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  Home > SPECIAL THEME > 続ワーキングパーソン調査の森 2006年3月
 「独立したい」50代編 続ワーキングパーソン調査の森
SPECIAL THEME Works Institute
リクルートワークス研究所
続ワーキングパーソン調査の森〜データで迫る働く人たちの実像
その2 「独立したい」50代編
焦点は会社起業から自営・NPOへ
65歳までの雇用確保措置を企業に義務付ける動きが進む一方、50代も含め中高年の働く人たちには、定年を待たずして起業、転職など"第2の人生"を目指すケースも目立ち始めている。働き手としてのシニアに注目が集まる中、会社を起こしたい、自営業に挑戦したいといった独立を目指す50代はどんな人たちで、どんな意向を持っているのか。それを明らかにすることは大きな意味があるだろう。
2割超す50代の独立意向者
「ワーキングパーソン調査」によれば、転職意向は年齢の上昇とともに低下する。「転職したいし現在活動中」「転職したいが活動はしていない」「いずれ転職したい」の合計は35〜39歳で40.3%。これが50〜54歳では19.7%、55〜59歳になると15.8%に低下。50代では「転職するつもりはない」は8割を超す。これが独立意向となると少し違ってくる。50代の独立意向は50〜54歳で27.7%、55〜59歳でも21.3%に達する。転職意向率に比べると、独立意向率の年齢上昇による低下は、より緩やかなのだ。

50歳で独立したAさん(50歳/男性/元は建築・展示業界の営業マネジャーで、現在は個人事業主)はこう語る。「定年を意識する年齢になったとき、これから会社の中でやれることの"限界"がはっきりした。そうすると今までやってきた仕事が、また違って見えてきました」。会社としてはコスト的に合わないためやむなく断ってきた仕事も、個人レベルなら十分に顧客の要望に応えられる。また個人的にいろいろと相談を受けるケースも増えてきた。個人事業主なら、顧客のニーズにきめ細かく応えることができるとAさんは考えたのだ。

中高年問題に詳しい法政大学イノベーション・マネジメント研究科長の藤村博之氏は、「この年代になると、会社でどこまで出世できるかも見えてきます。そこで独立した方がいいと前向きに考える人が、少なからず出てくるのでしょう。一方転職で新天地を求めようにも、50代の転職市場の需給状況を見るとなかなか難しい。こうした事情が、50代の転職意向率は下がるが、独立意向率はさほど下がらないことにつながっているのではないでしょうか」と指摘する。

図 A 希望する独立形態
図A


自営業やNPOに高まる関心
独立意向を持つ50代は、具体的にどんな「独立形態」を考えているのだろうか。「会社を設立する」(起業)は年齢が高くなるに従って低下するのに対し、「お店を開く(法人化しない自営業)」は、50代でより比率が高まる。また絶対数は少ないが「非営利団体(NPO)を設立する」も年齢が高いほど比率が高まっている。会社を起こして大規模にビジネス展開するというよりは、法人化しない自営業でこぢんまりと開業したり、NPOを設立したいと考えているようだ。

2年前に55歳で会社を辞め、飲食店を開いたというBさん(57歳/男性/元自動車販売会社管理職で、現在は飲食店を家族経営)。「数年前からリストラが始まり、何となく社内の雰囲気が悪くなっていきました。そんなときに早期退職優遇制度が導入されたため、会社を辞めて自分の店を持とうと考えたのです。以前から漠然と店を持てればいいなと思っていましたが、その気持ちに一気に拍車がかかった感じです」。貯蓄はあまりなかったというが、自宅を改造し店舗とすることで資金を節約。自宅を担保に信用金庫から融資を受け開店した。「お店なら体の続く限り一生できるし、定年を気にしなくていい。一方、会社経営では他人との共同作業になりますから、経営やマネジメントを考えなくてはならない。会社員時代に嫌な思いをしてきましたから、それはないなと(笑)。肉体的にはきついけどストレスは少なく、生き生き働けますね」(Bさん)

NPOを志向する人たちはどうだろうか。Cさん(52歳/男性/メーカー勤務の後、介護福祉系のNPOを設立)は、「NPOの世界では、ビジネス社会の価値観や仕事のやり方をそのまま持ち込むと失敗します。もうけることも必要ですが、ビジネス社会とは違った仕組みや対応が求められるわけです。その意味では、肩の力の抜けた50代というのは、現場で地道に働く人たちの気持ちを理解できている分、若い世代よりも向いているかもしれませんね」と語る。

図B 役職別独立意向者の割合

図B

図C 職種別独立意向者の割合

図C


管理職、営業職、サービス職で高い独立意向
次に50代の独立意向を示す人たちの役職、職種、年収を明らかにしよう。役職別に見ると、役職が上の人ほど独立意向が高い(図B)。職種別では、営業職で4割以上と最も多く、次いで管理職、サービス職が3割強で続く。一方、事務職や専門職、技術職は独立意向が低く、「営業」「管理」「サービス」の半分程度の割合にすぎない(図C)。年収別では、500万〜700万円で最も独立意向が高く、900万円以上の高額年収者がこれに続く。

「営業でずっとやってきたから、社内外に豊富な人脈がある。おかげで顧客にも、より適材適所なソリューションを安価で提供できるのです」(Aさん)
「私は20代、30代が営業、40代では営業企画、そして50代は管理職という経歴。開店の前後には、在職中にお世話になったお客さまのところへ積極的にあいさつ回りをしました。接待や歓送迎会で使ってくれるお客さまが予想以上に多く、ひいき客も増えてきました」(Bさん)

「営業職や管理職は社内外にネットワークを広げやすいため、独立には有利なのでしょう。勤めていた会社と"いい関係"を保って独立することが大切です。実際、独立当初は営業もままならず、なかなか仕事の依頼は少ないもの。勤めていた会社の人脈を使うのが、いちばん効率的なのです。勤めていた会社との関係が悪ければ、かつての取引先を客にすることは難しい」と藤村氏は解説する。

独立意向のある50代には能力面でどんな特徴があるのだろうか。図Dは、「専門知識」「技術やノウハウ」「対人能力(コミュニケーションやリーダーシップなど)」「対自己能力(自己制御ややる気の維持など)」「対課題能力(企画立案や課題解決など)」の5つの能力について、仕事を通じて向上している能力を質問したものだ。

図D 5つの能力が「仕事を通じて向上している」 と答えた人の割合

図D


独立意向の「ある人」は「ない人」と比べて、対課題能力と対自己能力を「仕事を通じて向上している能力」に挙げる比率が高くなっている。裏を返せば、対課題能力と対自己能力が向上しているような仕事をしている人たちは、独立を望む可能性が高くなるといえるだろう。

ノリだけでは成功しない50代の独立
「独立自営は厳しい世界です。全責任を負うことが求められ、常に自分を磨かなければ高い評価は得られません。独立を考える人は社外とのネットワークを広げておくことが必要です。社内にしか友人、知人がいないというのでは、いいアイデアや知恵も出てこないでしょう」という藤村氏の話に、Aさんの述懐も符合する。「20代、30代の独立は、勢いやノリでいけますが、50代だと人脈や知識、相互の信頼関係、マーケットに対する自信、収入の見込みなど、さまざまな要素を十二分に計算したうえでの"確信犯"的独立が求められます。常に顧客の立場という視点から、自分自身を見つめ直すことが有効です」

65歳までの雇用確保措置の企業への義務付けが、4月から始まる。だがシニアの働き方を画一的な雇用関係に押し込むことは、企業にとっても個人にとっても決して得策ではないだろう。現に2割以上の50代の正社員が「独立したい」と望んでいるのだ。彼らの独立を支援したり、個人事業主となった元社員と契約を結んだりといった、多彩な仕組みの設計が、シニアの働く意欲を引き出すことや能力のさらなる発揮につながるはずだ。
(文:福田敦之 データ分析:小泉静子 編集:五嶋正風)
※今回抽出したデータについて
  50代の男性正社員、213人。
ワーキングパーソン調査の報告書はこちら
ワーキングパーソン調査は、ワークス研究所が 2000 年から 2 年に 1 度のペースで実施している。調査の目的は働く人々の実態と意識を明らかにすること。2004年の調査では首都圏で働く5800人を対象とした。正社員、派遣、パート、アルバイトなど多様な雇用形態と、性別を問わず幅広い年齢の働く人たちを網羅している。
(2006年3月30日掲載)

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