HR Technology 2019【Tech Stack Interview】HRテクノロジーアドバイザリー会社 Y氏(創設者・主任アナリスト)

2019年のトレンドと評価

HRテクノロジーは、過渡期を迎えています。AIが登場した時、企業の人事は驚き、興奮状態に近い感覚を持っていましたが、その後理解を深め、現在はいかに自社にAIを取り入れて使いこなすか試行錯誤を続けるという局面に移りました。ベンチャーキャピタルから出資を得るチャットボットのプロバイダーも増えています。

私はさまざまな製品をより深く理解するために、企業やベンダー、業界関係者にリサーチをしています。大手企業から評判が高いのは、Taleo[1]、Workday[2]。最近よく耳にするのは、iCIMS[3]です。iCIMSは、大手企業から小規模企業まで幅広く対応しているのが強みです。ATS(応募者追跡システム)などのテクノロジー・プラットフォームは中小企業を対象にしている製品が少なく、Workable[4]、Greenhouse[5]、 Lever[6]が利用されています。中でも大規模採用には、Greenhouseが強いといわれています。

全般的な評価ではATSCRM(採用候補者管理システム)などの利用者の満足度は、その期待値の高さから、まだ10点満点中6点。ソーシングや採用マーケティングのプロセスにおいて、CRMはコアといえる機能となりました。ソーシングにおけるポイントソリューションといえる専門性を持ったツールで評価が高いのは、HiringSolved[7]です。ソリューション中心ですが、AIやマシンラーニングなどの機能も備えています。また、AIアシスタントのParadox[8]はウェブやモバイル、SNS経由で候補者と会話することができます。AllyO[9]も、とくに候補者とのエンゲージメントやフロントエンドのスクリーニング機能が、大量採用する企業の間で高い評判を得ているようです。他にソーサーに高く評価されているのは、AIマッチングのEntelo[10]やAIのソーシングツール Hiretual[11]です。

エンゲージメント・人材供給パイプラインマネジメント領域では、グローバル人材を獲得できるプラットフォームAvature[12]の人気が高まっています。4~5年の間で、CRMから採用マーケティングやATSへと製品を拡張するなど、非常に積極的な試みをしています。この領域は大手企業向けのATSとの統合や、プライベートエクイティなどから投資を受けている企業も多く、来年の今頃には構図が変わっているように思います。

選考・アセスメント領域では、豪州のVervoe[13]に着目しています。またチャットボットのようなスキルアセスメントで注目しているのは、Facebookと互換性のあるTalkpush[14]。年間100万人以上の候補者とやりとりしています。最近この会社を訪問したのですが、ビジネスとしての魅力を備えた新しい会社という印象でした。CRMとメッセンジャーとチャットボットを使ってつくられた「会話的なプラットフォーム」は、将来、採用のフロントエンドになると思っています。

1社で20種類の採用テクノロジーを活用

大手企業が利用している採用テクノロジーは、アプリ、ポイントソリューション、プラットフォームで、1120くらいだと思います。人材獲得に効果の高いテクノロジー製品は、企業によって異なりますが、導入効果を見ると、例えば、ある航空会社では、アセスメント導入後の最初の90日間で採用を抑制しなければならないほどの変化が生じたといいます。別の会社では、チャットボットの使用を開始して6カ月後には、エンゲージメントに改善が見られました。また、面接のフィードバックや面接ガイドの標準化によって大きな影響があったという会社もあります。「誰にでもぴったりな(服の)サイズなどない」と例えられるようなもので、企業それぞれにテクノロジー製品のフィット感は異なるということです。これだといえる特効薬、万能薬のようなものはありませんが、特定の問題に対して効果を上げる製品はあります。

人材獲得の責任者であるTATalent Acquisition)リーダーは、「空いているポストを埋めることが大切」でレベルの高い人材をできる限り早く見つけることを最優先課題としています。今はスキルの有無に関わらず、人材を獲得すること自体が難しい状況ですので、フルタイムの正社員か、契約社員か、短期派遣かで採用プロセスや担当は分かれていて、そのプロセスも複雑になっています。また、自社で人材を調達するのではなくRPOなどにすべて任せてしまう企業もあります。

過去10年で組織構成も変化

雇用主4,000人を対象とした企業調査では、従業員の約7割が「採用プロセスに何らかの形で関わっている」と回答しています。管理職が面接するので、従業員が関わる比率が高いのですが、その面接は構造的なものではないようです。従業員がどれほどの時間を採用に費やしているかを知ることは重要で、これは効率性や生産性にもつながることです。

人材獲得担当部署の構成は、過去10年間で大きく変化しています。ソーシング、採用ブランディング、TAアナリティクス、TAオペレーションが主要な分野です。専門分化することで、マーケティング専門のチームへと進化させる企業もあります。このように社内に充実した部署を持つ企業と、マーケティングやアナリティクス、ITサポートなど必要な機能を外部のベンダーに委託する企業とに二分されています。そのため、例えば採用マーケティングのベンダーなどは、ほぼオンデマンドでサービスを提供しなければならない状況です。

採用プロセスは今後5年で6割の自動化が進む

採用プロセスについては、今後5年間で60%以上が自動化されていても不思議はありません。現在、既に自動化されているのは、求人広告のディストリビューション(配信)関連です。
雇用主に早く自動化を取り入れたほうがよいと勧めたいのは、スケジュール調整で、特に大手企業にはニーズがあります。採用プロセスのすべての領域で、ある程度は自動化することが可能です。特に大量採用の場合は多くを自動化することができます。しかし、そうでないなら、人が介する必要はなくならないでしょう。高レベルの人材採用であるほど、対面で進めるべき要素が残ると思います。

インタビュアー=ジェリー・クリスピン 翻訳=鴨志田 ひかり TEXT=村田 弘美

[1]Taleo:製品名は「Oracle Taleo Cloud Service」。人材の募集、採用、育成、定着を簡単に行えるOracleのクラウド型人材管理システム。
[2]Workday:人事から採用、タレントマネジメント、ラーニング、労働力管理、給与計算管理、報酬管理までを網羅し、人材、労働力、コストを一目で把握できる統合型HCMクラウドシステムのプロバイダー。
[3]iCIMS:SaaS型のエンタープライズ向けATS「iCIMS Recruit」のプロバイダー。複数のジョブボードへの同時求人広告掲載、ソーシャルリクルーティング、リファラル採用のサポート、レポーティング&アナリティクス機能を備える。
[4]Workable:クラウドベースの中規模企業向け総合採用プラットフォーム。採用マーケティング、消極的な候補者のサーチ、従業員によるリファラル、候補者体験、採用チームコラボレーション、応募者トラッキング、コンプライアンス&セキュリティなどを自動化・最適化する。
[5]Greenhouse:求人広告の作成からジョブボードやSNSへの求人掲載、採用プロセスの進捗管理、候補者管理、採用経路の分析レポートといった機能を備えるATS「Greenhouse Recruiting」などを提供
[6]Lever:候補者のデータベース検索、GoogleやMircrosoftのカレンダーツールと連動した面接の日程調整、キャリアページの制作といった機能を備えるATS「Lever Hire」を提供。
[7]HiringSolved:AIを活用した採用自動化プラットフォーム。ユーザーが地域、職種、必須スキルといった条件を音声で入力すると、顧客が持つ応募者データベースの中から条件に合った候補者を発掘する音声アシスタント「RAI」や、応募者の中からジョブデスクリプションに合った候補者を自動検索する機能を備える。「採用されなかった候補者全員にメールを送信」などと話しかけると、自動作成されたメールを一斉送信する。
[8]Paradox:採用に特化したチャットボット「Olivia」が求職者からの問い合わせに自動対応し、経験年数や希望の職種や資格の有無などを質問し、スクリーニングする。
[9]AllyO自然言語処理と機械学習の技術でリクルーターの煩雑な業務を自動化するAIリクルーター。応募者からの質問にチャットで回答、候補者プロフィールのスクリーニング、面接日時の調整、面接後のフィードバックの回収やオファーの提示、オリエンテーションの日時調整といった業務を自動化する。
[10]EnteloAIを活用した人材のマッチングサービス。SNSからクローリング技術で自動収集した潜在層のプロフィールを保有。スキル、役職、就業先名、地域、経験年数、出身大学名などで候補者を検索できる。勤続年数やSNS上の活動の変化、就業先でのレイオフ、M&A、株価の下落、幹部の退職など70以上の因子を独自のアルゴリズムで分析し、90日以内に転職する確率が他よりも2倍高い候補者を抽出する機能もある。
[11]Hiretual:適正人材をウェブから見つけランク付けするAI搭載ソーシングツール。求人広告や職務経歴をアップロードすると、マッチする人材を検索、ランク付けし、候補者の連絡先、現在の推定報酬額、求人との適合性、転職の可能性、同僚からの評判などをひとまとめに表示する。
[12]Avature:グローバル人材獲得および人材管理のためのSaaSプラットフォーム。地域や部門など企業のニーズに合わせて柔軟に仕様を変更できる「Avature CRM」が代表的製品。インターンやエグゼクティブなど対象者別のランディングページやマイクロサイトを簡単に制作できるCMSや、そのリンクを採用情報とともにSNSに投稿する機能を備える。アナリティクス機能で訪問者数や登録者数などの効果も測定できる。
[13]Vervoe
独自の「人材トライアル」オンラインアセスメントテストで隠れた人材を探し出す採用プラットフォーム。現実のシナリオの中で候補者がどう行動するかを、マシンラーニングを使って自動的にランキングする。
[14]Talkpush:AIボットを使った採用自動化プラットフォーム。チャットボット「Stanley」が求職者からの問い合わせに対応し、事前設定した条件をもとに自動スクリーニング。面接日時も調整する。

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