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  Home > SPECIAL THEME > ワーキングパーソン調査の森 2003年11月
 "リストラ"経験者の 「能力」「収入」「学び」 ワーキングパーソン調査の森
SPECIAL THEME Works Institute
リクルートワークス研究所
ワーキングパーソン調査の森〜働く17000人探索レポート
リストラ経験者の「能力」「収入」「学び」
「自発的ではない転職者」とは、いわゆるリストラや会社の倒産などで「本人の意思に反して勤務先の都合で会社を辞め、新たな職に就いた人たち」だと定義する。長引く不況で、そういう状況に陥る人は増えているが、実態はどうなのだろうか。今回は自発的ではない転職について「どんな人が?」「収入はどうなる?」「学びの意識の変化は?」という 3 つの視点からとらえてみたい。
図 1
(図 1 クリックで拡大)
※それぞれの能力が「仕事に必要だ」と答えた割合
まずは、いったいどんな人たちが自発的ではない転職をしているのだろうか。業種ごとの「自発的ではない転職者」と、「自発的転職者」の分布を調べると、製造、卸売・小売、飲食店、金融・保険で、自発的ではない転職者の比率が 10 ポイント以上高かった。同様に職種でみると事務職で 4 ポイント、専門職・技術職で 9 ポイント「自発的転職者」より「自発的ではない転職者」が高くなっていた。

ところで、「自発的ではない転職者」と「転職経験のない人」では、仕事上の能力に違いはあるのだろうか。自発的ではない転職者と、転職経験のない人が、 9 つの能力についてそれぞれ「自分の仕事に必要不可欠だ」と答えた比率を比較したのが図 1 だ。「基礎的能力(論理的に考えられる、数字に強いなど)」「コミュニケーション能力」「課題発見・解決能力」の 3 点で、「自発的ではない」が「転職経験がない」を大きく下回っている。自発的ではない転職をした人は、これらの能力が比較的必要とされない仕事を任されているとも読み取れる。

データを見る限り、自発的ではない転職をさせられたことと、仕事上の能力には関連がありそうだが、「現実はそうではない」と指摘する声もある。「 2 年前、社員数約 150 人の会社で 60 人ものリストラを実施しました。自分がその担当者を命ぜられたが、思い出しただけでも胃が痛くなるつらい仕事でした。当時は『君は他社でも十分にやっていける能力があるから、今辞めてもらうのだ』と説明したものです」( A さん・58 歳・元貿易会社社員・現在は専門学校の講師)。実際にリストラを進める立場になれば、「比較的若く、能力もあって、次の仕事が見つけやすい人」というのも、対象者の選択基準になり得るということだ。

能力があってもリストラの憂き目
また不況の中、個人の能力ではどうしようもないリストラが増えているという意見もあった。「会社の事情でリゾート事業からの撤退が決まりました。その時点で、ひとつの部門がすべてなくなり、働いていた社員は、私も含めてほぼ全員リストラされてしまった」( B さん・50 歳・元不動産関係企業社員・現在就職活動中)なるほど、これではどんな能力の有無も関係はない。

「その部門の発足時は、多くの人材がヘッドハンティングで集められました。私も望まれて中途入社したわけですが……。部門閉鎖となると、ヘッドハンティングで入社した社員はすべて解雇です。残ったのはいわゆる生え抜き。以前から勤めていて、たまたまリストラされた部門に配属された人たちだけでした」( B さん)。ヘッドハンティングされるぐらいだから、有能な人材がそろっていたはずだが、現実にはこういうケースもあるのだ。

45 〜 54 歳の自発的でない転職は年収 2 割減
「自発的ではない転職」によって、収入はどう変化するのか。図 2 のデータを見ると、45 〜 54 歳においては、自発的な転職者の転職前と後の収入格差は、3 %減にとどまっているのに対し、自発的ではない転職者では、その格差が 21 %減にまで落ち込んでいる。自発的な転職者と、自発的ではない転職者の元の年収が 100 万円以上違うことから見ても、自発的ではない転職者については、高年収の社員を退職させ、人件費を削減しようという企業側のもくろみが浮かび上がる。

図 2


「再就職先を探していたとき、採用が内定しても、提示された給与の額を見てあぜんとし、それでは生活していけないと断ったこともあります」と言うのは前出の A さん。現在の勤め先でも、最初の提示額が低かったため、仕事で実績を挙げたうえで給与の増額を交渉し、昇給を認めさせたという。「それでも前職と比べれば相当低い年収です。以前はかなり恵まれていたのだと、あらためて気付かされました」。まさにデータを裏付ける話だ。

さらには、自発的転職者の場合、人数で見れば「年収が増えた」という人が 4 割に上るのに対し、自発的ではない転職者では 7 割以上の人が「減少」と答え、「増加」は 1 割にすぎない。「条件面でかなり譲歩して、それでも、一定以上の年齢の者を採用しようとする企業を探すのはかなり大変です。ハローワークでも、求人票の前に人だかりができているのですから」( B さん)。
「以前は正社員でしたが、会社がなくなってしまい転職。再就職先では派遣社員として働くことになり、収入は大きく減少です」( C さん・36 歳・元広告関連会社社員・現在は別の広告関連会社勤務)など、リストラ経験者からは厳しい話が寄せられた。

成果主義で実績を挙げれば収入増も
さて、「リストラ後、年収が増加」という1割の側に立つのが D さんだ。「知人の紹介で、現在の会社(生命保険会社)に入った。ここの給与は出来高払いなのです」( D さん・40 歳・元不動産関連会社勤務)そこで D さんは高い実績を挙げ、今では前職以上の年収を得ているという。自らの人脈を活用した再就職、成果主義のもとで実績を挙げる。これらが 1 割の側に立てた要因だろうか。

最後に「学び・自己啓発」に関するデータを見てみよう。「最近 1 カ月以内に仕事関連の学びに取り組んだ人」という調査結果からは「自発的ではない転職者は勉強好き」という傾向が見て取れる。これには 2 つの側面があるだろう。

図 3


まず転職で新しい仕事に就いたのだから、それなりに勉強しないと新しい仕事をこなせないという現実的な側面だ。自発的ではない転職の場合、全く異なる業種、職種に移るケースもかなり見られるので、学ばざるを得ないというわけだ。もう一つは、再度リストラされないように、またはリストラされても困らないだけの実力を身に付けるという、いざというときの備え的側面だ。

職種が変われば「毎日が勉強」
「前職での知識や経験が、いろんな形で役に立っているとは思いますが、職種は全く違う仕事なので、勉強の必要性を感じます。家に帰ってからも、通勤途中にも、ほぼ毎日、何らかの勉強をしていますね」( A さん)。さらに A さんはこう続ける。「前の会社は、ある海外ブランド商品の日本総代理店でした。私が辞めた後、親会社は代理店契約を更新しないと決定。その結果、本国の会社が、日本に新たな現地法人をつくることになった。前の会社の多くの社員は、新会社での再雇用を希望したが、なかなかそうはいかない。新会社は外資系企業だから、最低でも英語かフランス語が堪能でなければ採用は難しい。私は今、専門学校で若い人を教える立場ですが、この経験を踏まえ、語学の必要性を説き、必要な資格を取ることを勧めています」。A さんはいま、勤務する専門学校で人気講師となっている。それもリストラも含め、さまざまな経験が元になったアドバイスが、学生の心に響いた結果かもしれない。

元不動産関連会社勤務で、保険会社に再就職した D さんも、学びには積極的だ。「金融の仕事は、話を聞けば聞くほど面白い。仕事は出来高払いで、個人事業主のようなものだから、ものすごく勉強もしています。ファイナンシャル・プランナーなどの資格も、もちろんすぐ取りました。前の会社にいるときと今では、仕事に対する考え方が 180 度変化しましたね。『忙しいとしんどい、できれば遅くまで残業したくない』という、自分の時間を切り売りする感覚から、逆に『暇だとしんどい、忙しいと充実』という感覚になりました」

ビジネスの変化が激しく、経済状況も厳しい中、これからリストラにあうことは珍しくないことかもしれない。だが避けられない逆境も、取り組み方次第ではさらなる飛躍の転機、一皮むける経験となるのではないだろうか。リストラ経験者の話から、そんなことを感じた。(文:河野比呂 データ分析:小泉静子 編集:五嶋正風)


ワーキングパーソン調査の報告書はこちら
ワーキングパーソン調査は、ワークス研究所が 2000 年から 2 年に 1 度のペースで実施している。日本の 3 大都市圏(首都圏、大阪、名古屋)で働く 17000 人を対象に、働く人々の実態と意識を明らかにすることを目的としている。調査対象はパート、正社員、派遣、フリーターなど、様々な雇用形態で働く老若男女を網羅している。

※ 今回抽出したデータについて

45歳〜 54歳で、直近 5 年以内に転職した男性正社員を対象とした。自発的な転職者は 97人、自発的ではない転職者は 54人が含まれる。比較対象とした転職経験のない人も 45歳〜 54歳の男性正社員で、1132人。
(2003年11月11日掲載)

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