定点観測 日本の働き方転職(2019年11月版)

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総務省「労働力調査」から、過去1年間に転職をした人の数をとると、2018年は329万人(前年比+18万人)、転職者比率(転職者数/就業者数)は4.1%(同+0.1%)となった(図1)。

年齢別に転職者数をみると、特に45歳以上の年齢層での増加が著しい。転職が比較的若い人を中心に行われていることに変わりはないが、ここ最近では高年齢層でも転職が頻繁に行われるようになっており、全体の転職者数の増加に貢献している。

転職が一般的になることは好ましいことなのだろうか。転職が成功したかどうかの基準は人によって異なる。賃金が上昇すること、労働時間などの労働条件が希望にあうこと、やりがいのある仕事につけることなど、判断基準は人によってさまざまだろう。そこで、仕事への満足度という観点に着目し、リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査(JPSED)」を用いて、転職が現在の仕事への満足度をどのように変動させているのかを分析してみたい。

JPSEDを利用し、転職の有無別に満足度が上がったのかあるいは下がったのかを確認する(図2)。すると、転職をした場合、仕事満足度が上昇した人の割合が33.7%となり、転職しない場合(23.6%)に比べて、満足度が高まった人が多い。しかし、転職をして仕事満足度が低下した割合は24.5%で、転職を行っていない人(22.5%)に比べ、こちらもやや高い水準となった。転職は仕事の満足度を高める手段であると同時に、逆にそれが満足度を下げてしまう場合もあるということだ。

転職は、そのこと自体が必ずしも事態を改善させるための手段とはなりえない。自身のキャリアの全体像を把握しながら、そこに転職がどう生きるのかを戦略的に考えていく必要があるのだ。やみくもに転職するのではなく、自身のキャリアを上向かせるための質の高い転職を増やしていく必要があるだろう。

図1 転職者数
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出典:総務省「労働力調査」

図2 仕事の満足度が上昇/低下した人の割合(転職の有無別)
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出典:リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査(JPSED)2018、2019」
注:xa19_l18を用いたウエイト集計を行っている。

文責:坂本貴志(研究員・アナリスト)
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