定点観測 日本の働き方会社からの学び

厚生労働省「能力開発基本調査」を使用して、OJTOFF-JTを、雇用者に実施している事業所の割合の推移をみてみる(図1)。2018年度は、正社員にOJTを実施している事業所の割合が62.9%となった。前年から0.4pt低下したものの、比較可能な2006年度以降で3番目に高い水準である。また正社員にOFF-JTを実施した事業所の割合は75.7%で、3年連続で上昇した。これらのことから企業が積極的に人的投資している様子がわかる。

OJTOFF-JTはその性質上、労働時間と深い関連があると考えられる。リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査(JPSED)」を用い、労働時間と会社からの学びの関係をみてみよう(図2)。まず広義OJTについてみると、週当たり労働時間が30時間あたりを境として、労働時間が長い就業者の方が、実施率が高いことがわかるだろう。労働時間「10時間未満」「10時間以上20時間未満」「20時間以上30時間未満」のカテゴリーでは、実施率がそれぞれ38.6%、43.4%、41.8%であるのに対し、労働時間「30時間以上40時間未満」「40時間以上50時間未満」「50時間以上」のカテゴリーではそれぞれ 46.3%、49.1%、50.0%となっている。同様の傾向は狭義OJTについても観察できるし、さらにはOFF-JTになるとより顕著である。

次に、業種ごとに会社からの学びの実施率をみてみる(図3)。広義OJTについては金融・保険業(63.8%)や公務(60.3%)、医療・福祉(56.6%)、教育・学習支援(56.2%)、情報通信業(55.1%)など専門性の高い業種が目立って高い。OFF-JTについてもほぼ同様のことが言える。企業も自社の業種の性質によって、教育投資が必要となる場合を見極め、積極的に投資している様子がうかがえる。

少子高齢化が進行し、労働力人口の減少が予想される日本では、1人当たりの労働生産性を高めることが必要である。柔軟な働き方や個人の適性に合った仕事を割り当てるということも重要だが、やはり1人当たりの能力の向上という視点も欠かせない。

昨今働き方改革の関連で、労働時間が短縮傾向にある。しかし労働時間を削減して、人的投資まで削減してしまうと、それは生産性を高めるという本来の主旨から外れてしまう。必要な人的投資は怠らず、不要な労働時間を削減するような改革が望まれるだろう。

(※)狭義OJTとは、上司などからの指導を受けて学ぶことを意味する。
広義OJTとは、狭義OJTに加え、上司などからの指導はなかったがマニュアルなどを参考にして学ぶことを意味する。

図1 OJTとOFF-JTの推移
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出典:厚生労働省「能力開発基本調査」
注1:2018年度に関しては「正社員以外」のデータはない。
注2:2008年度以前は「正社員以外」ではなく「非正社員」という区分になっている。
注3:データは2006年度からしか取得できない。

図2 会社からの学びの実施率(週当たり労働時間別)
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出典:リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査(JPSED)2019」
注:xa19を用いたウエイト集計を行っている。

図3 会社からの学びの実施率(業種別)
※クリックで拡大します
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出典:リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査(JPSED)2019」
注:xa19を用いたウエイト集計を行っている。

文責:茂木洋之(研究員・アナリスト)
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