全国就業実態パネル調査「日本の働き方を考える」2017仕事の質に着目した労働時間の削減策を考える -本来業務・周辺雑務・手待ち時間に分解して 久米功一

労働時間の削減に向けて、どのように取り組めばよいのか。一つの取り組みが一律に有効となるわけではなく、働き方の実態に沿った取り組みが求められている。

JPSEDでは、仕事の分解を試みた。具体的には、それぞれの仕事を、①本来の担当業務で成果と直結している仕事、②周辺的な雑務、③待機や客待ち等の手待ち時間、に分けて、合計100になるように割合を調べた(詳細は表1・表2を参照)。

表1 職種別にみた仕事の割合(平均週労働時間順、上位1-20職種) ※クリックで拡大
表1 職種別にみた仕事の割合(平均週労働時間順、上位1-20職種)表2 職種別にみた仕事の割合(平均週労働時間順、上位21-40職種) ※クリックで拡大表2 職種別にみた仕事の割合(平均週労働時間順、上位21-40職種)

平均的には、本来業務74.3%、周辺雑務17.9%、手待ち時間7.8%であった。本来業務以外が約25%を占めており、そこに仕事効率化の余地がある。さらに、働き方の自律性なども考慮したところ、労働時間削減に向けた方策として、5つのパターンが浮き彫りになった。

①業界内の過剰競争があり、ときにそれが顧客の要望と乖離している場合には(たとえば、納品スピードや営業時間など)、業界全体で足並みを揃えて改善する
・ドライバー(トラック)は、手待ち時間が約1割あり、有給休暇が取りにくく、勤務時間の自律性が低い。積み荷に合わせて人をシフトさせるのではなく、人の働き方に合わせて積み荷を引き受けるなど、受発注や業務フローを変革して、ドライバーの自律性を高めることが望ましい。
・理容師・美容師は、手待ち時間が長く、仕事の負荷がそれほど高くない。完全予約制にして、手待ち時間を削減するとともに、業界として定休日を増やすなどして、営業日を集約することも一案である。

②下請け構造のなかで長時間労働が発生している場合には、政府サイドで(発注元に対する)規制を検討する
・土木・建築・設備の施工管理・現場監督・工事監理者は、現場の裁量は任せられて働いているが、有給休暇が取れず、勤務時間は選べない。平均週48時間程度働いていることは、予定工期・納期の見積もりが十分でない可能性がある。実装・据付時の想定外の対応を含めて、所定時間内で終えられる工期を設定することが必要である。

③職務を分解して、短時間勤務者に割り当てられる仕事を発見し、ジョブシェアする
・店長は、自分で仕事のやり方を決めることができるが、周辺雑務の割合が高く、単調ではないさまざまな仕事を、業務全体をみながらこなしている。労働時間を是正するためには、さまざまな仕事のうち周辺業務について、メンバーに委譲できる部分を増やしていく必要がある。
・医薬品営業は、本来業務の割合が低く、周辺雑務・手待ち時間の割合が高い。自分で仕事のやり方を決められるものの、単調ではないさまざまな仕事が多く、ストレスも高い。個人に負荷のかかる仕事のアサインではなく、周辺雑務を見直し、集約化して、チームでバックアップするなど、チームマネジメントに取り組むことが求められる。

④モバイルなどテクノロジーの活用で仕事の効率化や無駄の削減を進める。ときにはテクノロジー企業と連携して仕事効率化のツールを開発する
・ドライバー(タクシー・ハイヤー)は、手待ち時間の割合が32.0%を占める。仕事の負荷も高くない。一方、OJTの機会は多くない。リアルタイムで乗車希望を把握するデバイスを活用するなどして手待ち時間を削減するとともに、輸送以外のサービスの提供や安全教育・運転スキルの向上なども望まれる。

⑤教育訓練が長時間労働を促進している側面を鑑みて、教育訓練の在り方を見直すこと
・医薬品営業、保険営業は、手待ち時間の割合がそれぞれ21.1%、15.1%と比較的高い。その一方で、OJTにも積極的である。手待ち時間を教育訓練に充てることで、総労働時間を削減することができるだろう。

久米功一(東洋大学経済学部准教授)

※本稿は「働き方改革の進捗と評価」に掲載されているコラムの転載(一部調整)です。

・本コラムの内容や意見は、全て執筆者の個人的見解であり、所属する組織およびリクルートワークス研究所の見解を示すものではありません。