複数行われているセッションを自由に出入りできる「オープンイベント」と、決められた時間に1つのセッションのみ配信される「スケジュールイベント」の2種類から形式を選択できる。

「レセプション」は、ロビーの役割をする。企業は、歓迎メッセージやイベントの概要、スポンサー企業のロゴ、スケジュール、講演者リストなど、ウェブページに表示するコンテンツを自由にカスタマイズできる。「ステージ」は、基調講演、パネルディスカッション、座談会などに利用できる。同時に5人のスピーカーが登壇し、10万人の参加者が視聴できる。「セッション」(ブレイクアウトルーム)は、製品デモ、ラウンドテーブル、ワークショップ、ハッカソンなどに利用する。企業は、誰でも参加・発言できるオープンセッション、招待されたスピーカーのみが登壇する招待制セッション、モデレーターが発言権を持つスピーカーを選ぶ、モデレーター付きセッションの3種類から形式を選択する。同時に20人のスピーカーが登壇し、3000人の参加者が視聴できる。「ネットワーキング」は、参加者同士の自動マッチング機能があり、ランダムにマッチングされた他の参加者とチャットで交流ができる。「エキスポ」は、ブース出展企業が各社のページ上に録画やライブ映像、ウェブサイトのリンクなどを表示できる。参加者は、ブース担当者にチャットで質問できる。

料金プランは、「スターター」「グロース」「ビジネス」「エンタープライズ」の4種類があり、スターターとグロースの月間利用料金はそれぞれ99ドル、799ドルとなっている。Hopinの顧客は、Slack、Adobe、Unilever、Dell、TechCrunch、カリフォルニア大学ロサンゼルス校、野生生物保護協会、国連、北大西洋条約機構(NATO)など多数。

2.vFairs

ttl2021_04-2.jpg出所:https://www.vfairs.com/ 

採用イベント、モーターショー、フードショー、住宅フェア、大学のオープンキャンパスやアルムナイ向けネットワーキングなどのイベントを開催できるオンラインイベントプラットフォーム。オンラインイベントとハイブリッドイベントに対応している。カナダ発祥の企業。

企業は、ロビー、講演会場、展示会場、ネットワーキングラウンジ、インフォメーションセンターなどから、設置するスペースを選択する。ロビーのデザインは20種類以上と豊富である。講演の配信方法は、Zoomを使ったライブ配信、セミライブ配信、オンデマンド配信の3種類がある。講演に使用する動画は、スピーカーが自ら専用ページに登録するため、主催者は管理の手間を省ける。

「展示会場」では、出展企業が自社のページを簡単に制作できる。8種類あるブースのテンプレートの中から、レイアウトやブース内のアバターの人数など、好みのデザインを選び、ロゴ、企業概要、画像や動画、パンフレットなどの資料、求人情報なども簡単に追加し、ページに表示できる。ブースの訪問者がブースの担当者とテキストやビデオでグループおよびプライベートチャットする機能もある。出展企業の製品やサービスを検索し、購入することも可能である。

企業はターゲットとする参加者層に合わせて、ロビーや展示会場に表示するアバターの服装、性別、年齢層、人種を選択する。その他、基調講演への参加やブースの担当者とチャットなど、特定の行動をした参加者にポイントを与え、すべての参加者が自分の順位をリアルタイムに確認できるゲーミフィケーションの機能を追加することで、参加者のエンゲージメントを高めることが可能である。

ビジネスモデル(課金形態)

企業が、サービス事業者にオンラインイベントの運営を行うクラウド型システムの利用料を支払う。
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今後の展望

調査会社のGrand View Researchが2020年7月に発表したレポートによると、オンラインイベントの世界市場規模は2019年時点で約779億ドルであった。2027年には4044億ドルの見込みである。
オンラインイベントは、参加者との距離感を縮めたり、興味を喚起するため、リアルとバーチャルを融合させたXR技術の活用も増えている。日本国内でも多くの大手企業が、参加者が3Dアバターでイベントに参加できるプラットフォームや最新VR技術を活用したオンラインエキスポプラットフォームなどを開発し、オンラインイベント業界に参入している。大規模な企業説明会に利用する日本企業も見られる。
パンデミック収束後も、オンライン採用イベントプラットフォームの利用はさらに広がると見込まれる。

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