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1990年代初頭から、多くの企業スポーツチーム(※1)の撤退が報じられている。 ※1企業スポーツとは:企業が組織的に行うスポーツ活動のこと(実業団競技) |
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第4回 NEC
企業スポーツの4つの価値を宣言 1980年代から日本のパソコン市場をけん引してきたNECは、バブル崩壊や急速なグローバル化など、大きな環境変化のなかで業績が悪化。1990年代後半からは、テニス部、女子バスケットボール部など、当時多数所有していたスポーツチームが廃部となった。 「企業スポーツに取り組む目的は、日本のスポーツ界に貢献したいという思いもありましたが、何より社員の一体感の醸成やNECというブランドを広めるためでした。業績が右肩上がりだったころは、スポーツに投資することは、何らかの形で社員に還元できていたと思います。しかし、業績が悪くなれば、スポーツにかかわる費用も見直す必要が出てきます」 と事業支援部・勤労統括マネージャー手塚修一氏は語る。 2003年6月には、全日本実業団対抗駅伝で5年連続上位入賞を果たした男子陸上部の廃部を表明。残るは男女バレーボール部とラグビー部の3チームとなった。 “NECスポーツ後援会”の設立 「強化スポーツ(NECでのスポーツ部の総称)を管轄している事業支援部のなかでは、NECにおいてスポーツという資産が失われるという危機感が生まれました。そこで、残った3チームを存続させるために事業支援部のなかに“NECスポーツ後援会”という後援組織をつくり、NECグループ内での基盤を固めることに重点を置いたのです」(手塚氏)まずは、グループ各社の社員を後援会の加入対象に加え、会員を募集、ボードメンバーには営業部門やグループ会社の幹部を迎え入れた。 さらに、社会貢献活動、特に地域に根差した活動を始めた。例えば、ラグビー部は本拠地である千葉県我孫子市の小学校を中心にしてタグラグビー(※2)教室を開催。女子バレーボール部は、ママさんバレーの指導やスポーツ教室での講演を行い、2005年には女子バレーボール部の本拠地である川崎市からホームタウンスポーツ推進パートナー(※3)の認定を受けている。 こうした活動は、地域に貢献できるだけでなく、企業のイメージアップや、自治体への営業活動を支援することにもつながった。 社内での基盤づくりの一方で、会社への依存を少しでも軽減しようと、社外向けファンクラブを設立、支援してくれる地域の小売店の開拓も進めた。こうしてNECの企業スポーツは社内外で徐々に認知されるようになり、ファンクラブ会員は1万5千人を超えた。 しかし、2008年の世界的な金融危機の影響を受けて、回復基調にあった業績は再び悪化する。2009年5月、NECの企業スポーツのなかで最も古い64年の歴史を持つ男子バレーボール部の休部が発表された。 「理由の一つには、費用対効果の問題があります。最後に残ったラグビー、男女バレーの3チームを全て存続させることが厳しい状況となり、個々のチームの人件費や遠征費などの活動費に見合う結果が残せたかどうかということが争点になりました」(手塚氏) NECのように選手のスポーツ活動が会社業務の一環として行われている場合、試合で高い成績を収めることは重要だ。男子バレーボール部は、Vリーグとその前身の日本リーグで計4度の優勝を飾ったこともあったが、休部発表前の数年間は、下位リーグへの入れ替え戦に出場するなど、以前ほどの勢いはなくなっていた。また、広告媒体が多様化し、バレーボールに限らずスポーツの広告効果が弱くなってきたこともある。 ファンの間で、男子バレーボール部休部中止を求める署名運動が繰り広げられるなか、NECは苦渋の決断を下した。 「コストセンター」から「バリューセンター」へ 男子バレーボール部の休部を受けて、事業支援部では、NECにおける企業スポーツの在り方を再度議論し始めた。たどり着いた結論は「コストセンター(利益を創出しない組織)」から「バリューセンター(価値を創出する組織)」へ。NEC の経営資源になると宣言し、企業スポーツの4つの価値を明確にした。4つの価値とは、“地域社会貢献”“営業支援”“企業広告連携強化”そして“One NECの体現”である。 前述のように企業スポーツは“地域社会貢献”“営業支援”において成果を挙げており、スポーツ部の活動や活躍によってNECブランドを広めることで“企業広告連携強化”も実現していた。以上3つは、これまでの活動の延長線上にあるものだ。 だが、“One NECの体現”は新たな動きともいえるだろう。企業スポーツの従来の目的であり、一定の効果をもたらしていた、社員の一体感の醸成に再度注目したのだ。 「NECは携帯電話やパソコン周辺機器など製品の数も多く、グループ会社も国内だけで100近くあります。事業や会社が違えば風土や文化も全く違う。一時期は分社化を促進したこともありましたが、近年では事業を集中していこうとしています。そのなかで、経営側から『NECグループとして力を発揮するために“One NEC”になろう』というメッセージが発せられています。NECグループ各社の社員が大声で『NEC』と叫ぶ機会は、スポーツの試合でしかありません。強化スポーツは“One NEC”のために、有効な手段であると確信したのです」(手塚氏) 現在は、事業支援部強化スポーツ担当の橋本正吾氏を中心に“One NECの体現”に取り組む。 「NECグループの組織構造も変化しています。まずは強化スポーツのグループ内での認知を高めていく必要がある。そのために、選手をグループ全体、いろいろな部署に所属させています。選手の帰属意識も高まりますし、職場のメンバーも、仕事と競技を両立する選手を応援しようという気持ちになるようです。仕事上できないことは周りでカバーするといったことが自然となされています」(橋本氏) また、経営幹部を招いて本社で選手の激励会を開催したり、グループ会社のイベントに選手が参加して活動を報告するなど、以前はグループが大きいという理由でちゅうちょしていた活動にも意欲的に取り組む。 「NECグループの社員であり、NECグループの選手であることをさまざまな場面で強くメッセージしています」(橋本氏) 2009年秋から始めた、企業スポーツを通じての“One NECの体現”。この1年間で、グループ内での企業スポーツの認知は上がったはずだ。その手応えはある。シーズンの開始は、ラグビーが9月、バレーボールは11月。どれだけの観客を動員することができるか、グループ会社社員の関心を集め、心を一つにすることができるか。効果を試されるときがやってきた。 (2010.09.13) ※2タグラグビーは、楕円球を用いながら、両腰にタグ(リボン)を付けて、タックルの代わりにタグを取り合う競技。 ※3川崎市内を本拠地として日本や世界のトップレベルで活躍するスポーツのチームおよび選手を「ホームタウンスポーツ推進パートナー」に認定することで「川崎」を全国にアピールする。その一方、市内の小学校でのスポーツ教室の講師やトークショー、スポーツイベントへのゲスト参加など、市民との触れ合いを大切にした活動にも積極的に参加し、市内のスポーツをさらに盛り上げていくことを目的としている。川崎市は、川崎市ホームタウンスポーツ推進パートナーの活動に対し、広報その他の方法で活動を支援する。 【協力=早稲田大学スポーツ科学学術大学院 教授 原田宗彦氏】 【Text=湊 美和】 |
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お話を伺った方 |
会社概要 |
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■設立/1899年(明治32年) ■本社所在地/東京都港区 ■事業概要/ITソリューション事業、ネットワークソリューション事業、パーソナルソリューション事業など ■売上高/連結3兆5831億円 単独 1兆9193億円(2010年3月実績) ■従業員数/連結 14万2358人 単独 2万4871人(2010年3月末現在) |
| 手塚修一氏 事業支援部 勤労統括マネージャー |
橋本正吾氏 事業支援部 強化スポーツ担当 |
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