人材マネジメント調査「数字で読み解く人材マネジメント」人事課題の4つのボトルネック

企業の人事担当者が直面する課題は、実に多様で複雑だ。何から着手すべきか、優先順位づけが極めて難しい。その背景には、人事課題は相互に複雑に絡み合い、構造化しにくいことがある。そこで、本コラムでは、「Works 人材マネジメント調査」で示された26の人事課題の項目間の関係を可視化してみよう。

図1は、回答企業176社の人事部門が認識している人事課題と特に重要な課題をまとめたものである。「次世代リーダーの育成」(94.3%)、「ダイバーシティ(女性等)の推進」(92.0%)、「新卒採用力の強化」(88.6%)、「メンタルヘルスへの対応」(86.9%)の順に高い。これらは、日々見聞きすることも多い、日本企業に共通する課題といえる。

重要度で見ると、「次世代リーダーの育成」(46.0%)、「ダイバーシティ(女性等)の推進」(43.2%)、「グローバル人材の育成」(30.1%)の順となる。これらは、事業戦略とも密接に関わる課題であり、それゆえ重要であると認識されていることがうかがえる。

図1 認識している人事課題と特に重要な課題(3つまで)

しかし、人事課題の構造を把握するためには、個別課題に対する認識や重要度だけでなく、人事課題間の関係にも着目する必要がある。そこで、図2に、それぞれの人事課題間の相関関係を示した。まず、つながり(ties)に注目してみよう。赤い線は相関係数が0.4を超えており、相対的に見て関係が深い。たとえば、「グローバル人材の育成-0.53-外国人の活用」、「ミドルの活性化-0.50-組織の年齢構成のゆがみの矯正」となっている。これらは2つの人事課題を1つのセットとして、相乗効果を図りながら対処すべきであることを示唆している。

次に、結節点(nodes)を見てみよう。つながりの結節点となっている人事課題とそれに相関のある人事課題の数を挙げると、「事業創造人材の発掘」7つ、「企業理念の浸透」6つ、「人事の組織体制や機能の見直し」5つ、「外国人の活用」5つの順で多い。これら4つは、認識度や重要度こそ上位ではないものの、複数の人事課題の底流にある、大玉の人事課題である。ここを動かせば、他の人事課題の解決に波及する、いわばボトルネックといえる。

【まとめ】

さまざまな人事課題について、認識、重要度、つながり、結節点の観点から整理した。目前で対応している人事課題の底流には、4つのボトルネック(事業創造人材の発掘、企業理念の浸透、人事の組織体制や機能の見直し、外国人の活用)がある。これらへの対処が、多様で複雑な人事課題の円滑な解決に資することが示唆された。

図2 認識している人事課題間の相関
注)統計的に有意なつながりがあるものから、相関が比較的高いもの(0.35以上)を抽出して図示した。線の数値は統計的に有意な相関係数、項目の円の大きさは、認識度(%)を表す。