定点観測 日本の働き方個人による学び

厚生労働省「能力開発基本調査」を使用して、自己啓発の状況を確認してみよう(図1)。2018年度の正社員の自己啓発の実施率は44.6%で前年度より1.7pt増加した。比較可能な2009年度以降でみると、2012年度、2016年度に次ぐ高水準となった。2018年はリカレント教育元年ともいえる年であった。政府をはじめ、メディアでも学び直しの重要性が打ち出された。その結果が今回の自己啓発の上昇の背景にあったと思われる。

人はどういうときに自ら学ぶのであろうか。リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査(JPSED)」を用い、自己啓発を促す要因について分析してみよう(図2)。2018年に転職した人としなかった人のうち、2018年に自己啓発をした人の割合をそれぞれみると、転職しなかった人で自己啓発した人は36.1%だが、転職した人で自己啓発した人は39.3%と3.2pt高い。同様に転職または就職意向のある人とない人で、自己啓発した人の割合をみると転職・就職意向のある人の方が自己啓発を実施した割合が11.7pt高い(38.3%-26.6%)。

最後に、自己啓発している人の割合を職種別にみてみよう(図3)。専門職・技術職が52.8%で最も高い。次いで営業販売職が35.6%で高い。一方で、生産工程・労務関連は23.4%と低い。専門職・技術職は日々高度なスキルが要求されるため、自己啓発を実施する機会が必然的に多くなることが示唆される。営業販売職なども、顧客に合わせて知識を入れなくてはならないため、自己啓発をする場面が多くなると考えられる。

日本の労働生産性を高めるには、企業から与えられる学びだけでなく、個人にも自ら学んでもらうことが大切だ。人は転職などキャリアをチェンジするときに学ぶということが、これらの結果からわかった。適材適所の人材配置を可能にするような中途採用市場の設計と活性化が、労働のミスマッチを減少させるのみならず、個人の自己啓発を促進させる。

※人生100年時代構想会議ではリカレント教育の重要性が強調された。

図1 自己啓発実施率の状況(正社員、経年比較)
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出典:厚生労働省「能力開発基本調査」
注:2008年度以前は質問の仕方が異なるため、掲載していない。

図2 2018年の転職経験別(就業者)、および転職・就職意向別(全員)、自己啓発実施割合
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出典:リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査(JPSED)2019」
注1:xa19を用いたウエイト集計を行っている。
注2:転職経験については就業者が対象。転職・就職意向については全員が対象。

図3 自己啓発している人の割合(就業者、職種別)
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出典:リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査(JPSED)2019」
注:xa19を用いたウエイト集計を行っている。

文責:茂木洋之(研究員・アナリスト)
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