定点観測 日本の働き方総雇用者所得・労働分配率(2020年11月版)

内閣府「国民経済計算」によると、最新値の2018年名目雇用者報酬は283.7兆円と対前年比+3.2%の増加となった。雇用者報酬を国民所得で除して得た値を労働分配率とすると、2018年の値は70.2%となり前年比1.6%pt増加している。好況期においてはどうしても労働分配率は下がる傾向にあるが、2015年以降右上がり傾向になっていることから、労働者が受け取る報酬の総額はしっかりと増えているといえるだろう(※)。

雇用者報酬の増加には、①ベースアップの実施などで賃金が上昇していることと、②雇用者自体が増加していることが寄与している。リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査」を用い、雇用者報酬の増加のメカニズムを明らかにしてみよう。

図2は、2019年12月時点に雇用者である人の割合を、2019年1年間の主な仕事からの収入分布別にみたものである。雇用者の収入分布をみると、100万円未満の低所得者層は7.9%と前年比+0.4%ptであり、最も増加している。400万円以上の中所得者層でも前年比+0.1~0.2%ptと増えていることがわかる。一方で、2019年に少しも働かなかった人(収入なし非就業者)は、36.3%と前年比▲1.5%ptの減少となった。

さらに、2018年に少しも働かなかった人が2019年にどうなったかをみると、引き続き収入がない状態の人が大半ではあるものの、4.5%の人が100万円未満の低所得者層の雇用者に移行していることがわかる(図3)。

これらの動きから、①継続して働いている人の収入が着実に増加していること、②労働参加の促進によって低所得ではあるものの所得を得る雇用者が増えていることが確認できる。

平均賃金は賃金を受け取っている人のみを分母として算出されるため、昨今のように、大幅に労働参加が進んでいる状況で、平均賃金が実態を適切に表しているかは慎重に考えるべきだ。そして、労働者が受け取る富が増えているのかという視点で考えれば、雇用者報酬も含め総合的に状況を捉えるべきであり、それはここ数年で大きく改善しているといえるだろう。

(※)国民経済計算によると、国民所得とは、雇用者報酬、営業余剰・混合所得、海外からの財産所得(純)から成り立っている。労働分配率とは、生産活動によって生み出された付加価値(国民所得)のうち、労働者がどれだけ受け取ったのか(雇用者報酬)を示す指標である。一般に、景気の変動によって企業の生産活動は大きく変動するが、労働者の賃金はそれに比べて緩やかな変動にとどまる。そのため、労働分配率の短期の動きだけをみると、好況時には低下し、不況時には上昇する傾向がある。

図1 雇用者報酬と労働分配率teiten3-2-1_201106.jpg

注:労働分配率=名目雇用者報酬/名目国民所得
出典:内閣府「国民経済計算」

図2 収入の分布とその変化 ※クリックで拡大しますteiten3-2-2_201106b.jpg

出典:リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査(JPSED)2019、2020」
注:収入なし非就業者とは、1年間に少しも働いていなかったものである。収入あり非就業者とは、12月時点では非就業者であるが、1年間のうち少しでも働いていたため、年収を得ていた者である。前年比は、2019年の割合から2018年の割合を差し引いたものであるxa19,xa20を用いたウェイトバック集計を行っている。

図3 2018年の収入の分布(2017年に収入がなかった人に限定)
teiten3-2-3_201106.jpg

出典:リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査(JPSED)2019、2020」
注: xa20_l19を用いたウエイト集計を行っている。

文責:坂本貴志(アナリスト)
編集:リクルートワークス研究所
※2019年7月時点の本記事はこちら
「定点観測 日本の働き方」一覧へ戻る