Section2:若者たちに起こる価値観のシフトとは?

Section2:若者たちに起こる価値観のシフトとは?

若者たちが、国を超えて知恵やアイデアを交換する世界経済フォーラム(ダボス会議)によって選出されたグローバル・シェイパーズ。キュレーター(代表)の吉岡氏に、彼らの志向や行動特性に、若い才能たちと出会い、協業するヒントを聞いた。

 

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◇吉岡利代氏(グローバル・シェイパーズ、キュレーター)

 

Yoshioka Riyo_大学卒業後、外資系銀行、国連難民高等弁務官事務所駐日事務所を経て、2009年4月より、国際人権NGOヒューマン・ライツ・ウォッチ東京オフィスの創設メンバーとなった。グローバル・シェイパーズは世界経済フォーラム(ダボス会議)によって選出された20代~30代の若手リーダー。志と起業家精神を持ち、将来の活躍が期待される政治家、起業家、NPOのリーダーなどが集う。世界約230都市に「ハブ」があり、吉岡氏は現在のキュレーターである。

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  聞き手 中竹竜二氏(日本ラグビーフットボール協会コーチングディレクター)

 

 

 

若者が社会の課題に対して挑戦できる環境を作る

 

中竹 まず、グローバル・シェイパーズについて教えてください。

 

吉岡 世界経済フォーラム(ダボス会議)という、国際経済の未来を議論する場に、若者を入れていこうということで、各国の社会変革に取り組むために選ばれたのがグローバル・シェイパーズです。実際の活動は、世界経済フォーラムに参加するほか、各国のHUBと呼ばれる拠点をつなぎ、ローカルのプロジェクトを推進するといったことをしています。

 

中竹 吉岡さんがキュレーターを務める東京HUBは、どんなことをミッションにしているんですか。

 

吉岡 私たちは、若者が元気になり、社会の課題に対して、果敢に挑戦できる環境を一緒に作っていくことをミッションにしています。

 そのために、若者同士という同世代とのつながりはもちろん、私たちの少し上のヤング・グローバル・リーダーズの方々や、その上のシニア世代の方々、そして世界のHUBとのつながりをとても大切にしています。

 

中竹 具体的に、そこでどんなことが起こっているのか、教えてください。

 

吉岡 このコミュニティに入ってから、世界のいろいろな仲間とつながっている感覚があります。常にネットやスカイプで世界にいる仲間と会話をしたり、ともにプロジェクトを進めていたりしています。

 グローバル・シェイパーズの仲間の1人が、こんなことを言っていました。「こうしたことは、国をまたいでいるにもかかわらず、ノーコスト。究極にフラットな、国境のない世界が近づいてきているんだなと思う。そして何より、それが心地いいし、もっと広がっていってくれたら」と。これには、私も共感します。

 

中竹 そういう環境で切磋琢磨した若者が、日本のあらゆる場所で活躍するのが楽しみですね。

 

 

 

 

「企業に就職」は優秀な学生にとって一選択肢にすぎない

 

中竹 ただ、残念ながら、企業のなかではそういう若者が活躍できる場が少ないように思います。そのために、大手企業は何を変えなければならないのでしょうか。

 

吉岡 たとえば、グローバル・シェイパーズのような社外活動に対して、「そうなんだ」と理解をしてもらいたいですね。隠していることは、お互いにとって無駄なことだと思います。

 

中竹 自分がやっていることをオープンにできれば、働いている企業にもフィードバックできるということですね。そして、そうした組織は、若者にとって魅力的かもしれませんね。

 

吉岡 優秀な女子学生から、よく相談を受けます。彼女たちは国際的に活躍したいという志向が強いのです。そうした女子学生は一般企業に就職するか、大学院に進むか、留学するか悩みます。つまり、一般企業への就職が一選択肢でしかなくなっているということです。そして、企業という選択肢を選ぶにしても、留学して数カ月間遅れてしまった学生は、フレキシブルな採用をしている外資系を選んだりしているようです。

 

中竹 そうすると、日本企業は採用のあり方も、組織のあり方も見直したほうがいいということですね。日本企業ももちろん、優秀な若者を採用したいと思っています。皆さんは、優秀な仲間をどうやって増やしているんでしょうか。

 

 

 

 

一度知ってしまったら、動かずにはいられない

 

吉岡 国内では、仲間が仲間を増やしている感じですね。私たちが主催するイベントには、共感してくれる学生を呼ぶようにしています。

 

中竹 違う世界を知って、「火が点く」学生がいるということですね。そういう意味では、企業のなかにも、才能がないのではなく、「点火」していないだけの人材がいるかもしれません。

 

吉岡 そういう意味では、「点火」させるようなリアルな経験が必要かもしれません。アフリカに行って、現地の貧困を見たり、同様に中東、中国、東南アジアでそれぞれの国の課題を目の当たりにした人がいる。そういう事実を一度知ってしまうと、動かずにはいられない。そんな風になるんです。自分の世界で幸せに生きているだけではダメで、何とかしなければ、と。もう走り始めちゃったら止まらない、というように。

 1990年代に育った世代は、景気がいい状態を味わったことがありません。そして気候変動も世界レベルで起こっているという事実を多感な時期に知りました。それだけに、経済的な豊かさだけに美学を感じないのです。

 そうした若者たちは事業の利益だけを求めることがすべてではないことを、理解してもらえたら、と思うのです。

 

中竹 すると、草食に見えても、草食ではない、と。

 

吉岡 そうですね。一人ひとりに向き合って、1枚、皮をめくってほしいです。企業の前では、当たり障りのない姿を見せがちですが、実は強い思いを持っていたり、やりたいことがあったりします。対話によって、「本当はこれをやりたいんです」「こういう形で貢献したいんです」という本音が出てくるのではないでしょうか。

 

 

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