はじめに:若い才能は大手企業を向いていない

なぜ、「若い才能と出会う」という企画を立案するにいたったのか。企画の概要や構成について説明している。まずはこのページをご一読いただきたい。

 

 

 

 

 上の世代とは異なる強い欲求

 

 Works120号(2013年10月発行)の本誌特集は、「若い才能に出会う」である。「若い才能」たちから聞いた話があまりに興味深く、もっと多くを伝えたかったのだが、紙幅に限りがあったため、このWebサイトに“スピンアウト”した。

 このWeb版では、それぞれのインタビュー対象者の活動、考え方、知見をよりリアルな「生の声」として伝えるため、すべてをロングインタビュー形式とした。本誌をお読みいただいた方も、このWeb版により詳しく掲載したので、さらに理解を深めるためにご一読いただきたい。

 

 そもそもの私たちの問題意識をあらためて書いておく。

 世の若者論や人事の声に耳を傾けると、若者の「草食ぶり」が強調される。本特集では、こうした一般論はさておき、「若い才能」の活動や価値観にフォーカスした。きっかけの1つは、監修をお願いした日本ラグビーフットボール協会コーチングディレクターとして若手育成に携わる中竹竜二氏の「すごい若者が周りに増えてきた」という一言だった。「彼らは草食ではない。希求するものが上の世代とは違うだけで、強い欲求がそこにある」と。

 

ちょうど同じころに出会った『いつか、すべての子供たちに』(ウェンディ・コップ著、東方雅美訳、英治出版、2009年)の一節が、その中竹氏の言葉と結び付いた。

 著者であるコップ氏は、米国でティーチ・フォー・アメリカを、大学在学中に立ち上げた。ティーチ・フォー・アメリカは米国内の卒業生を、大学卒業から2年間、国内各地の教育困難地域にある学校に常勤講師として赴任させるプログラムを実施するNPOであり、全米の学生の就職ランキングでは、常に高い位置にいる。

 本書の中に、下記のような一節がある。

 

 「卒業後は何をすればいいのだろう。(中略)21年の人生で最大の決断を前にして、私は自分が何をやりたいのか、まったくわからなかった。(中略)私が探していたのは、自分のエネルギーを注ぎ込める場所だった。これまでさまざまな学生組織で取り組んできたような重要な責任を与えてくれる場所がほしい。それも10年後や20年後ではなく、いますぐにほしい。そしてなによりも、私は世界を本当に変えるような何かに取り組みたかった。ただ、それがいったい何なのかはわからなかった。

 私が通っていたプリンストン大学では、4年生のほぼ全員が2年間の企業トレーニングプログラムに応募しているようだった。(中略)私が知っている人のほとんどは、死ぬほどお金儲けをしたいからプログラムに応募したのではなかった(中略)彼らはただ、ほかに何をすればいいかわからなかったのだ」

 

 こういう若者が、もしかしたら日本にも増えてきているのかもしれない、と思った。

 今回、登場するのは、社会に対して一石を投じ、その結果、何らかの評価を得た若者たちである。彼らの希求するものは、確かに前の世代とは大きく違っていた。

 

 

 

 

コトを起こそうとする若者を視界の外に置いていいか

 

 そして取材してわかったことの1つに、彼らは、強い使命感や職業観を既に持っていることがある。だからこそ、ある種の「扱いにくさ」も感じた。

 日本企業は、新卒で「地頭」がよく、志望の度合いが高い学生を採用し、入社後に育成するという手法をとってきた。今回取材した面々のような尖った若者に対しては、「うちの会社には合わない」と避けてきた。しかし、激変する市場に対峙する今、自律的にコトを起こそうとする彼らのような人材を、本当に視界の外に置いていいのだろうか。

 

 結論を急げば、若い才能の多くは大手企業のほうを向いていない。入り口を開けて待つだけでは、彼らは来てくれない。彼らと出会うためにできることは何か。そんな問いに向き合った。

 

 今回、中竹氏が進める人材育成プロジェクトなどでパートナーを務める慶應義塾大学4年生の則俊慶太氏に、制作協力をお願いした。凝り固まった私たち大人の目線に対し、鋭い突っ込みを入れてもらった。

 

 尚、若い才能たちといかに出会うか、どう協業するかという分析と提案は、本誌にまとめた。未読の方は、こちらよりダウンロードし、ご一読いただければと思う。

 

 

入倉由理子(本誌編集部)

 

 

 

 

*本Webサイトの構成

 

Section1:若い才能たちの「僕らが夢中になれること」

若い才能10人のロングインタビューである。彼らの活動やその基盤となる価値観を聞き、若い才能が何に夢中になるのか、どんなことを大切にしているかを考えるきっかけにしてほしい。

 

Section2:若い才能たちとどう出会う? どう協業する?

若い才能たちと協業したり、若い才能を「点火」させることに力を注ぐ4人に、若い才能たちとの出会い方、協業の仕方を聞いた。また、なぜ協業できないのか、海外に飛び出して働く若者の声を聞いた。

 

まとめ:監修者・中竹竜二氏インタビュー

日本ラグビーフットボール協会コーチングディレクターとして若手育成に力を注ぐ中竹竜二氏とともに、全インタビューを通じて見えてきた、若い才能と出会い、協業するために日本企業がすべきことを模索した。

 

Text=入倉由理子  Photo=刑部 友康、平山 諭、和久 六蔵  Illustration=ノグチユミコ

 

*本特集の内容は、2013年9月20日現在のものです。