定点観測 日本の働き方非正規雇用者の賃金(2019年3月版)

「定点観測 日本の働き方」最新値はこちら

厚⽣労働省「賃⾦構造基本統計調査」によると、2017年における⾮正規雇⽤者の時給は1,414円と前年⽐-8円となった(図1)。正規雇⽤者の時給を1としたときの⾮正規雇⽤者の時給(⾮正規雇⽤者と正規雇⽤者の賃⾦格差)は、0.58倍と前年と同⽔準となった。賃⾦格差は、2012年を底として、緩やかな改善傾向にある。

実は、非正規雇用者が正規雇用者に転換している状況にあって、賃金格差を縮小させていくことは簡単ではない。リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査(JPSED)」を用い、非正規雇用者が正規雇用に転換する比率を年収ごとに算出すると、高い年収の非正規雇用者ほど正規雇用者に転換しやすいことがわかる(図2)。つまり、比較的賃金が高い非正規雇用者ほど先に正規雇用に転換する傾向があるため、正規転換が進んでいる状況では必然的に、残った非正規雇用者の賃金が低くなる傾向があるのだ。また、同様に正規雇用から非正規雇用に転換した人の年収は高い傾向があり、正規雇用から非正規雇用になる人が減少すると、やはり非正規雇用者の賃金が低く算出されてしまう(図3)。

上記の要素を踏まえ、非正規雇用者を取り巻く環境について総合的に判断すると、非正規雇用者の処遇改善は着実に進展しているといえるだろう。2020年からは同一労働同一賃金が法律上明文化される。正規雇用者と非正規雇用者の不合理な処遇の格差は決して許されることではなく、今後、さらなる状況の改善が必要となろう。

図1 非正規雇用者と正規雇用者の賃金格差
出典:厚生労働省「賃金構造基本調査」

図2 前年、非正規雇用だった人の収入の変化(今年の雇用形態別、55歳以下に限る)
出典:リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査(JPSED)2017、2018」

図3 今年、非正規雇用であった人の収入(前年の雇用形態別、55歳以下に限る)出典:リクルートワークス研究所「全国就業実態パネル調査(JPSED)2017、2018」
注:いずれもx18_p17を用いたウエイト集計を行っている。

文責:坂本貴志(研究員・アナリスト)
「定点観測 日本の働き方」一覧へ戻る