HR Technology Trendsマーケットプレイス(臨時労働者紹介)

高度専門職、フリーランサーへの業務委託

Temporary Labor Marketplace
代表的なサービス

マーケットプレイス(臨時労働者紹介)は、採用テクノロジーの中では比較的新しい領域である。企業(個人)が外部に特定の業務を委託する際、インターネット上で人材を企業(個人)に紹介し、企業(個人)と人材をつなぐのがマーケットプレイスで、労働者紹介の他に採用された人材に対する労働時間の管理や報酬支払いなどのサービス業務を行う。人材はフリーランサーが多く、マーケットプレイスからインターネットを通して仕事の紹介を受ける。

マーケットプレイスが紹介する職種、サービスは多岐にわたり、法律や経営相談など高度の知識を必要とするものから、犬の世話や引越作業といった肉体労働まで様々である。またマーケットプレイスの多くがプログラマー専門、コンサルタント専門、家事などの雑用一般など専門領域を絞ったサービスを提供している。

マーケットプレイスはクラウドソーシングに似ている。労働力の外部調達を可能にし、フリーランサーが多いという点において共通しているが、クラウドソーシングでは多くの場合、プロジェクトのなかで業務を分け、複数の人材を採用するのに対し、マーケットプレイスでは必ずしもそうではなく、むしろインターネット上の人材派遣サービスに近い。

人事との関連性

マーケットプレイスは必要な時に専門知識、技能を持った人材を臨時的に採用できるため、正社員採用と比べ人件費の削減につながり、労働力を柔軟に調整できる点から、企業の利用が増えている。1つのプロジェクトが終わった後に、同じ人材をマーケットプレイスから採用するリピート採用のケースも見られる。採用はほぼ全てインターネット上で行われるため人材のスキル面と仕事へのマッチングに対するリスクはあるが、企業は求職者に対し過去の仕事の成果物の提出や、これまでの仕事に対する評価を確認するなど、実績をふまえて人材を採用している。

サービス例

  1. Upwork:業界最大手のマーケットプレイスおよびクラウドソーシングサイト
    登録者数1,200万人(2017年3月時点)。プログラマー、ウェブデザイナーなどテクノロジー系の専門性が高い人材を多く紹介している。労働者が報酬の5~20%の仲介料をUpworkに支払う仕組みで、企業からも報酬の2.75%を手数料として請求している。Upworkのスマートフォン用アプリもある。

  2. Freelancer:大手マーケットプレイスおよびクラウドソーシングサイト
    Upworkの競合で、登録労働者はUpworkより多い約2,300万人(2017年3月時点)。人材ネットワークは世界247カ国に及ぶ。サービス提供分野はウェブデザイン、SEOマーケティング、翻訳、アプリの開発、インターネットマーケティングなど。Freelancerのモバイルアプリもある。

  3. TaskRabbit:マーケットプレイスの代表的事業者
    掃除、家具の移動や簡単な大工仕事など家庭内の雑用を引き受ける。仕事の性質上単発の仕事が多いことが特徴。Tasker(タスカー)と呼ばれるTaskRabbitの登録者に基本的なトレーニングを行っている。依頼主からの賃金の支払いはクレジットカードもしくはデビットカードでの決済のみ。スマートフォン用のアプリからも仕事を依頼できる。

ビジネスモデル(課金形態)

マーケットプレイスは企業(個人)からの依頼を受け、臨時労働者を紹介する。臨時労働者に対する報酬の支払いはマーケットプレイスが行う。マーケットプレイスは仲介料や報酬支払いに関わる手数料を請求するが、請求先は下記のように異なる。

  1. 企業と労働者に対し、仕事の仲介料や手数料を課金する
  2. 企業に仲介料(コミッション)を課金する
  3. 労働者に仲介料(または手数料)を課金する

今後の展望

マーケットプレイスは発展過程にあるサービスで、今後は様々な進化を経て成長していくと見られている。概してフリーランサーは正社員に比べ、企業の人件費を減らし、費用対効果も高いことから、需要は今後も増えるだろう。しかし市場が新しいため、今後については不透明な部分もある。

企業および労働者にとって採用の鍵は、他者の評価である。企業は労働者の過去の仕事に対する評価を基準に選考を行い、労働者は他の労働者による企業の評価により、仕事を引き受けるかどうかを決めるという、双方による評価の確認で請負の選択がなされるためである。企業にとっては、労働者のソフトおよびハードスキルをいかに判断できるかがマーケットプレイスを使った採用における最大の焦点となる。またマーケットプレイスに対しても、労働者の実際のスキルを反映した客観的かつわかりやすい評価基準や評価方法が求められるだろう。

グローバルセンター
村田弘美(センター長)
鴨志田ひかり(客員研究員)
小原久美

HRテクノロジーマップ

※クリックすると拡大出所:TTL "Talent Acquisition Technology Ecosystem"を基に再分類し筆者作成(2016.10)

[関連するコンテンツ]