3.学習・実習と雇用との連続性

3.学習・実習と雇用との連続性

職員の大半はインターンシップを通じて採用。インターンシップ生の受け入れに行政機関も積極的に関与。インターンシップ先との雇用契約が入学資格になっている学校もある

 

 ポール・エリックゼエステッド・クリステンセン氏
<ポール・エリック・ゼエステッド・クリステンセン氏 プロフィール> 
1984年オークス大学政治学部卒業、ホルメゴー市に入庁。ストーストロム県庁などを経て、2004年にネストベ市に入庁。人事部長としては9年目。公務員生活ではHR部門が長く、HRのキャリアを買われてほかの自治体にヘッドハンティングされたこともある。デンマークでは公務員でも専門職としてほかの自治体に転職するのは一般的だという。

 

 

 

 

 イーナ・シダー・イェンセン氏<イーナ・シダー・イェンセン氏 プロフィール> 
2007年高等学校卒業後、4年間動物病院で会計業務に携わったあとに、ネストベ市のインターンシップ生の採用試験に合格し、2011年にジーランド・ビジネス・カレッジに入学。3歳の子どもを持つ母親。

 



 
 デンマークでは企業インターンシップは採用に直結しているため、インターンシップ生採用の倍率は数百倍に及ぶケースも珍しくない。デンマーク国立社会研究所のモーナ・ラーセン氏は、「民間企業のインターンシップ先不足を補うために、公的機関が場の提供を積極的に行っている」とデンマークの特徴を説明する。
 首都コペンハーゲン近郊にあるネストべ市。人口約8万人の自治体のHR部長を務めるポール・エリック・ゼエステッド・クリステンセン氏は、「採用される職員の実に70%以上はインターンシップ経験者である」と言う。
 自治体に関係してサービスを提供する職種、たとえば、行政職員、教員、保育士、介護士などの教育課程は現場経験を積むことを前提にしている。このため、ほとんどの人が必然的にインターンシップを経験することになる。
 ただし、インターンシップの門戸は民間企業同様に狭く、ネストべ市のHR部門の場合、7人の採用枠に約300人が応募した。採用は、市として一括採用するのではなく、セクションごとに空席が生じると穴埋めをするという形だ。
 インターンシップ生は、必ずしもインターンシップ先の自治体に就職するわけではない。「ネストべ市で実習を行った学生がほかの公的機関に就職したり、さらに行政管理の修士号を取得するため大学院に進学するケースもある」とクリステンセン氏は説明する。

 

 

 

 


 
インターンシップ先を見つけることが入学要件 


 イーナ・シダー・イェンセン氏は、
ネストべ市のHR部門で実習するインターンシップ生。現在、彼女の通う短期大学の行政コースは、入学前にインターンシップ先と雇用契約を結んでからでないと入学できない。  
「学校に入学した日がネストべ市役所への初の出勤日。実際に、学校に通学したのはそれから3カ月後」だと彼女は言う。
 彼女の所属する短期大学の行政コースの教育課程は、2年のうち、4分の3が現場実習。勤務しながら通学するということはない。勤務しているか、学業に専念しているかのどちらかである。
 イェンセン氏は、週37時間フルタイムで働き、25歳以上の報酬基準である月額1万8900DKK(約34万円)の報酬を受け取っている。
仕事の内容は、高齢者福祉施設の
雇用関係の手続き、給与の支払いなど事務的な作業だ。この働きぶりが認められ、1年間の有期雇用ではあるが、ネストベ市の人事部に就職できることが決まった。
その先も、ネストベ市に就職でき
るかはわからない。しかし、イェンセン氏は「仕事を通じて知識と経験を積むことは必ず職探しにプラスになる」と確信している。
 スキルを積めば必ず仕事が見つかる社会が、ここにはあるからだ。



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