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  Home > SPECIAL THEME > 続ワーキングパーソン調査の森 2006年5月
 「ガラスの天井」編 続ワーキングパーソン調査の森
SPECIAL THEME Works Institute
リクルートワークス研究所
続ワーキングパーソン調査の森〜データで迫る働く人たちの実像
その3 「ガラスの天井」編
なぜ女性は「専門知識」に走るのか
女性の昇進には「ガラスの天井」があるといわれている。事実、日本では管理職に占める女性の割合は係長相当でも8%あまりで、国際的に見ても低水準だ(2003年度女性雇用管理調査/厚生労働省)。企業側は女性を管理職に登用しない理由として、勤続年数やライン経験など管理職に必要な形式的要件を満たしていないこと、判断力、企画力、部下の指導力といった管理職に必要な能力が備わっていないことを挙げている。本当に女性は管理職が務まる能力を欠いているのだろうか。女性の持つ能力や伸ばしたいと思っている能力に着目し、「ガラスの天井」発生の構図に迫る。
図A
図 A 「保有能力」の男女差
「専門知識」「技術やノウハウ」で男女に大きな差
図Aは「専門知識」「技術やノウハウ」「対人能力(コミュニケーションやリーダーシップなど)」「対自己能力(自己制御ややる気の維持など)」「対課題能力(企画立案や課題解決など)」という5つの能力について、「十分持っている」と答えた男女正社員の比率を示したものだ。5つの能力のすべてで男性が女性を上回っており、なかでも「専門知識」と「技術やノウハウ」に大きな男女差が生じている。ただ、図Aだけでは「正社員の平均年齢は女性の方が低いはず。若い女性は、『能力を十分持っている』と答える比率が低くなるのは当然では」という反論が出てくるだろう。

そこで年齢別でも、「十分持っている」と答えた人の比率に男女で有意な差があるかを調べてみた。すると30〜34歳では5つの能力すべてで差があり、25〜29歳では「専門知識」「技術やノウハウ」「対課題能力」で、35〜39歳では「専門知識」「技術やノウハウ」で、差が見られた。

図 B-1 「専門知識」を「十分持つ」比率の年齢層別変化
図B-1

図 B-2 「技術やノウハウ」を「十分持つ」比率の年齢層別変化
図B-2


保有能力の差は、30代で拡大
保有能力の男女差は、年齢別に見るとどこで大きくなるのだろうか。図Bは「専門知識」と「技術やノウハウ」を「十分持っている」と答えた人の比率の推移を、20代から50代まで5歳刻みでグラフにしたものだ(18〜24歳のみ対象者が少ないため7歳を一区切りとした)。特に30代において男性の比率が急激に高まるのに対し、女性の比率は伸び悩んでいることが分かる。

大手化学会社の人事課長Aさん(45歳/男性)はこのグラフを見て、「30代男性は働き盛り。責任ある仕事を徐々に任されて、能力的にも大きく伸びていることがこの結果に反映されているのではないでしょうか。一方で、30代の声を聞くと、女性は結婚、出産を迎える人が出てきます。それもあって会社としては責任ある仕事を任せにくいと考える傾向があるように思います」と、30代に男女の能力差が開いていく背景を推測する。

女性はこの結果をどう見るのか。Bさん(32歳/女性/総合職/大手広告代理店勤務)は「男女雇用機会均等法が施行されてかなりの年月がたつのに、日本企業では依然として男性は基幹業務、女性は補助業務へと分離され、昇進・昇格のルールも明確に示されていません。実際、研修を受けるチャンスなども男性に比べて少なく、女性のチャレンジに道が開かれていないように思います」と憤る。

Cさん(35歳/女性/総合職/大手製薬会社課長代理)も、「とにかく一度、女性にチャンスを与えてほしい。そうすれば、女性の能力が男性に劣らないことが分かるはず」と訴える。30代で男女の格差が開くのは、そもそも会社が女性の活用に積極的でないからというのが、Cさんの意見だ。

ただ、保有能力の男女差の原因を、会社が女性に機会を与えていないことだけに帰するのは無理があるだろう。実際20代から30代にかけて出産や育児で仕事の場を離れ、その間能力を伸ばせない女性が増えるという面もあるだろうし、女性自身が「どうせ結婚・出産で仕事は辞めるし、出世も望んでいない。能力開発はほどほどでいい」と考える場合もあるだろう。Bさんも「女性側にも問題はある。正直にいえば私も責任を回避し、現状に甘えている部分もありました」と告白する。「会社は結婚や育児で女性のキャリアが終わらないように道を作り、一方で女性側はロールモデルとなる人が範を示していかなくては。双方が少しずつ努力を積み重ねることが大事だと思います」

図C 「最も伸ばしたい能力」の男女差
図C

図D 「最も伸ばしたい能力」の男女差(初級管理職)
図D


「専門知識」に偏る、女性が伸ばしたい能力
次に女性が「今後伸ばしていきたい」と考えている能力にはどんな傾向があるのかを、男性と比較してみよう。図C、Dは5つの能力について「最も伸ばしたい」と答えた比率をグラフ化したものだ。女性の最も伸ばしたい能力は「専門知識」に著しく偏っており、このことは初級管理職(係長クラス)でも同様の傾向だった。一方、男性は女性に比べると「対課題能力」を伸ばしたいという比率が高まり、さらに初級管理職では「対人能力」も加わっている。

一方この調査では、職位別に「あなたの仕事には、どの能力が求められるか」も聞いている(図E)。より上位の職位ほど、「対課題能力」「対人能力」を挙げる人が増えている。つまり、伸ばしたい能力が「専門知識」に偏っている女性よりも、「対課題能力」「対人能力」にも目配りする男性の方が、管理職に求められる能力の方向に沿っているといえるだろう。「やはり30代以上の年齢で会社に貢献しようとするなら、専門知識よりもマネジメント力やコミュニケーション力です。組織が機能するうえで、欠かすことができない能力ですから」とAさんもいう。

図E 職位別「あなたの仕事には、どの能力が求められるか」
図E


なぜ女性の伸ばしたい能力は「専門知識」に偏ってしまうのだろうか。Bさんは「専門知識やスキル、資格などがあれば、今の会社を辞めて再就職する際に、有効な『武器』となります。求人情報を見ても専門性を重視した募集が多いし、マネジメント能力を女性に求める企業は少ない気がします」。Bさん自身、公認会計士の資格を取得しようと昨年から専門学校に通っているという。

「家事、育児、介護などの家庭責任は、実質的に女性が負わされています。働き続けたいと願っても、家庭責任の負担が重くなれば、働くことを中断せざるを得ない現実がある。専門性があれば、結婚や育児でいったん会社を離れても、また仕事に戻れるという計算が働くのでしょう」と、Cさんは専門知識にこだわる女性の思いを代弁する。

女性がマネジメント能力を伸ばす機会を
男女の保有能力は30代で大きな差がつき始めること、女性が身に付けたい能力が「専門知識」に偏り、管理職に求められる能力とミスマッチを起こしていることが、今回の分析から明らかになった。こうしたことが、結果として女性の管理職登用を阻む「ガラスの天井」を生むことにつながっているのではないだろうか。だがその背景には、女性がマネジメント能力を伸ばす機会の提供に企業側が消極的であること、家庭責任の負担が女性に偏っているのに、仕事と両立できるような仕組みが整っていないことがあると、インタビューからは見て取れた。

Bさんはこう語る。「最近、人材の多様性を指すダイバーシティという考え方が注目されていますが、その観点に立つと、女性の登用についても反省点は多いと思います。女性が専門知識にこだわるのも、結婚や育児で仕事が続けられない事情があるからで、会社や男性側の都合を、女性に押し付けてきたことは否めません。少子高齢化が進む中、女性はもちろん、さまざまな属性の人材活用を進める必要があります。つまり、一部の男性社員だけがマネジメントを担うという時代ではなくなる。そのためにも、女性が対課題能力や対人能力を伸ばせる環境をつくっていくことが、これからの組織には求められると思います」
(文:福田敦之 データ分析:小泉静子 編集:五嶋正風)
※今回抽出したデータについて
  18歳から59歳の男性正社員3349人、女性正社員1124人。
ワーキングパーソン調査の報告書はこちら
ワーキングパーソン調査は、ワークス研究所が 2000 年から 2 年に 1 度のペースで実施している。調査の目的は働く人々の実態と意識を明らかにすること。2004年の調査では首都圏で働く5800人を対象とした。正社員、派遣、パート、アルバイトなど多様な雇用形態と、性別を問わず幅広い年齢の働く人たちを網羅している。
(2006年5月10日掲載)

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