HR Tech Roundup  海外のHRテクノロジー最新ニュース英AdzunaがIPOを計画、LinkedIn無意識の偏見を排除、ほか

海外HR Techニュースリリースまとめ(2021年9月)

インターネット上のさまざまなサイトから求人情報を収集する英国の大手求人検索エンジンのAdzunaが、IPOを計画している。Adzunaは2011年の開設以降、成長を続け、現在16カ国で展開している。登録者数は700万人を超える(2018年時点)。IPOにより、事業拡大をさらに加速させる狙いとみられる。
9月は、GlassdoorによるFishbowlの買収、FlexJobsによるJob-Huntの買収など、前月に続き、HRテクノロジー会社のM&Aが多数発表された。Glassdoorは、Fishbowlの買収により、企業や業界についてのリアルな情報、人とのつながりやコミュニティを求める求職者のニーズに対応する。
資金調達関連の主なニュースでは、インドのブルーカラー向け求人アプリのApnaが投資会社から1億ドルの出資を受け、「ユニコーン」(評価額10億ドル以上の未上場企業)の仲間入りを果たした。

  • 【IPO】

    Adzuna、IPOを計画、最大1億ポンドの調達を狙う

    Adzunaは、ロンドン証券取引所の新興企業向け市場「AIM(Alternative Investment Market)」への上場を計画している。株式投資型クラウドファンディングプラットフォーム「Crowdcube」経由の出資者500人に宛てた書簡によると、AdzunaはIPOにより、自社の時価総額が「7000万ポンド以上」になると見込んでいるが、関係筋によると8000万~1億ポンド規模になると予測されている。Adzunaは、雇用市場の動向を分析する高度なデータアナリティクス機能を開発した。2018年に、労働・年金省から公共求人求職サイト「Find a Job」の運営を受託している。2020年には国家統計局(ONS)と提携し、国内の人材需給状況を表す最新データを提供している。(9月19日 The Telegraph)
    https://www.telegraph.co.uk/business/2021/09/19/jobs-search-engine-adzuna-plots-100m-aim-float/

  • 【新サービス・新機能】

    LinkedIn、求職者の氏名と顔写真を非表示にする機能を追加

    LinkedInは、求職者の氏名と顔写真を非表示にする機能を採用ツール「LinkedIn Recruiter」に追加した。管理画面で非表示に設定することで、採用担当者が候補者を検索する際の無意識の偏見を排除する。スキルや能力にもとづく人材の評価を促進する。(9月15日 Recruitics)
    https://info.recruitics.com/blog/linkedin-creates-feature-aimed-to-reduce-bias


    LinkedIn、「Stories」を9月末に終了

    LinkedInは、2020年に公開した「Stories」機能を9月30日に終了すると発表した。Storiesは、投稿後24時間で消える画像や動画の投稿機能である。LinkedInはサービス終了の理由について、プロフィールに掲載した動画がずっと掲載されることをユーザーが望んでいるためと説明した。また、Storiesにはスタンプや文字を追加できるが、ユーザーは魅力的な動画を作製するためによりクリエイティブなツールを求めている。LinkedInは今後、Storiesをさらに進化させ、新たな動画体験をユーザーに提供する計画である。(8月31日 LinkedIn)
    https://www.linkedin.com/pulse/whats-next-linkedin-stories-video-liz-li/


    Canvas、ダイバーシティ採用のアナリティクス機能を公開、5000万ドルを資金調達

    ダイバーシティ採用に特化したプラットフォームのCanvasは、「Diversity Analytics & Benchmarking」機能を発表した。Diversity Analytics & Benchmarkingは、応募者の性別や人種、学歴別の構成比をデータでリアルタイムに確認し、より多様な人材プールの構築につなげる。また、自社のダイバーシティ採用に関する指標を同業種または同規模の企業と比較し、課題や改善点を明らかにする。
    Canvasはまた、Owl VenturesやSequoiaなどから5000万ドルを資金調達し、時価総額は4億ドルに達した。資金はレコメンデーション機能の開発などに充てる。Airbnb、Bloomberg、Lyft、Pinterest、Robloxといった有名企業が主要顧客である。(9月14日 Canvas)
    https://www.canvas.com/blog/canvas-lands-50m-series-c-to-become-industry-standard-for-diversity-recruiting

  • 【M&A】

    Paradox、Traitifyを買収

    採用に特化したチャットボット「Olivia」を開発するParadoxは、携帯端末によるアセスメントプラットフォームのTraitifyを買収した。Paradoxは、Traitifyの技術を統合し、時給制労働者の選考の精度とスピード向上を狙う。Traitifyは、ビッグ5理論を用いた性格特性分析を提供する。受検者は、表示された画像とキーワードの内容が自分にあてはまるかを「はい」または「いいえ」で答える。平均所要時間は2分未満で、アセスメント完了率は96%を超える。
    2016年に設立されたParadoxは、Unilever、McDonald's、CVS Health、PepsiCo、Lowe's、General Motorsなど多数の有名企業に利用されている。また2020年から2年連続でForbes 誌の「Top Startup Employers」に選ばれた。
    2021年1月に、WhatsAppなどメッセージングアプリを通じた求職者とのやりとりを自動化するイスラエルのチャットボットSpetzも買収した。(8月23日 PR Newswire)
    https://www.prnewswire.com/il/news-releases/paradox-acquires-traitify-to-further-streamline-hourly-hiring-with-fast-simple-next-generation-assessments-301360637.html


    Glassdoor、Fishbowlを買収

    企業口コミ投稿サイトのGlassdoorは、ビジネスに特化したSNSのFishbowlを買収した。求職者はFishbowlを通じて、興味のある特定の会社や業界の給与相場など転職活動に役立つリアルな情報を得ることができる。また、起業、MBA、ワーク・ライフ・バランス、上司や同僚との関係性、資産運用、健康、ダイバーシティなど、さまざまなトピックについての質問を投稿し、情報交換を行う。登録者数は100万人を超える。
    Glassdoorが2021年8月に実施した調査によると、回答者の43%が「パンデミックの影響で同僚とのつながりが減り、孤立感を感じている」、42%が「対面でのつながりが不足し、キャリア形成が妨げられている」と答えた。また、回答者の69%が「転職を決める際に一緒に働くチームメンバーについて事前によく知りたかった」、64%が「同業者に質問できる手段が欲しかった」と答えている。(9月15日 PR Newswire)
    https://www.prnewswire.com/news-releases/glassdoor-to-power-fishbowl-a-fast-growing-professional-social-network-301377197.html


    DHI Group、The Museに300万ドルを出資

    ジョブボードのDiceとClearanceJobs を運営するDHI Groupは、Z世代およびミレニアル世代向けジョブボードのThe Museに300万ドルを出資した。資金は、The Museの商品開発、営業強化に充てる。テクノロジストの採用が激化する中、DiceはThe Museと協働し、企業が、自社独自の文化や価値観、技術開発に対するアプローチを求職者に伝えるサポートを行う。(9月8日 DHI Group)
    https://dhigroupinc.com/press/press-release-details/2021/DHI-Group-Inc.-Announces-3-million-Investment-in-The-Muse/default.aspx


    FlexJobs、Job-Huntを買収

    リモートワークなど柔軟な働き方ができる求人に特化した求人求職サイトのFlexJobsは、キャリアサイトJob-Huntを買収した。Job-Huntは、履歴書の書き方、面接対策、LinkedInの活用法、パーソナルブランディング、SEO対策、給与交渉など、キャリアコーチや専門家による就職活動に関するさまざまなアドバイス記事や電子書籍を1000件以上掲載している。FlexJobsは買収により、社会人や新卒者向けのコンテンツを拡充させる。(9月23日 PRWeb)
    https://www.prweb.com/releases/flexjobs_announces_acquisition_of_job_hunt_to_increase_safe_and_effective_job_searching_for_todays_job_seeker/prweb18173588.htm

  • 【決算】

    Kanzhun、第2四半期決算は、前年同期比173.9%の増収

    中国最大級の求人マッチングアプリ「BOSS直聘(BOSS Zhipin)」の運営会社であるKanzhunは第2四半期決算を発表した。売上高は、前年同期比173.9%増の11億6820万元(1億8090万ドル)となった。純損失額は、株式報酬費用の発生により、14億1410万元(2億1900万ドル)と前年同期の1億6740万元から大幅に増加した。
    売上高の内訳は、ネット求人サービスが前年同期比174.7%増の11億5780万元(1億7930万ドル)、その他サービス(主に求職者向けの付加価値サービス)が同108.0%増の1040万元(160万ドル)だった。
    平均月間アクティブユーザー数(求職者と法人ユーザー)は同44.8%増の3040万人となった。また、過去12カ月(2021年6月30日締め)に有料のネット求人サービスを利用した法人ユーザー数は、前年比135.9%増の361万人となった。
    Kanzhunは、今年6月にナスダック市場に上場している。(8月27日 GlobeNewswire)
    https://www.globenewswire.com/news-release/2021/08/27/2287595/0/en/KANZHUN-LIMITED-Announces-Second-Quarter-2021-Unaudited-Financial-Results.html

  • 【調査】

    FlexJobs調査、従業員の約3割がリモートワークできる仕事を求めて転職活動中

    FlexJobsの調査によると、回答者の44%が「雇用主からオフィス勤務への復帰を求められたことを理由に離職した、または離職を計画している人を少なくとも1人は知っている」、29%が「リモートワークが可能な新しい仕事を積極的に探している」、17%が「リモートワークの選択肢がないことを理由に仕事を辞めた」と答えた。
    自分の希望通りにリモートワークをするための交換条件として、回答者の24%が「10~20%の減給を受け入れる」、21%が「休暇を諦める」と答えた。
    パンデミック収束後の希望の働き方は、58%が「完全なリモートワーク」、39%がオフィスとリモートワークの「ハイブリッド型」と答えたが、「完全オフィス勤務」と答えたのは3%のみだった。
    会社の出社方針については、回答者の42%が「パンデミック収束後には雇用主からオフィス勤務を求められるだろう」、27%が「ハイブリッド型の働き方をするだろう」、17%が「完全なリモートワークをするだろう」、14%が「方針について把握していない」と答えた。調査は、2021年7月21日から8月9日にかけて実施され、4600人以上が回答した。(9月13日 PRWeb)
    https://www.prweb.com/releases/44_know_at_least_one_person_who_has_quit_or_plans_to_quit_because_of_employers_revoking_remote_work/prweb18187602.htm

  • 【資金調達】

    インドのブルーカラー向け求人アプリのApnaは、Tiger Global などから1億ドルを資金調達。時価総額は約11億ドルに達した。利用者数は求職者1600万人および企業15万社、求人掲載件数は500万件に達する。2021年7月にもTiger GlobalやSequoia Capital Indiaなどから7000万ドルを資金調達している。

    https://yourstory.com/2021/09/india-youngest-unicorn-apna-jobs-hr-startup-nirmit-parikh/amp


    身元調査の自動化プラットフォームのCheckrが、Y CombinatorやFidelity Management & Research Company などから2億5000万ドルを資金調達。累計調達額は5億5000万ドル、時価総額は46億ドルに達した。Checkrは、AIで犯罪歴、運転歴、職歴、学歴といった身元調査を24時間以内に行うサービスを展開。年間の処理件数は3000万件以上。顧客はLyft、Instacart、Netflix、Adecco、Airbnb、Drift、Coinbaseなど。

    https://checkr.com/blog/checkr-raises-250-million-at-4-6-billion-valuation


    ショートメッセージ(SMS)を活用した時給制労働者の採用プラットフォームWorkstreamが、BONDやZoomのエリック・ユアンCEOなどから4800万ドルを資金調達。累計調達額は6050万ドルとなる。Workstreamは、応募者管理、SMSによる候補者とのコミュニケーション、ショートビデオによる面接、自動オンボーディングといった機能を備え、飲食店のスタッフ、看護師、デリバリー配達員、介護スタッフなどの採用をサポートする。

    https://www.workstream.us/blog/funding-series-b

TEXT=杉田真樹