Works Index 2019同一個人における変化

ここまで、日本の働き方の全体像を通観してきたが、次に2018年、2019年の2回の調査に継続して回答した人を対象に、同一個人における変化に着目した2つの分析を紹介する。

【分析1】Works Indexの上昇はなにを意味するのか

Works Indexは、個人が生き生きと働き続けられる状況を理想に作られた指標である(5ページ参照)。ここ数年において、Works Indexの指標自体は上昇傾向にあるが、果たして、実際に個人が生き生きと働ける状態に変化しているのか。同一個人における変化をみることで、その状況を確認したい。

この1年間でWorks Indexの水準が上昇した人と上昇していない人について、新たに生き生きと働けるようになった人の割合をみると、すべてのIndexにおいて、上昇した人の方がその割合は高い図表4-1 。新たに仕事もしくは生活に満足するようになった人の割合をみても、やはり上昇した人の方がその割合は高い。Works Indexが上昇した人は、仕事や生活に満足するようになり、生き生きと働けるようになっていることが確認できた。

図表4-1 新たに生き生きと働けるようになった、
仕事もしくは生活に満足するようになった割合(Indexの変化別)
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1 IndexⅠ「就業の安定」 I ndexⅡ「生計の自立」 I ndexⅢ「ワークライフバランス」 I ndex Ⅳ「学習・訓練」 IndexⅤ「ディーセントワーク」 
2「 新たに生き生きと働けるようになった」とは、「生き生きと働くことができた」の項目に対して、「新たに仕事に満足するようになった」とは「仕事そのものに満足していた」の項目に対して、2018年に「あてはまらない」「どちらかというとあてはまらない」「どちらともいえない」と回答し、2019年に「あてはまる」「どちらかというとあてはまる」と回答した場合を指す。「新たに生活に満足するようになった」とは「生活全般についてどの程度満足していたのか」の項目に対して、2018年に「不満であった」「どちらかというと不満であった」「どちらともいえない」と回答し、2019年に「満足していた」「まあ満足していた」と回答した場合を指す。

【分析2】女性の働き方の変化の実態

総務省統計局「労働力調査」によると、2019年の女性の就業者数は2992万人であり、前年から46万人増えている(男性は3773万人で16万人の増加である)。女性は、結婚や出産を機に仕事を辞めるケースがあるため、一般的にM字カーブと称されるように、2544歳において労働力率が下がることが知られてきた。しかし近年、結婚や出産後も継続して働く女性が増えていることを受け、M字カーブの底は上昇し、台形に近づいている。女性の働き方は年々変化している。Works Indexでも、この1年間でIndexⅠ「就業の安定」とIndexⅡ「生計の自立」の水準はともに上昇し、なかでも女性の水準上昇は目立つものであった。この分析では、継続して回答しているサンプルを用いて、2544歳の女性の働き方が、この1年間でどのように変化したのか、その実態を概観したい。

特に着目したい働き方の変化は2つある。新たに働けるようになった人はどれだけいるのか。そして、働き続ける人の就業は安定したのか。就業の安定については、雇用継続の可能性が高い正規雇用に移行した割合や無期契約雇用に転換した割合を確認する。また、就業の安定が促進されることで、これまでよりも長く働く人が増えると考えられるため、短時間(週35時間未満)で働いていた女性について、この1年間の週労働時間の変化もみていく。

まず、新たに働けるようになった人はどれだけいるのかをみてみよう。201812月時点に働いていなかった人のうち、201912月時点で働いている人の割合(非就業就業)は、21.6%である(図表4-2)。男性2544歳の31.8%よりは低いものの、5人に1人の割合で、翌年に新たに働くようになっている。また、継続して働いている人の割合(就業就業)をみると、女性で94.6%と、男性(98.4%)には届かないものの、高水準といえるだろう。

図表4-2 就業非就業の移動(25-44歳の男女別)
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次に働き続ける人の就業は安定したのかをみていこう。2019年の1年間に転職した人を対象に、201812月時点に非正規雇用者として働いていた人のうち、201912月時点で正規雇用者として働いている人の割合をみると、14.4%であった(図表4-3)。さらに、無期転換ルールの適用者(20134月までに現在の会社に入社した者)を対象に、有期契約雇用から無期契約雇用へ転換した人の割合をみると、28.3%と3割近くにのぼる。男性の割合(正規移行割合26.9%、無期転換割合42.7%)には及ばないものの、女性においても一定数が転換しているという実態が確認できた。

図表4-3 正規移行と無期転換の割合(25-44歳の男女別)
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最後に、短時間(週35時間未満)で働いていた女性2544歳について、この1年間の労働時間の変化をみてみる。201812月時点に週20時間未満で働いていた人のうち、201912月時点でも週20時間未満である人の割合は54.2%、週2034時間になった人の割合は16.2%であり、約7割(54.2%+16.2%=70.4%)は引き続き35時間未満で働いている(図表4-4)。一方で、フルタイム勤務相当(週3544時間)になった人の割合をみると、12.4%1割を超えている。201812月時点に週2034時間で働いていた人でも、週3544時間になった人は13.1%1割を超えている。労働時間においても、この1年間で、フルタイムという安定的な働き方に変化した人が一定数いることがわかる。一方で、201812月時点に週2034時間で働いていた人のうち、201912月時点に週20時間未満へと労働時間を減らした割合も14.6%1割を超えている。仕事と家庭生活の両立のためや、103万円の壁のような税制などの理由によって、労働時間を調整している人は、まだまだ一定数いるということだろう。

図表4-4 週労働時間の変化(25-44歳の男女別)
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M字カーブの底にあたる女性2544歳のこの1年間の働き方の変化をみてみると、男性の水準には及ばないながらも、新たに働くようになった人が2割いること、9割以上が継続して働いていること、正規移行や無期転換が一定数いることなど、より安定した働き方へ変化する女性の様子がうかがえた。働き方改革においても、女性の第一子出産離職率や課長職比率など、女性が活躍しやすい環境整備のためのKPIが掲げられており、政府と企業が一丸となって取り組んできた成果が徐々に表れてきた可能性も示唆される。すべての女性が生涯を通じて働きたいときに安心して働く選択ができるよう、この波がこれからも続いていくことに期待したい。

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