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  Home > SPECIAL THEME > 続ワーキングパーソン調査の森 2006年6月
 長時間労働編 続ワーキングパーソン調査の森
SPECIAL THEME Works Institute
リクルートワークス研究所
続ワーキングパーソン調査の森〜データで迫る働く人たちの実像
その4 長時間労働編
看過できない若手・中堅への負担偏重
今回は長時間労働の問題を取り上げる。リストラや新規採用削減で人員が減っているのに仕事は増え、結果働く時間が伸びているという職場は少なくないだろう。さらには裁量労働制や成果主義人事制度の導入が長時間労働を助長しているのではないかという声も聞く。負担増のしわ寄せがいっている先は、いったいどこなのだろうか。
図A
図A 年齢層別 週60時間以上働く人の割合
長時間労働である人を、今回は「週60時間以上働いている人」と置くことにした。60時間は週 5日間働くとして、1日あたり12時間労働となる。午前9時始業として休憩 1時間を加えれば、仕事を終えるのは午後10時。週60時間以上を長時間労働と置くのは、納得感のある線引きだろう。1年間こうした状態を続ければ、明らかな労働基準法違反でもある。ところで労働時間の分布は、雇用形態、性別によって大きく異なる。そこで今回は分析の対象を男性正社員に絞ることとした。

「長時間労働の慢性化を感じる」
まず長時間労働の人はどの世代に多いのだろうか。年齢層別に労働時間の状況を見てみると、25〜29歳、30〜34歳、そして35〜39歳の層で週60時間以上働く人は3割近くにのぼっている。やはり20代後半から30代という若手から中堅にかけての層に、大きな負担がかかっているようだ。

自動車部品メーカーで営業企画主任を務めるAさん(31歳、男性)は、こういう。「バブル崩壊後、新卒の定期採用が中断した時期もあり、若手から中堅にかけて人材の断層が生じている。一方で景気は回復し、仕事量は以前にも増して多くなっているので、一人ひとりの労働負荷は増している。どうしても残業時間が増えて、長時間労働が慢性化しているように感じます」

役職ランクと管理職、専門職ごとに長時間労働者の比率をみると、「係長・主任・班長クラス」の「管理職」が27.4%で最も高くなっている。さらにこれを年齢層別に見ると、若い層になるほど長時間労働者比率が高くなっている。25〜29歳では長時間労働者比率は、実に47.8%に達している。Aさんはまさに主任職だが、「とにかく後輩や部下が少ないので、気安くメンバーに仕事を頼めるような環境ではない」と不満を漏らす。

図B 役職ランク、管理職、専門職種別長時間労働者(週60時間以上)の割合
図B


成果主義で働く20代の長時間労働
次に注目したいのは、人事制度と労働時間の関係だ。まず「成果主義」と労働時間の関係をみてみよう。「自分の業績で賃金が決まる」と答えた人と、男性正社員全体の年齢層別長時間労働者比率を比べてみた(図C)。18〜24歳、25〜29歳での長時間労働者比率が、男性正社員全体に比べて高くなっていることがわかる。30代より上の層になると、全体の長時間労働者比率との差は縮小している。成果主義を採用する会社の若手社員で、長時間労働者比率が高まる傾向があるといえるだろう。同様に「裁量労働」で働く人の長時間労働者比率は、25〜29歳、30〜34歳、35〜39歳の年齢層で、全体より目だって高くなっていることがわかる。

成果主義や裁量労働が20代、30代の長時間労働に悪影響を及ぼしていることは、インタビューからもうかがえる。住宅販売会社の営業職であるBさん(28歳、男性)の会社は、成果主義の賃金制度を導入している。「とにかく結果を出さねばならないから、労働時間管理はなし崩しになっていかざるを得ません」。

情報サービス会社の人事・総務部門で働くCさん(30歳、女性)は、「成果主義が導入されてから、担当者が明確ではない仕事を、いったい誰が担うかが職場の問題になっています。結果的に、それらの多くが若手社員にのしかかっているように感じます。残業も増え、それでも終わらなければ、自宅に仕事を持ち帰るケースも少なくありませんから」という。前出のAさんも、「裁量労働制で、時間管理に対する"たが"が緩んだ感じがする。『残業は月に20時間以内』と厳しく管理されていた頃のほうが、集中して仕事をしていました」と話している。

図C 年齢層別長時間労働者の割合(成果主義と男性正社員全体の比較)
図C


図D 年齢層別長時間労働者の割合(裁量労働制と時間管理制の比較)
図D


長時間労働で能力の高まりは感じているが…
ここまで長時間労働の負の面を中心に見てきた。果たして長時間労働は、若手・中堅社員たちに、何もいいことをもたらさないのだろうか。

長時間労働と能力の関係に着目してみると興味深い事実が見えてくる。ワーキングパーソン調査では「専門知識」「技術やノウハウ」「対人能力」「対自己能力」「対課題能力」の 5つの能力について、どれだけ仕事を通じて高まっているかを質問している。25〜39歳の、能力が「大いに高まった」と答える人の比率は、労働時間が長くなるほど高まっている(図E)。労働時間が長いほど、やはり能力向上につながる経験の機会も多くなるということだろうか。

労働時間と知識量の関係について、Bさんは「インターネット環境が整ってきて、以前ならそのままにしておいた疑問も、調べてなんとか対応できるようになった。ネットによる調べもので労働時間が長くなっているかもしれないが、仕事に役立つ知識を身につけるという面から見れば、状況は良くなっている気がする」と話す。

図E 能力が「大いに高まっている」割合

図E


ストレスを感じる割合も高くなる
だが「能力向上を図るには、やはり長時間労働に耐えるしかない」と考えるのは早計だろう。長時間労働にはマイナス面も大きいからだ。例えば週労働時間が長いほど、「精神的ストレス」を感じる割合が高くなるという調査結果も出ている(人口減少社会における人事戦略と職業意識に関する調査/2006年、労働政策研究・研修機構)。とりわけ、週50時間以上では 7〜8割が精神的にストレスを感じると答えている。

また人材の多様性を進めるダイバーシティの観点から見ても「能力向上を図るには長時間労働しかない」というのは同意できない考え方だ。例えば女性が結婚して、子育てをしながら仕事を続ける場合、平日には保育園に預けた子どもを午後7時には迎えにいく必要がある。土日は家庭生活を優先する必要もでてくるだろう。ユニクロでは女性が活躍できる場を増やすことを狙って、店長であっても土日休み、8時間労働を実現できる業務改善マニュアルを作成した。労働時間短縮と、働く人としての能力向上を両立しようとする試みは、すでにあちこちで動き始めているのだ。

「長時間労働を通じて能力向上を図る」という考え方への固執は、あまりに知恵がないと言わざるをえない。業務フローの見直しや柔軟性に富む働き方を認めるような施策を通じて、労働時間と能力開発のバランスのとれた働き方の設計が求められている。
(文:福田敦之 データ分析:小泉静子 編集:五嶋正風)
※今回抽出したデータについて
  18歳から59歳の男性正社員6754人
ワーキングパーソン調査の報告書はこちら
ワーキングパーソン調査は、ワークス研究所が 2000 年から 2 年に 1 度のペースで実施している。調査の目的は働く人々の実態と意識を明らかにすること。2004年の調査では首都圏で働く5800人を対象とした。正社員、派遣、パート、アルバイトなど多様な雇用形態と、性別を問わず幅広い年齢の働く人たちを網羅している。
(2006年6月26日掲載)

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