HR Tech Roundup  海外のHRテクノロジー最新ニュースLinkedIn、シンガポールでスキル採用ツール「Skills Path」の試験運用を開始、ほか

海外HR Techニュースリリースまとめ(2021年8月)

LinkedInが、シンガポールで「Skills Path」の試験運用を開始した。Skills Pathは、Microsoftとともに、249カ国で3000 万人以上の人々のデジタルスキル獲得を後押しする取り組みの1つである。スキルにもとづく人材の採用を促進することで、失業者は経験や学歴などにかかわらず、異業種への転職の機会を得られる。また企業も人材プールを拡大し、求人ポストに適した人材を幅広く発掘できる。
8月は、プライベートエクイティ投資会社によるCornerstone OnDemandの大型買収やInstaworkによるDraftedの買収など、前月に続き、HRテクノロジー会社のM&Aが多く報じられた。Cornerstone OnDemandは、採用、学習、業績、人事管理の機能を備える総合プラットフォームを提供する。昨年、人材開発システムSabaを買収するなど、近年は企業向けラーニング事業にも注力している。
資金調達関連の主なニュースでは、クラウド型の人材獲得プラットフォームSmartRecruitersが1億1000万ドルの出資を投資会社から受けた。

  • 【新サービス・新機能】

    LinkedIn、シンガポールでスキル採用ツール「Skills Path」の試験運用を開始

    LinkedInは、シンガポールの政労使の代表によって構成されるNational Jobs Council(全国雇用理事会)と協働し、スキル採用ツール「Skills Path」の試験運用を開始した。Skills Pathは、企業が従来の職歴や資格ではなく、実証されたスキルにもとづいて候補者の評価を行うツールである。試験運用に参加する企業は、求人情報を掲載する際に、特定の職種に不可欠なコアスキルを明確にする。求職者は、オンライン学習サービス「LinkedIn Learning」の講座を無料で受講し、求人ポストに求められるスキルを習得する。次に、多肢選択式のスキルテスト「LinkedIn Skill Assessments」や動画(または記述式)によるアセスメントを受ける。アセスメントを通過すると、リクルーターとの面接が保証される。
    Skills Pathは現在、カスタマーサービス、データアナリスト、プロジェクトマネジャー、リクルーター、サプライチェーンコーディネーター、セールスディベロップメントの6つの職種を対象としたサービスを提供している。(8月14日 LinkedIn Talent Blog)
    https://www.linkedin.com/business/talent/blog/product-tips/linkedin-to-pilot-skills-path-in-singapore


    Fiverr、フリーランサー向けサブスクリプション型サービス「Seller Plus」を導入

    フリーランサーが自分の特技や趣味を生かしたサービスを5ドルから出品できるFiverrは、フリーランサー向けサブスクリプション型サービス「Seller Plus」(月額29ドル)を導入した。フリーランサーは、専任のサクセスマネジャーから、プロフィールの構築や顧客とのやりとり、Fiverrの各種機能やサービスの活用など、あらゆるステップにおいて事業の成長につながるガイダンスを受けることができる。どのキーワードが自身のサービスの受注につながっているのかがわかるキーワード分析や、トラフィックの種類を確認できる高度アナリティクス、顧客にリピート購入を促す割引クーポンの機能も利用できる。
    Fiverrには、グラフィックデザイン、デジタルマーケティング、プログラミング、動画やアニメーション制作など500種類以上の仕事が掲載されている。2021年6月30日までの1年間で、400万人の顧客が160カ国に在住するフリーランサーに仕事を発注した。(8月12日 Business Wire)
    https://www.businesswire.com/news/home/20210812005111/en/Fiverr-Launches-Subscription-Based-Loyalty-Program-for-Global-Seller-Community


    ZipRecruiter、Comparablyと提携し企業の口コミ情報を掲載

    ZipRecruiterは、企業口コミサイトのComparablyとの提携を発表した。会社の評判、部署別の給与額、社風、福利厚生、ダイバーシティなど、匿名で投稿された情報を自社の企業ページに掲載する。ZipRecruiterは、AIを活用し、企業と求人情報をマッチングするマーケットプレイスである。求職者のスキルや経歴、求人の応募要件をもとに、求職者と求人の適合度(Great Match、Good Match、Fair Match、Not a Match)を示す機能を備える。ZipRecruiterが提示した適性の高い求職者の中から、企業が候補者を選び、ワンクリックで応募を促すスカウト機能「Invite to Apply」もある。(8月10日 ZipRecruiter Blog)
    https://www.ziprecruiter.com/blog/ziprecruiter-partners-with-comparably-to-give-job-seekers-more-information/

  • 【M&A】

    Clearlake Capital Group、Cornerstone OnDemandを52億ドルで買収

    プライベートエクイティ投資会社のClearlake Capital Groupは、クラウド型の人材管理プラットフォームのCornerstone OnDemandを52億ドルで買収することに合意した。買収完了後、Cornerstoneは株式を未公開化する。Cornerstoneは、世界180カ国の6000社以上の企業に利用されており、ユーザー数は約7500万人。50カ国語に対応する。(8月5日 Cornerstone OnDemand)
    https://investors.cornerstoneondemand.com/investors/news-and-events/news/news-details/2021/Cornerstone-OnDemand-Enters-Definitive-Agreement-to-Be-Acquired-by-Clearlake-Capital-Group-in-5.2-Billion-Transaction/default.aspx


    Instawork、Draftedを買収

    すきま時間で働ける求人検索アプリのInstaworkは、リファラル採用プラットフォーム のDrafted を買収した。今後は、Drafted のAIおよび機械学習技術をもとに、求職者が自身の人脈を通じて、空きシフトの情報を簡単に拡散できる機能を構築し、時給制労働者のリファラル採用を促進する。Draftedのトラッキングや管理ツールを活用し、プロセスを効率化する。(8月3日 Business Wire)
    https://www.businesswire.com/news/home/20210803005287/en/Instawork-Acquires-AI-Powered-Recruiting-Platform-To-Help-Close-Nation%E2%80%99s-Labor-Demand-Supply-Gap?hsCtaTracking=5873724d-227c-4643-b6b2-c00182c5793b%7C88d37a81-f7cb-4689-b322-ab99d6241820


    Veritone、PandoLogicを買収

    AIオペレーティングシステムを提供するVeritoneは、プログラマティック求人広告プラットフォームのPandoLogicを1億5000万ドルで買収する。PandoLogicの時価総額は、2021年の売上高の約3倍に相当する。PandoLogicは、SaaSサービスから5000万ドル以上を売り上げ、2021年プロフォーマベースのEBITDAは2500万ドルであった。(7月22日 Veritone)
    https://www.veritone.com/press-releases/veritone-to-acquire-pandologic/


    Bullhorn、Sirenumを買収

    人材紹介会社向けATSを提供するBullhornは、ロンドンに本社を置く人材派遣会社向けのクラウド型労働者管理プラットフォームSirenum を買収した。Sirenumは、求人、シフトの自動調整、勤怠管理、労働者のモニタリング、登録スタッフの免許取得や研修修了状況の把握、タイムシートや給与の支払い管理、効果測定などの機能を備える。Visa、Square、McDonald’s、Ubisoft、FireEye、Biogen、Equinox、Public Storageといった有名企業が主要顧客である。50万人以上の労働者がSirenumのアプリを利用している。(7月20日 Bullhorn)
    https://www.bullhorn.com/uk/blog/2021/07/bullhorn-acquires-sirenum-to-bolster-bullhorn-for-salesforce/


    SEEK、JobKoreaの株式の10%を取得、アジア最大のキャリアプラットフォームを目指す

    東南アジア最大級の求人マーケットプレイス(JobStreetおよびJobsDB)を保有するオーストラリアのテクノロジー会社SEEKは、韓国最大級の求人プラットフォームJobKoreaに4800万ドルを出資した。これにより、JobKoreaの株式の10%を取得する。またSEEK AsiaのCEOであるPeter Bithos氏が、JobKoreaの取締役会に加わる。Bithos氏は、「JobKoreaを通じて、韓国の求職者2500万人の人生や、企業500万社の日常に触れることができる」と話す。一方JobKoreaは、SEEKのグローバル求人およびHCMプラットフォームの運営における豊富な知見を活用することができる。JobKoreaの残りの株式は、韓国の最大手プライベートエクイティ投資会社であるAffinity Equity Partners(AEP)が保有している。AEPは2021年5月にJobKoreaを買収した。(8月20日 New Straits Times)
    https://www.nst.com.my/business/2021/08/719568/seek-invests-jobkorea-move-be-asias-best-digital-career-platform

  • 【決算】

    LinkedIn、通年の売上高が100億ドルを突破

    Microsoftは、2021年第4四半期(6月30日締め)の決算を発表した。子会社のLinkedInの売上高は、前年同期比で46%(9億2800万ドル)増加した。これを牽引したのはマーケティングソリューション事業の広告収入増で、同事業の売上高は同97%増加した。また、労働市場の回復もタレントソリューション事業の成長を後押ししている。
    Microsoftは、LinkedInの第4四半期の売上高や損益の詳細を公表していないが、通年の売上高が初めて100億ドルを上回ったことを明らかにした。Microsoftは2016年に、LinkedInを262億ドルで買収した。(7月27日 Microsoft)
    https://www.microsoft.com/en-us/Investor/earnings/FY-2021-Q4/press-release-webcast


    Upwork、第2四半期決算は、前年同期比41.9%の増収

    フリーランサーマーケットプレイスのUpworkは、第2四半期決算を発表した。売上高は、前年同期比41.9%増の1億2418万ドル、売上総利益は同46.6%増の9109万ドルとなったが、1653万ドルの純損失を計上した。セグメント別の売上高は、マーケットプレイスが同45.9%増の1億1144万ドル、マネージドサービスが同7.2%増の972万ドルであった。Upworkは第2四半期に、各分野を専門とするUpworkのリクルーターが企業のニーズに合うフリーランサーを登録者の中から数人を選出し、企業に提案する「Talent Scout」サービスを発表した。(7月29日 Upwork)
    https://investors.upwork.com/news-releases/news-release-details/upwork-reports-second-quarter-2021-financial-results


    Fiverr、第2四半期決算は、 前年同期比59.7%の増収

    Fiverrは第2四半期決算を発表した。売上高は、前年同期比59.7%増の7526万ドル、売上総利益は、同60.1%増の6273万ドルで、1329万ドルの純損失を計上した。アクティブバイヤー数は前年同期の280万人から400万人に増え、バイヤー1人あたりの支出額も226ドルと前年同月から23%増加した。第3四半期の売上高は、同30~38%増の6800万~7200万ドルの見通しである。(8月5日 Fiverr)
    https://investors.fiverr.com/press-releases/press-releases-details/2021/Fiverr-Announces-Second-Quarter-2021-Results/default.aspx


    ZipRecruiter、第2四半期決算は、前年同期比109%の増収

    ZipRecruiterは、第2四半期決算を発表した。売上高は、前年同期比109%増の1億8300万ドル、売上高総利益は、同113%増の1億6140万ドルに達し、5284万ドルの純損失を計上した。有料サービスを利用する企業の数は120%増えたが、1社あたりの売上高は同5%減の1081ドルとなった。ZipRecruiterは、第3四半期の売上高が同77~83%増加すると見込んでいる。また、通年の売上高の増加率を、前年比39~44%から56~59%に上方修正した。(8月13日 Stocks Telegraph)
    https://stockstelegraph.com/is-there-any-reason-as-to-why-the-ziprecruiter-zip-stock-expanded-by-13/

  • 【調査】

    Indeed調査、新型コロナウイルスのワクチン接種を義務づける求人が急増

    Indeed Hiring Labの調査によると、2021年8月7日までの1週間にIndeedに掲載された求人の中で、「COVID-19 vaccine required」「requires COVID19 vaccination」「must have COVID vaccine」など、新型コロナウイルスのワクチン接種を義務づける求人の割合は、前月比で34%増加した。新型コロナウイルスとは明示していないがワクチン接種を求める(「vaccine required」や「requires vaccination」など)求人は、同90%増加している。
    職種別にみると、以前は接種を必要としていなかった仕事でも、志望者に接種を求める傾向が増えている。最も増加したのはソフトウェア開発で、ワクチン接種が必要な求人件数は2021年7月時点で、100万件あたり437.9件と、2月(3.5件)から100倍以上に急増した。その他、「マーケティング」「教育」「会計」の分野でも大幅に増えている。(8月12日 Indeed Hiring Lab)
    https://www.hiringlab.org/2021/08/12/job-postings-requiring-vaccination-climb/

  • 【資金調達】

    SmartRecruiters、1億1000万ドルを資金調達。時価総額は15億ドル。SmartRecruitersは、ATS、CRM、採用チャットボット、求人情報の配信といった製品を提供。直近1年間に200社以上の新規顧客を獲得し、売上高は前年比で50%増加した。

    https://www.smartrecruiters.com/news/smartrecruiters-raises-110m/


    SaaS型の時給制従業員管理プラットフォームHomebase、7100万ドルを資金調達。Homebaseは、求人の掲載、応募者管理、シフトやタイムシート管理、チーム内コミュニケーション機能などのサービスを提供するが、給与計算および支払管理と給与前払いの2つの商品を発表した。Homebaseの利用者数は、事業所10万社以上である。従業員数は100万人。

    https://www.businesswire.com/news/home/20210729005066/en/Homebase-Announces-71-Million-in-Series-C-Funding

TEXT=杉田真樹