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人材育成は企業にとって重要な戦略の1つだ。社員を育て、より大きな戦力として活用することで利益を生み出す。では、障害のある社員の能力開発はどうなっているのだろうか。 今回は、障害のある社員を、どのように育て戦力化していくかについて考えてみたいと思う。 議論の前提として、障害者雇用促進法と法定雇用率制度の存在を確認しておく。法律は、障害のある人が働く機会を保障している。 |
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第4回 横河ファウンドリー
“適材適所”で、社員の能力を引き出す 横河電機では当時すでに、身体障害や内部障害のある社員で法定雇用率は達成していたが、1998年の法改正で、知的障害者の雇用が義務化されたことに伴って設立した。 「知的障害のある方を実習生として受け入れてみましたが、既存の仕組みのなかでは、彼らの潜在能力を引き出し、活かすことが難しいと思いました。そこで、3年間で黒字にすることを条件に、設立を承認してもらいました」 と、特例子会社設立の提案者であり、その中心メンバーであった箕輪優子氏(現在は横河電機 経営監査本部CSR部環境・社会貢献課)は語る。 そして、実際に設立後3年以内に経営黒字化を達成し、現在では横河電機グループ以外の一般の顧客からの仕事も請け負う。 横河ファウンドリーの成長を支えたのは知的障害や発達障害のある社員であり、社員の持つ能力を最大限生かすために“適材適所”をはじめとして、キャリアアップ、作業環境の効率化に努めた結果だ。 「できる」と信じて職域を開拓する 設立時は、知的障害のある社員6人、管理者1人、実務担当者1人の計8人でスタートした。代表取締役と箕輪氏を含む5人の非常勤役員が事業拡大を図り、横河電機の人事担当者が採用・教育をバックアップした。当初想定していた仕事は、プリント基板への部品のはんだ付けなど、工具を使う作業だった。だが、手先があまり器用ではない社員がいたことから、「精密機器をつくる作業よりも、同じ工具を使って部品を分解する作業の方が向いているかもしれない」と、社内で不要になったパソコンや小さな計測器の解体・分別作業を始めた。 とはいえ、解体・分別作業だけでは黒字化は難しい。ちょうど同じころ、グループ内の生産系子会社が、社員が使用するゴム印作成と製品銘板の設計・製作業務の移管先を探していると知り、手を挙げた。 これらの業務はパソコンを使った作業になるが、この時点では、 横河ファウンドリーの社員ほぼ全員がパソコンを触ったことすらなかった。すぐに全員を対象に、基本的なパソコン操作を説明し、アルファベットの大文字と小文字を家で覚えてくるように指示したところ、2日で覚えてきた。 「Aやaを見て、Aのキーを押すことは簡単にできました。パソコンを操作できるようになった社員は、自分たちの力で仕事を取ってくる、と意欲的になりました」(箕輪氏) その後は、社員証の発行、名刺の作成と職域を広げていった。 それを可能にしたのは、前述の非常勤役員の尽力によるところも大きい。設立時の役員は、横河電機の生産系や営業系、人事系など各部門の責任者が兼務した。役員は、「障害があるからできない」と決め付けず、各管轄の部署からいろいろな仕事を取ってきた。設立当時の毎月の役員会議は、事業拡大の話題が中心だったという。 採用の時点で“適材適所”を考える こうして仕事が増えるごとに、人も増やしていき、現在では25人の知的障害や発達障害のある社員が働く。採用基準も、仕事内容の変化によって変えていった。設立当初の採用では「チャレンジ精神」を最優先していた。 「会社で取り組む事業がまだはっきり決まっていなかったので、何でもやってみたいという意欲のある人が欲しかった」と箕輪氏は語る。 そのために、ラチェットレンチという工具を使って銅線と部品を圧着する試験を実施した。経験したことのない作業を30分間やり続けられたのが、設立時に採用した6人だったのである。 その後は、パソコンを使った作業が業務の中心になったため、採用要件として正確性も求めるようになった。 「求める能力に優先順位をつけました。横河ファウンドリーでは、伝票や注文書に書かれたデータを指定された画面に入力していく仕事がほとんどです。123abcと書いてあるときに、123abcと、見た通りに入力できる力です」(箕輪氏) 当時、適性を見極めるにあたっては、1〜3文字だけ変えたEメールアドレスを左右に並べて違いを探すテストを実施した。また、指示書通り正確にできるかを見るために、折り紙で輪をつくり繋げるという指示書を図解入りで作成した。「@指定の色を5枚選ぶA8等分に折るBはさみで切るC輪を作り、糊で貼りながら輪をつないでいく」。この指示通りにできる人もいたが、小さな輪をつくって繋げていくのではなく、1つの大きな輪を作る人や、そもそも選ぶ色が違う人もいた。部品の配線であれば、色が違えばトラブルにつながってしまう。 試験中は、10人の受験者に3人の試験官がつき、指示書を読むのに時間がかかるのか、はさみで紙を切る作業が上手くできないのか、糊を使って貼る作業が苦手なのかなど、どの作業が得意で、どこにつまずくのかを見た。試験の結果だけではなく、試験の過程で、どの仕事で能力を発揮できるかを観察していたのだ。 「当時は、驚くほど“経験が少ない”応募者が多かった。経験がないから、あるいは慣れていないからできないのかもしれない。潜在能力を引き出し、それを最大限伸ばすのが、人事担当者や管理職の責任です」と箕輪氏は語る。 本気で期待し、どうすれば成長するのかを考える 設立時に採用した6人は、チャレンジ精神こそあったが、自信に欠けるところがあった。声が小さいため、一度で聞き取ってもらえないと深く落ち込んで口を閉ざしてしまう。「新人研修で自分の良いところをお互いに発表するカリキュラムでは、自分に対するネガティブな発言ばかりでした。まずは、自分のことを肯定的に受け止められないと、いくら力があっても成長し続けるのは難しいのではないか、と思いました」(箕輪氏) そこで最初の研修では、いっしょに働く仲間の良いところを書き出すことにした。「○○さんはパソコンの入力が速い」「○○さんは最近笑うようになった」などだ。受け取ったカードは、主語を「私は」に置き換えて全員の前でお互いに発表し合った。 また、OJTによって、できる仕事を増やしていき、成長の度合いを定期的に振り返るようにした。 「『どのようなことができるようになったか』と聞いても、躊躇なく『とくにない』と答えてしまうのです。そこで『入社時はたくさん質問をしていたが、今もそうか』と聞くと『今は質問をしなくても一人でできる』と。それが“できるようになったこと”だと気付いてもらい、自分の成長ぶりを振り返ることで、だんだん自信もついてきました」(箕輪氏) 現在でも、月1回研修を実施している。自分の年間目標設定とそのレビュー、品質意識や顧客意識、コスト意識、時間意識、チームワークなど、学ぶテーマは多様で、横河電機グループの一員として必要なテーマを取り上げている。研修の内容は、社長が毎朝実施している3分間ミーティングでもフォローしている。 技術に関しては、OJTでの習得がほとんどだ。新しい仕事を担うことになり、今まで担っていた仕事を引き継ぐ際にも、障害のある社員同士で教えあい、管理者・実務担当者が必要に応じて補足指導している。 こうして仕事を通じて高めた能力が、社会ではどう評価されるのかを確かめるため、2005年からアビリンピック(*)に参加している。パソコン入力、もしくはオフィスサポートの部で毎年1人は金銀銅賞入賞者を輩出しており、金メダルを取らない限り何度でも挑戦できるとあって、入賞し損ねた社員は何度でもあきらめずにチャレンジしているという。 横河ファウンドリーでは、知的障害や発達障害のある社員が高い意欲をもって、利益を生み出す仕事を担当している。 それを可能にしたのは、現場の管理者やスタッフが、社員は伸びると信じて疑わないからだろう。できることがまだあるはずだと信じて、仕事を任せている。社員がその期待に応えようとすることで能力が高まっているのだ。 (2011.03.02) (*)全国障害者技能競技大会 障害者が技能労働者として社会に参加できる自信と誇りが持てるように、職業能力の向上を図ることを目的としている。また、広く障害者の職業能力に対する社会の理解と認識を深め、その雇用の促進などを図る。愛称はアビリンピック。アビリンピック(abilimpic)とは、"ability"と"Olympic"の合成語。 【監修=高崎健康福祉大学 健康福祉学部医療情報学科 准教授 眞保智子氏】 【Text=湊 美和】 |
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お話を伺った方 |
会社概要 |
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■設立/1999年9月 ■本社所在地/東京都武蔵野市 ■大阪事業所所在地/大阪府大阪市 ■従業員数/知的障害者25人、管理者・実務担当者6人 ■出資会社/横河電機(東京都武蔵野市) ■出資会社の事業内容 /計測・制御機器の開発・製造・販売 |
| 経営監査本部 CSR部環境・社会貢献課チーム 箕輪優子氏 |
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