定点観測 日本の働き方失業(2020年11月版)

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総務省「労働力調査」によれば、2019年の完全失業率は2.4%と前年から横ばいとなった(図1)。完全失業者数は165万人(前年比▲3万人)とやや減少している。1年以上の長期の間で失業している長期失業者数は、51万人(同-2万人)となっており、失業者のうち長期失業者が占める割合も30.9%(同▲0.6%pt)と低下している(図2)。失業率は低水準での推移を続けており、ほぼ完全雇用の状態にあるといってよい状況にある。

このようななか、リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査(JPSED)」を用いて、失業者についてどのような課題が残っているのかをみてみよう。失業者がなぜ失業しているのか、その理由をみると「希望する種類・内容の仕事がない」が多く、そのほかでは時間や場所、賃金などを含めた労働条件のミスマッチが一定数を占めている(図3)。一方、「条件にこだわらないが仕事がない」は8.5%と相対的に少ない。現在失業者となっている人は、どんな仕事でもよいがとにかく仕事がないというよりは、自身が求める希望の条件があり、その条件に届かない仕事は行わないという状況にある人が多いとみられる。

ただ、「求人の年齢と自分の年齢とがあわない」「自分の知識・能力が求人要件に満たない」といった本人の能力や属性などと求人とのミスマッチも少なからず存在している。こうしたミスマッチを抱えている人については、翌年も失業者である確率が高く、長期失業者になりやすい傾向も見て取れる。

失業率が順調に低下しているとはいえ、人的資本が十分に形成されてこなかった就職氷河期世代など、依然として厳しい状況に置かれている人もいる。人手不足が進行し、失業者が順調に減少している今だからこそ、このような人にスポットライトを当て、人材を活かす方法を考えていくことも必要だろう。

図1 完全失業率と完全失業者数
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出典:総務省「労働力調査」

図2 長期失業者割合と長期失業者数

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出典:総務省「労働力調査」

図3 失業者の理由別の構成割合と翌年も失業者である割合
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出典:リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査(JPSED)2019、2020」
注:失業者の理由別構成割合は2019年の割合。理由別の翌年も失業者である割合は、2018年に失業者であった人について、理由別に2019年も失業者である確率を算出したもの。x20、x20_p19のウエイトを用いて集計。

文責:坂本貴志(研究員・アナリスト)
編集:リクルートワークス研究所
※2020年3月時点の本記事はこちら
※2019年4月時点の本記事はこちら
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