Section1:多面的に活躍するスーパーIT高校生

Tehu氏は、ITを軸に多面的に活躍する異才である。彼を有名にしたのは14歳のときに公開したiPhoneアプリ「健康計算機」。その後、プログラマとしてのみならず、プロデューサー、クリエイターとして活躍の場を広いる。そんなTehu氏が目指す“世界”とは?

 

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Tehu氏(私立灘高等学校3年生)

 

Tehu_1995年生まれ。私立灘中学校を経て、現在、灘高校の3年生。幼少時からプログラミングに興味を持ち、2009年、14歳のときにiPhoneアプリ「健康計算機」を公開。ダウンロード数が無料アプリで世界第3位となり、スーパーIT高校生として有名に。2011年の東日本大震災直後には、「放射能計算機」アプリを開発。また、2010年からUstreamで「Tehuのオールナイトニホン」を放送開始。米アップルの新製品記者発表を同時通訳する番組を定期的に放送し、人気を集める。灘高校の学生5人組「なだいろクローバーZ」などのプロデュースも手がける。現在、クリエイターとして多くの企業のプロジェクトに参加するほか、講演や雑誌連載など多岐にわたって活動。日本語、英語、中国語を話す。

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  聞き手 中竹竜二氏(日本ラグビーフットボール協会コーチングディレクター)

 

 

 

 「失敗する理由」ばかりを探している違和感

 

中竹 僕がTehuくんのインタビューをあるメディアで読んで、とても衝撃を受けたのは、「自信に根拠っているんですか?」という言葉でした。未来に何かをしようと思うとき、不安なのは当たり前だし、どんな人でも確実だなんて言えるわけがない。なのになぜ、自信に根拠が必要なのか、と言いたいことが僕自身、多くあったんです。

 

Tehu 僕のなかにはまず、IT業界に対する不満がありました。僕は中学2年生のときから本格的にIT業界に飛び込んだんですが、いちばんイノベーションが起きやすいイメージがあるIT業界ですら、考え方が凝り固まっていて、多くの人が「失敗する理由」ばかりを探している気がしました。そこに、とても大きな違和感を持ったんです。

 

中竹 主に大人に対してですか。

 

Tehu 灘中学校の同級生に対しても、同じ感覚はありました。

 僕自身は灘中に入ったころ、はじめは研究者を目指そうと思っていました。でも、灘中にはすさまじくできる同級生がいるんですよ。だから僕は自分には何も取り得がないように思えて、何ができるか必死に探して、探して、探して。そうやってITやデザインという分野を見つけたんです。

 じゃあ、ほかの僕と同じように勉強はそこそこできるけど、得意分野がきちんと見つかっていない同級生はどうだったか。探そうともしないし、やってもうまくいかないと言う。大人と同じように、できない言い訳を探しているんです。せっかく優秀な人が多いのに、残念だなあと思っていました。

 

中竹 Tehuくんのように、プログラムを書いている同世代も多いでしょう。そういう人も同じですか。

 

Tehu プログラムを書いて、ちょっと有名になった同世代もいる。IT業界は若者が引っ張っている、なんて、もてはやす人たちもいる。でも、現実的には単にプログラムを書いているだけで、それによって何をしたいかを問いかけても、答えは返ってきません。

 そういう同世代は、僕がITからデザイン、プロデュースに展開するようになったことを批判したりします。「ITに集中していない」と。

 

中竹 彼らにしてみると、ポリシーなく広げているように見えるんでしょうか。

 

Tehu 彼らはITの世界を突き詰めていくのが“正義”だと思っているんです。

 

中竹 日本人の価値観として、1つのことに集中する、というのがありますからね。それが悪いとは言いませんが、その他のあり方も認めたほうがいいですよね。

 

Tehu そこは日本企業も、同じような側面を持っていると思います。僕は企業のプロジェクトに入って仕事をすることもけっこうあるのですが、「我々はイノベーションを起こさなければならない」と建前上、言います。しかし、実際には起こせていません。その理由は、同じように「できない理由」を探しているからです。そういう企業にいて、めちゃくちゃ面白くて何でもやるぞ、みたいな人は会社に辟易して、ベンチャーに移っていったりしていますね。口で「できる」と言っても、結局、何もしない。それがいちばんの問題だと思います。

 

 

 

 

心の奥底から人を感動させ、笑顔を作りたい

 

中竹 Tehuくんは常に何かを探している感じです。そして、ITの世界はもちろん、リアルなビジネスでも、既に成果を出して、生きがいも見つけている。一般的に見ると、とてもそれは早いと思う。その原動力になっているものは何でしょうか。

 

Tehu 両親の影響が強いかもしれません。両親は中国人。中国からやってきてけっこう苦労して、今、それなりの生活ができています。そんな両親に育てられて、常に上を目指すようになりました。ハングリーさは根底にありますね。

 だから、1番になりたいし、何かやるなら表舞台に立ちたい。負けず嫌いなんですよ(笑)。たとえば同年代の芸能人。「ももクロ」とか。僕は大好きなんだけど、ライブを観に行くと楽しいけど超くやしい。同じ17年間、18年間生きてきて、あっちは日産スタジアムに7万人集めるんですよ。僕が都内で講演して集められるのは200人くらい。どこで差がついたんだろうと真剣に考えます。もしかしたら、普通はそんなことを考えないのかもしれないですし、分野が違うから仕方ないんですが、僕にとっては非常に大きな問題で、常にそこを分析しながら、逆にその悔しさをバネにして突っ走っています。

 

中竹 それがモチベーションとなって、Tehuくんは常に何かを探しているんですね。

 

Tehu そうですね。でも、それだけじゃない。僕にとっては、人の笑顔がいちばん大きなテーマなんです。いかに笑顔を作るか。

 人の心は、縦に長いんだと思う。心の表層で笑いを取れるのがブラックジョーク。それが「お笑い」になるとちょっと深くなる。そして、デザインがその下、そして演劇。クラシック音楽、ルネサンス絵画となると、心のかなり奥深いところから感動が生み出されているんだと思います。

 僕のテーマは、デジタルを使って、人が心の奥底から感動し、笑顔になるものを作ること。今のところデジタルを使った笑顔や幸せの演出は、すごく表層でしかできていない。デジタルの最新技術をちょっと削り取って、ちょっと混ぜ合わせて塗っている感じで、全然面白くないし、心に残らない。

 

中竹 なぜ、また、いつごろからそんな風に考えるようになったんですか?

 

Tehu 2年前くらいから。一時期、音楽ライブにハマったことがありました。ポップスもジャズも、ロックも、クラシックも。いろんなライブに通い詰めていた時期がありまして。そのとき、人の心を動かすのは何か、ライブはなぜ感動するのかをかなり考えました。でも、どこかまだまだ物足りなさがありました。だから、そのころ、僕はライブの演出家になりたいと思っていたんです。

 

中竹 作る側に回りたいと。

 

 

 

 

100年先までつながる新しい分野で勝負する

 

Tehu 物足りなさはあったものの、ライブは日本人が作り上げる「デザイン」のなかでは最も優秀だと思いました。

 日本人はおそらく芸術家すぎる。職人気質と言うけれど、そこには自己表現が常に付いてまわる。相手の意思を反映して作るのがデザイナーだとすれば、それは苦手なはず。いくらセンスがよくても、“我々の感じ”を出しすぎるから、お客さんに受け入れてもらえないんです。売りっぱなしになってしまう家電やコンピュータなど、大量生産品は特にそうなりやすくて、相手の意思を常に問うデザインが得意な米国にやられてしまいます。

 でも、ライブは目の前にお客さんがいます。だからちゃんとお客さんを見て発信しないと、お客さんの反応がなくなって、ダメなライブになってしまいます。そんな現実を突き付けられているから、「お客さんを意識する」ことをきちんと学んで、ライブは優秀な「デザイン」として完成したのでしょう。

 

中竹 そういう風に意識を変えれば、「日本人はできる」ということですか。

 

Tehu 僕もまだ手探りですけど、できる、いけるという確信はあります。

 

中竹 それは、既にある分野でですか?

 

Tehu 今、ない分野ですね。基本的に敵のいる分野では勝負しないと決めています。やっぱりコンピュータは米国のもので、米国生まれのものは成功する。日本企業は太刀打ちできない。非効率すぎるし、新しい分野でロケットスタートを切れば、それが100年、200年先まで日本のお家芸になる。プログラムも、アートも全部踏まえて1つの分野を作ろうとしています。

 プログラマとして、僕は行き詰まった時期がありました。プログラマとして本当に優秀な友だちが2人いて、彼らには絶対勝てないと思いました。だから僕は、いろんな領域を広くカバーして、統合する立場に立ちたいんです。広く浅く、ではなく、広く中程度に、みたいな。

 

中竹 プログラマやクリエイターの枠を超える、ということですか。

 

Tehu 僕自身、「モノづくり」に自ら携わることが多いんですが、最終的にはディレクションが自分の役割になるでしょう。オールラウンドでわかっている自分が、多くの人を引っ張って、新しい領域を作ることが重要だから。僕は、日本をもっと楽しくしたい。純粋に日本が好きなんです。

 僕は自分が主人公の、ハッピーエンドの小説を生きている。でも、そこに登場する人物全員が笑顔になるストーリーにしたいんです。そして、それはできると思っています。

 

 

 

自分が頑張れば、世界は絶対うまくいく

 

中竹 「できる」と思っているわけですよね。冒頭で言っていたように、たとえ根拠がなくても。

 

Tehu もちろん、明確な根拠はありません。でもゼロではなくて、ちょっとだけある。0.1くらい。その根拠は、「僕だから」。僕は世界は自分中心に回っていると思っているし、その世界は自分が頑張ったら絶対にうまくいくし、みんながハッピーになる、という意識を常に持つようにしています。

 

中竹 つまり、ただ思っているのではなくて、自分がやるかどうかだと。やれば、自分中心に世界は回って、人も幸せになるということですね。

 

Tehu 今は周りから声をかけていただいて、その人たちの期待している以上のものをいかに出すか、という意識で取り組んでいます。そうすると、僕も周りもハッピーになる。

 

中竹 期待以上って、たとえばどんなことですか。

 

Tehu ある会社の製品とアプリを連携させるということで、僕がアドバイザーに入りました。案が5つくらいあって、「どうですか?」と言われて。相手は僕にただ選んでほしいだけだったはずなんですが、僕は全部ボツにしました(笑)。その場でラフスケッチを書いて提案したら、その案が通って、結果、みんなが喜んでくれました。

 

中竹 やっぱり、みんなのハッピーが大事なんですね。

 

Tehu そうです。自分主体の物語だけれど、自分だけが登場人物じゃない。あくまでも他者の力がないとうまくいかないのは、これまで出会った方々から教えていただきましたから。

 「笑おうよ」と言ったら、みんなが笑える世界が理想です。日本では笑顔になれる人が多いけれど、戦争がある国に行ったら笑えない人が格段に多くなる。だから、まずは平和にしなければなりません。戦争は絶対やってはいけない。そして、僕は日本に住んで世界の人をつないでさまざまな関係性を増やして、自分の周りの網をちょっとずつ濃くしていけば、それが平和につながっていくし、幸せに笑える人が増えていくと思います。

 

 

 

 

年を重ねて現場が見えなくなる危機感は、もう持っている

 

中竹 Tehuくんは、日本は「いける」と思っています。でも、現状はそうではない。そのギャップを埋めていくために、皆、どうすべきだと思いますか。

 

Tehu これは、結局、前で話したことに戻ります。シンプルに「なぜやらない? とりあえず、やれ」でしょうか。

 同級生でも、大人でも、企業でもそう。イノベーションの話もそうですが、その手前で、業績不振で苦しんでいる企業がたくさんあります。でも、僕から見れば、やれることをやっていないだけ。たとえば、低価格路線の新興国の企業に押されて苦しんでいる企業がある。低価格路線は利益を圧迫するとかなんとか言っているけれど、僕から言わせれば「単にプライドの問題なんじゃないですか?」と言いたくなる。やれることはあるのにやっていない。すごい技術者がたくさんいるのに、宝の持ち腐れのように見えて仕方がない。

 

中竹 たとえば海外の現地法人なんかは、現場がけっこう頑張っていますよね。国内でも現場の最前線には、面白い人も技術も多い。

 

Tehu そうですね。どんな企業でも現場の人間はわかっていると思う。経験を重ねて、上のほうに行くと、今現場で起こっていることが見えなくなる。

 これは、僕は他人事と思っていません。僕は確かに今は若いけれど、必ず年を取ります。年を重ねれば老害になる。生きた時代が違うから、若い人と考え方が違うのは当たり前ですよね。そのときどうやって分かり合っていくのかを、今のうちから僕は考えています。

 今、上の世代を見て老害だと騒いでいる若者はあまり好きじゃなくて、みんな老害になることをわかったうえで、解決法を考えていかなければなりません。

 

 

 

 

「もし、今日が自分にとって最後の日なら」

 

中竹 今回、多くの若者を取材して、Tehuくんのように社会的使命感をきちんと持っている人が多いことを実感しました。でも、残念ながら日本ではこれが大きなムーブメントになっていません。

 僕はその理由は、「変えたくない人が多いから」だと思っています。Tehuくんはどう思いますか。

 

Tehu 僕は、実はもう若者たちはSNSを使って、別の政府、「第二日本国」を作ったと思っています。でももちろん、第一日本国は国連に承認された国で、第二日本国は承認されていないので、権限も何もない。でも、第二日本国が力を持たないのは、僕は「若者に対して手を差し伸べろ」と言っているだけの若者に責任があると思っています。それだけでは絶対に変わりません。

 だから、僕は直接的に第一日本国に属する大人たちにどんどん意見を言っている。耳を傾けてくれる人もいます。「東洋経済オンライン」に連載を持っているのもそういう理由です。そこで刺激を受けてくれる30代、40代もたくさんいます。そうしないと、第二日本国はいつまでも陽の目を見ないし、いつの間にかみんな第一日本国に引っ越しちゃうから。

 

中竹 いちばん問いかけたいことは何ですか。

 

Tehu 僕は何も考えない人たちが嫌いなんです。それを変えていきたい。そうしないと、日本が変わらないから。本当は、全員に会って「今、何のために、何をやっているんですか?」って聞いて、目的をあまりに考えてなかったら、「で?」って言いたい。「何のためにやっているのか」明確でなければ、「で?」には答えられないんです。それは能力の問題ではなくて、どんな仕事をやっていたとしても、自分自身に常に「で?(何を何のためにやりたいの?)」と自問自答していれば、必ず答えが出てくるはずなんです。

「で?」は、スティーブ・ジョブズの「もし今日が人生最後の1日だったら、自分のやっていることは本当にやるべきことなのだろうか」という言葉につながっていると思っています。もし、自分にとって、自分の会社にとって今日が最後の日なら、何をやるべきだろうか。それをみんなが考えるようになれば、日本は確実に変わると思います。